2019年11月10日に、セサミストリート エデュケーションサミットをユニバーサル・スタジオ・ジャパンにて開催しました。この日が、アメリカでセサミストリートの放送が始まってからちょうど50年。50周年のお祝いのイベントに、セサミストリート・ティーチャーとして参加してきました。
セサミワークショップ日本代表の長岡学さんと一緒に、セサミストリートの日本での活動報告をしました。ステージに導いてくれたのは、バート&アーニー。子どもの頃、テレビで見ていた「セサミストリート」で、すっとぼけたアーニーに振り回されるバート(でも仲良し!)というエピソードを見ていたので、とても光栄です。
セサミストリートの学習目標とセサミストリート・カリキュラム
セサミストリートは、すべてのエピソードに学習目標が設定されているということを紹介しました。例えば、南アフリカの「セサミストリート」では、HIVに感染したキャラクターKami(カミ)を通じて、触れても感染しないということを伝えています。また、アフガニスタンでは女子就学率が低いので、Zari(ザリ)というキャラクターを使って、男の子にも女の子にも学校へ行く権利があり、また社会の一員として女の子にも責任と役割があることを伝えています。
そうしたセサミストリートからは、2017年に自閉症のキャラクター ジュリアが生まれました。日本でも、厚生労働省、文部科学省、日本自閉症協会やNHKの支援で、ジュリアを紹介することができました。
Meet Julia・ジュリアの紹介【日本語吹替版】
現在は、小学校向けのプログラムとして「セサミストリート・カリキュラム」を展開しています。2019年度からは、埼玉県戸田市にて全小学校で授業として教えられています。セサミストリートのキャラクターたちの力と、それを教材に授業をする先生方のスキルが組み合わさって、児童の変容も見られるようになってきています。より多くの学校に届けられるように、がんばっていきたいと思います。
セサミストリートカリキュラム紹介ビデオ
パネルディスカッション「子どもたちのために、セサミストリートは何ができるか、すべきか」
続いての、パネルディスカッションでモデレーターを務めさせていただきました。パネリストとして登壇していただいたのは、戸ヶ崎勤 教育長(戸田市教育委員会)、井上雅彦 先生(鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学講座 教授)、瀬戸昌宣 さん(農学博士、NPO法人SOMA 代表理事)の3人でした。
瀬戸さんは高知県土佐町をはじめ、コミュニティをベースにして教育を変えていく活動をされています。また、自身でもセサミストリート・ティーチャーとして活動もしています。井上先生は、セサミとは自閉症啓発デーなどでコラボレーションをしてくださっています。戸ヶ崎教育長は、戸田市内の小学校で教えられているセサミストリート・カリキュラムの成果をよく知る方です。
パネルディスカッションのなかで出てきて、非常に印象的だったことを記録しておきたいと思います。皆さんのそれぞれの知見が重なり合って、いろいろと考える機会をいただきました。セサミストリート・カリキュラムのブラッシュアップ、授業実践に活かしていきたいと思います。
- ジュリアのようにキャラクターがいることは、文字や絵で見るのとはまた違う印象を子どもたちに与えてくれる。それが学びのきっかけになる。
- 戸田市の小学校では、セサミストリート・カリキュラムの教育効果のエビデンスが、子供たちの変容により表れ始めている。「将来の夢や目標をもっている」「始めたことは最後まで終わらせる」という項目など。
- 正解がないことについて、どんどん話し合うセサミストリート・カリキュラムを実施することで、「子どもたちが自分の意見を持ち、話合いに参加するようになった」ということを先生方から聞いた。また、保護者からも「セサミカリキュラムで学んだことなど家でたくさん話すようになった」という声もある。
- 多様性を学ぶときに、子どもの考えや意見をどんどん出してもらう機会を提供すれば、そのなかで大人も多様性のある学びをすることになる。
さらにセサミストリートは進んでいく
その後の懇親会でも、たくさんの方々とお話をさせていただきました。意見交換なども多くさせていただきました。ありがとうございました。
懇親会の途中、スクリーンに「グッドバード・クラブ」という動画が流れていました。個人的に素晴らしく好きなストーリーなので、YouTubeで見られるので、ぜひ見ていただきたいと思います。学びの個別最適化という文脈のなかで、この動画を子どもたちと見て、教室や学校とはどういうところか、というのを考えたらおもしろいのではないかと思っています。
グッドバード・クラブ【日本語吹替版】
セサミストリートには、2019年10月にKarli(カーリー)というキャラクターが新しく登場しました。カーリーのお母さんは、依存症と戦っていて、どのように手を差し伸べるかなどを学べることができる内容になっています。
www.youtube.com
社会で取り組むべき問題は、国によってさまざまですが、常にアップデートして、それを子どもたち(そして保護者)へと伝えていくためのメディアとしてセサミストリートは進み続けています。
セサミストリート・カリキュラムがより良い教育プログラムになるように取り組んでいきたいと思います。日本国内の、地域ごと、学校ごとに、最もいいプログラムになるように先生方・保護者の方々と協力して、さらに良いプログラムになるように努力していきたいと思います。そうした思いを強くしてくれた、50周年のセサミストリート エデュケーションサミットでした。引き続き、よろしくお願いします。
(為田)