2019年3月14日に岡山県備前市立香登(かがと)小学校で津下(つげ)哲也先生が行った、総務省の5G動画を使った授業を、津下先生がFacebookに投稿されたレポートをもとに再構成しました。
今回は、5Gの授業の第3時をレポートします。昨日の宿題をもとに、新しい教科を子どもたちが考えてきました。
それぞれ、自分が考えてきた教科についてPRのスピーチをしました。3分間で発表の組み立てを考えて、2分間の練習をし、その後1人ずつ1分間のスピーチをしました。発表の様子はカメラで撮影しており、「カメラの向こうに、国の偉い人がいて、あなたの発表に耳を傾けている。その人に想いを届けるように発表すること。」と津下先生は伝えます。この1年、国語や総合で学習して高めたスピーチ力を活用しました。
ここでPRされた、いくつかの教科の概要を紹介します。
全員のスピーチが終わると、1人5票を持ち、自分以外の5人に投票してもらいます。開票の結果、最も票を集めたのは「VR教学」でした。
この子のスピーチが迫力あるもので、みんなの心をつかんだのは、選ばれた大きな要因でした。心を掴むスピーチの裏側には、実体験がありました。この子はある日の理科の実験の授業を休んでいて、おがくずを使った水の対流実験ができなかったことがあります。でも、その時に、タブレットで撮影した、実際の実験映像を見て、水の対流の仕方を学習しました。その経験が、この子のスピーチのアピールポイントとなり、また、この教科を学習することで、“学習者である子どもたち自身が得をする”ということが、投票をする子どもたちの問題としてストンと落ちたのだと思います。
最後に、人気投票第1位のスピーチをもう一度みんなに聞かせ、自分のスピーチと再度比較させます。スピーチの感想を書いたあと、3時間にわたる5G授業の感想を書いてもらい、授業は終了しました。
総務省の5Gの動画をスタート地点に、教科の必要性や学校の意味というところまで、授業が展開していくのは非常におもしろいと思いました。ICTはただ道具として便利に活用できるというものではなく、生活を大きく変えていく基盤となるものだということを考える、いい契機になる授業だと感じました。
最後に、今回の授業を設計し、実践した、津下先生の感想コメントを紹介します。
総務省の5Gの映像がとても素晴らしく、是非子どもたちに見せたい!と思い実践しました。日常生活で聞いたことがあったり,本年度の授業で体験したことだったり、それらのキーワードがたくさん出てきました。子どもはたくさんの内部情報をもっている、それを出し合い、新たな価値づけを行うところに、共に学ぶ学校の意味があると感じました。
私たち教員や保護者は、「勉強は将来に必要で大切だから、やりましょう」とよく口にします。でも、ふと立ち止まってみると、その「必要さ」「大切さ」を、じっくりと、自分たちの問題として考えさせ、新たな価値づけを行うことはあまりないのではないでしょうか。学校では「国語」や「算数」を教えます。それだけでなく、なぜ必要で大切かを、自分や社会、未来や人生と関連づけて考えさせるがとても大切だと改めて気付きました。
学習や行為の意味付けは、主体性を促します。この3時間、子どもたちはしゃべりっぱなしでした。子どもは大人が思っている以上に、社会の情報に敏感で、情報をたくさんもっていて、主体的で、瑞々しい感性をもっています。教える側、大人の論理ではなく、社会の現状を正しくとらえ、「君はどうしたい?」「君達ならどうする?」と投げかけると、大人では考えつかないような、鮮やかで豊かな答えが返ってきます。この純真さ、鮮やかさを大切に伸ばしていくこと。未来に対しては暗い話題が先行しますが、「この子たちなら明るい未来を創ってくれる」と、明るい展望を描かずにはいられません。
本稿をご覧になられた方々が、一人でも多く5Gの映像を見てくださり、現在の知識をアップデートしてくださり、誰かにアウトプットすることで、明るい日本、明るい世界の展望が開けることを切に願います。
No.4に続きます。
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(為田)