2019年12月21日に、株式会社内田洋行 新川本社 ユビキタス共創広場 CANVASにおいて開催された、 日本教育工学会 SIG-04「教育の情報化」主催のワークショップに参加しました。タイトルは、「ICT?EdTech?テクノロジーは子どもの学びをどこまで支援できるのか?」で、適応学習(アダプティブラーニング)型の教材を体験しながら「学びの個別最適化」がどの程度、実現可能なのかを考えるワークショップでした。
オープニング
ワークショップは、和歌山大学の豊田充崇 先生によるプレゼンテーションでスタートしました。豊田先生は、教育の情報化における昨今のホットトピックとして「公正に個別最適化された学び」という言葉を挙げました。
今回のワークショップには、「個別最適化された学び」を提供しているサービスとして、株式会社 COMPASS「Qubena(キュビナ)」、シャープマーケティングジャパン株式会社「インタラクティブスタディ」、凸版印刷株式会社「やるKey」、株式会社Libry「Libry(リブリー)」が協力してくれました。参加者は、すべてのサービスの説明を聴き、実際に学習を体験することができます。
「それぞれのサービスが、どういうシステムで動いていて、どのくらいまで学びを個別最適化できるのか、ということを把握しましょう」と豊田先生は挨拶を終えました。
基調講演「ICTとEdTech 学びを助けるテクノロジの動向」
続いて、東北学院大学の稲垣忠 先生の基調講演「ICTとEdTech 学びを助けるテクノロジの動向」が行われました。
稲垣先生は、ICTとEdTechを以下のように比較して説明してくれました。
-ICT
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- 2000年代以降、主に学校・授業の場で活用
- 「授業の効果・効率の強化」を目的とする
- 主体は「教師による選択、指示」
- テクノロジを「(指導の)道具」として使う
- EdTech
2019年12月19日に出されたGIGAスクール構想では、小中学校での「1人1台コンピュータの整備」がうたわれていますが、これは「まったく新しい話でもない」と稲垣先生は言います。
1人1台コンピュータ環境での学びについては、学びのイノベーション事業(文部科学省)、フューチャースクール(総務省)のなかですでにモデルとして提示をされています。学びのイノベーション事業の報告書のなかにある、「B-1 個に応じた学習」も「B-5 家庭学習」も、1人1台だからこそ実現できる学習であり、この時点での試行錯誤がこれから全国に展開していくようになるということがわかります。
学びのイノベーション事業の取り組みについては、YouTubeで映像を見ることもできます。
www.youtube.com
また、キーワードとして挙げられる「個別最適化」についても、新しい話ではありません。稲垣先生は、個別最適化の歴史を挙げ、説明してくれました。
-スキナーのティーチングマシン(1954年)
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- アナログながら個別最適化に向けた最初の一歩
- つくば市立竹園東小学校 CAI教室 (1985年)
- 1人1台のコンピュータで、それぞれの課題をする。
- カーン・アカデミー(2011年)
- 授業動画による個別最適化
- 好きなものを選んで見られる。スタディサプリへと連なる流れ。
こうして見ると、「学びの個別最適化」も新しい話ではなく、これまでの歴史の延長上にあることがわかります。そこで、稲垣先生は、今回のワークショップでは、現場の先生と大学の研究者とで、改めて4つの教育サービスを使ってみて、「学びの個別最適化」の現在について考えていきましょう、という問題提起をして基調講演を終えました。*1
基調講演の補足説明
続いて、函館工業高等専門学校の下郡啓夫 先生により、基調講演の補足説明が行われました。
下郡先生は課題として「すべての子どもが享受できる教育機会・学びの場の提供」を挙げ、EdTechが見据える問題解決として以下のようなポイントを示しました。
-環境による教育機会の格差
急速に変化する教育ニーズへ対応して、質の高い教育プログラムが提供されていくことで、問題を解決できることがEdTechの価値であると下郡先生は説明しました。そして、「各社のテクノロジーに触れて、“これができる”と知り、どう活用できるのか考える機会にしましょう」と言い、補足説明を終えました。
No.2へ続きます。
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(為田)