2019年3月13日に岡山県備前市立香登(かがと)小学校で津下(つげ)哲也先生が行った、総務省の5G動画を使った授業を、津下先生がFacebookに投稿されたレポートをもとに再構成しました。4年生、8名が対象です。
今回は、第2時の様子をレポートします。津下先生は、Society 5.0で実現する技術と、学校で習っている国語や算数などの教科と、どんな関係があるかを子どもたちに質問しました。
こうした意見を聞きながら、津下先生は、子どもたちがICTを活用することの本質的なメリットを捉えていることに驚いたそうです。
津下先生は「授業の中でどう活用するか」という視点からさらに踏み込んで、「このような未来がやってくる中で、教科の意味を考えてみよう。国語という教科は、これからの未来に必要ですか?どうして国語を学ぶ必要があるのですか?」と子どもたちに問いかけます。
- 「国語という教科は、必要ですか?」
- 「漢字やひらがなが分からないと、遠隔医療で病気のアドバイスをされても、何のことかわからない。」
- 「そもそも、人と人とが話し合う時に、言葉は必要だから、国語の勉強は大切だ。」(津下先生:“人と人をつなぐもの”として言語をとらえている。)
- 「やっぱり国語って大事だな~。絶対いるいる!」
- 「算数という教科は、必要ですか?」
- 「日常生活で数えたり、はかったり、買い物をしたりする時には、数字や計算がいるし、単位もいる。」
- 「ロボットを作ったり、窓やドアなどを作ったりするためには、長さが必要だし、角度がないとどの向きに向ければよいのかわからない。」
- 「やっぱり算数って大事大事!勉強しているときは、面倒だな~とか思うこともあったけど、国語も算数も生きてくのに大切なんだ。」
- 「社会という教科は、必要ですか?」
- 「理科という教科は、必要ですか?」
- 「理科は、新しい発明をしたり、生きていくのに必要な食べ物を育てたり、病気やウィルスから身を守るのに大切な教科。」(人類や地球といった視点。)
- 「音楽は?」
- 「twice(韓国のグループ)や、セカオワ(sekaino owari)など、聞いてて楽しいし、人を楽しませたり、リラックスさせたりする効果がある。声も素敵。夢がある。音楽を通じて外国とのつながりもできる。演奏が終わった時の達成感を味わうことができる。ドレミがある。」
- 「ドレミは音楽の共通の言葉ですよ、先生。ドレミがなかったら、先生も楽器を演奏できないですから。先生がギターを演奏できるのは、ドレミという言葉のおかげですよ!」(津下先生:ドレミを言語としてとらえ、それを、人間と音楽とのコミュニケーションツールとしてとらえている。)
- 「歌を歌うには、歌詞の様子を思い浮かべないといけないから、国語とつながっているよ。」
- 「国語も音楽も、『表現する』っていうつながりがあるな!」
- 「音楽は、音を楽しむだから、やっぱり人を楽しませるんだ。」
- 「そう考えたら、社会は、『会う』が入っているから、人と人とのつながりを勉強する教科なんだ!」
- 「体育は大事?」
- 「もちろん大事。健康に生きるためには体を動かす必要がある。運動をしているととても気持ちがいいし、今何をしているか忘れちゃうぐらい夢中になるほど楽しい。」
- 「体育がなかったら、体操選手として活躍できないよ。」
- 「災害が起こっても、走れなかったら逃げられない。体育は『体を育てる』学問なんだ!」
- 「図工は?」
- 「図工も大事。ねじやそれをとめる技術がないと、ロボットは作れない。プログラミングや指示をするにも、図面が必要だし、何か道具が生まれても、使いこなす技術が必要。家、つくえを作るには、設計図が必要。図工は、図を見て工作する教科だ!」
- 「図工という教科は、創ること、工夫することそのもの。創るということは、頭を動かすということだから、脳がはたらく。算数とも同じ。」
- 「道徳は大事?」
- 「道徳こそ大事。人とのつながりや命の大切さ、生きる道について考える。いじめがあったら困る。道徳には決まったこと答えはない。考えることが大事。子どもの発想だと、まあ許されることもあるけれど、大人の社会になると、ゆるされないこともある。だから、調整することが必要だし、そのためにコミュニケーションが必要。」
- 「外国語は?」
- 「外国語は、世界の人々と話し合うのに必要。そもそも、翻訳すらなくなるかもしれない。スーパーで外国の方がおられて、困られていたら、助けてあげるために必要。」
授業の最後に、津下先生は宿題を出しました。「学校ではこれらの教科を学習しました。それぞれの教科の大事さも分かりました。そこで、これらの教科に加えて、あと1教科、新しい教科をあなたが作るとしたら、どんな教科をつくりますか?どんな教科を作り、どんなことを学習しますか?」
5Gから始まった授業は、人はなぜ学校で学ぶのか、国語や算数を学ぶのはなぜかといった、学びの本質に迫る内容となりました。津下先生もこうした結末になるとは、まったく予想をしていなかったそうです。
子どもたちはどんな教科を学ぶべきだと考え、どんな教科をつくるでしょうか。
No.3に続きます。
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(為田)