教育ICTリサーチ ブログ

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袋井市立三川小学校 「未来の教室」実証事業 公開授業レポート No.2(2019年1月25日)

 2019年1月25日に、袋井市立三川小学校にて行われた、「未来の教室」実証事業の公開授業を見学させていただきました。公開授業後には、研究協議会が三川小学校の図書室で開催されました。
 経済産業省 教育産業室長 浅野大介 氏をはじめ、袋井市教育委員会凸版印刷株式会社 教育事業推進本部からも多くの参加者が参加しました。

 協議会の最初に、経済産業省の浅野さんからのコメントがありました。

浅野さん: ペースを⾃分で作れるということに満⾜感を持っている⼦どもが多かった。⾃分のペースでやれる⼦がいることがいい。⼿が⽌まっていない。ずっと話を聞いている時間がなくなり、考えている時間が増えていると感じた。想定していた通りで、おもしろいなと思った。
 その⼀⽅で、ここから先のところで、先の⽅へ進んで別の教材をやっている⼦がいて、究極系は、それぞれの⼦がやっていることはバラバラになることも出てくる。そのときにも、単元ごとのIDがふられていて、指導要領ベースで横串を刺して、「どういう問題をやっているか、どうやって間違えたか」ということを先生が理解できる、究極の個別化も視野に⼊れていくと、⼦どもたち⼀⼈⼀⼈の学びの 個別化が実現できるのではないかと思った。そうした授業は、先⽣⽅から⾒てどうでしょうか?というのを教えてもらいたい。
 最後に大堂先⽣がおっしゃっていた、「⾃分が解けたからいいというわけじゃないでしょう?まわりを助けに⾏って」という⾔葉がよかった。個別化と学び合い。社会の⼀員なんだから、困っている⼈がいたら助けに行こう、という規律のところ。そこを組み合わせられれば、可能性が広がるな、と思った。

 「やった先⽣の気づきというのを教えてほしいです。どういう試⾏錯誤があって、どういう気づきがあって…」というのを聴かせてください、と言う浅野さんに、大堂先生は以下のようなコメントをされました。

大堂先生: やったことがない新しい教材、やったことがない授業スタイルへの挑戦のなかで、⾃分の授業を⾒直すことができた。多くの課題、気づき、今まで当たり前にやっていたことについても、悩む部分もあった。
⾃分が授業をやっている肌感覚としては、⼀⻫授業の従来型とタブレットの個別学習では、タブレットを使って、⼀⼈⼀⼈が確実に学⼒をつけていくのを⾒ながら45分⾒続けるのはパワーがいることだと思う。⼦どもたちも同様だと思う。1時間⽬は、「どう使うの?」というところがあったが、適応してくると、特にこちらが教えなくても、どんどん使えるようになっていく。想定以上に2回⽬、3回⽬、と操作についての労⼒、時間はどんどん短縮されていった。45 分間の授業が終わった後、⼦どもたちが「ふー」となっていた。脳が汗をかいた感覚がある。密度の⾼い学習をしたのだということがわかった。そこが新鮮だった。
 教科書を使った授業の⽅が楽だったと思う。⾃分の指⽰で、それを聞いて、板書して、問題を解いて…という⼀定の流れのなかで、全員を⾒とって次に進んでいく、ということをしていたんだな、と思う。多少、遅れている子がいても、授業計画もあるし…と進んでしまっていたように思う。そこは、実践をして気づいた反省点だった。
 ノートに記述するところとタブレットに記⼊するところの区別については、これまでの授業スタイルでは、説明→板書→発問というふうに進んでいく。タブレットだと個別に進むので、学習規律が確⽴されていない状態になっている。書くべきものは何か、ということは、ノートでもタブレットでも変わらない。そこを⼤事にしなければならない、ということに気づけた。

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 今回の実証事業について、どのような形で授業を行っていくかは、袋井市教育委員会・三川小学校・凸版印刷で試行錯誤をしてきました。そのことについての話題となりました。

大堂先生: 最初の提案は、スタートは揃えるが、習熟度に合わせて行けるところまで進んでいい、完全個別化・最適化というものだった。そこから、⼩単元ごとに分ける、というふうになるが、現場の先⽣⽅から「それでも難しいのではないか?」という声があった。最終的には、実態にあった形で、45分間のなかで個別化をするというふうにした。授業の前に、現場からの危惧が出たときに、学校の現場に合わせるように対応してもらえた。
 具体的な現場からの危惧としては、「A層がすごく早く終わった時に、そのあとどうしているのか?」「単元計画は、D層に合わせてやっている。早く終われば、残りの時間はどうするのか? 」「それに対して教師は対応できるのか?」というようなことだった。そこに対してどのようなイメージをもっていくのか、ということに学校側としては限界が あった。

浅野さん: オリジナルのプランは、どんどん⾏っちゃいなさい、というふうだった。現場で先⽣が「これだったらいけるかも」と思って変えたのは、スマートな解だったと思う。本当は、「早く終わった⼦はどうするんだ?」ということに対する解を⽤意していく、ということだと思う。学校という空間のなかで、完全な個別化というのはどう実現できるのか。

 この議論の流れのなかで、「アダプティブな学習を進めていくなかでは、公教育のなかでは“公正に個別最適化されている”ということが⼤切だと思う。個⼈のスピードでなんでもいい、というふうにはならず、 ある程度の枠が必要ではないか」というコメントも出ました。この点は、今回の実証研究のなかで公立小学校としては唯一の実証校である三川小学校でのこの実証授業終了後も、引き続き議論をしていくべきことだろうと感じました。

 一方で、アダプティブな学習を行うことによる利点として大堂先生は、以下のような観点もコメントしていました。

大堂先生: 教室だと刺激が多すぎて学習が進まなかった児童が、いちばんに終わるというケースもあった。⼀⽅で、⼀⻫授業のときにとてもよくできていた⼦が、時間がかかるケースもある。観察してみると、慎重に時間をかけて学んでいる。そういう児童もいる。慣れてくると習熟までの時間が短くなると考えている。
 現状は、暗中模索しているので時間がかかっていると思うが、通常授業でも板書計画や準備や発問なども準備しているので、授業準備の時間はあまり変わらない。学習スタイルが定着してくれば、教師は格段に楽になるのではないかと思う。

 実際に、袋井市教育委員会・三川小学校・凸版印刷三者で、児童にとってよい授業になるように質を落とさず、新しい授業スタイルに挑戦することは、「アダプティブな学習」「学びの個別化・最適化」「学び合い」について、多くの気づきを生んでいたように思います。もう1単元、「割合」でも、新しい試みを三川小学校と挑戦していくこととなっていますので、そちらもまたレポートできたらと思います。

(為田)