教育ICTリサーチ ブログ

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『「学校」をつくり直す』 ひとり読書会 No.3 「杉並区の独自の学力調査」

 苫野一徳『「学校」をつくり直す』を読んで、自分のためにまとめたメモを公開していく、ひとり読書会のNo.3です。今回は、第2章「先生もつらい」のなかで紹介されていた、東京都杉並区の独自の学力調査(「特定の課題に対する調査、意識・実態調査」)について紹介します。苫野先生は、この学力調査を、きわめて画期的な、大いに参考にすべきものだと評価しています。そのポイントを、以下にまとめました(p.80-84を参照)。
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www.city.suginami.tokyo.jp

  • 一人ひとりの子どもたちが、達成を保障されるべき各教科等の学力の観点からして、今どの“段階”にいるかということを明らかにする。
    • R1からR5までの五段階に分け、R1は「学び残しが多い」、R2は「特定の内容でつまずきがある」、R3は「おおむね定着がみられる」、R4は「十分定着がみられる」、R5は「発展的な力が身に付いている」。
    • 杉並区は、すべての子どものR3以上の到達を保障できるよう、学校と行政が協力し合ってさまざまな支援を行っている。
  • 苫野先生が画期的だと評価する点:
    • 子どもたちの学力の過程を一人ひとり経年的にプロットしていること。子どもたちの成長を長い目で理解するため。
    • 段階ごとの学力把握をしていること。先生にとっては子どもたちの学力を1点ずつの尺度ではなく、ざっくりと段階ごとに把握したほうが支援しやすい。ある教科のある内容について、この子はR3だった、別の子はR4だった、のように。
    • 把握された子どもたちの学力状況を、各先生が活用できるよう、見える化している。統計が苦手な先生でも、子どもたちの状況が一目瞭然になるよう、ヒートマップやクロスバブルチャートなどを用いて直感的に把握できるようにしている。
    • これらの結果を、すべての子どもの学力保障・向上のためのツールとすることを、常に最上位の目的にしていること。
  • 杉並区は、学力の保障・向上のためにも、「みんなで同じことを、同じペースで、同じようなやり方で」から脱却し、「個別」「協同」「探究」へと学びのあり方を“構造転換”していくと明言している。

 こうして、どのようにデータを見たいのか、ということが明確になっていて初めて、EdTechを使って学習の履歴(スタディ・ログ)がとれるようになることに意味が生まれると思います。全部を履歴としてとって、そこから何が見とれるかということを考えるには、学校現場は忙しすぎるし、なかなか実効性のあるものが見とれないように思います。
 でも、1点1点の違いを見るのではなく、こうして習熟度を段階として明確にして、クラスにいる児童生徒がどの段階にどれくらいいるのか、ということを見て、それを授業設計に活かしていく、ということができれば、それは先生方の授業力を向上させることに繋がると思います。
 こうして、「個別化」と「協同化」を通じて、学習指導要領で定められている学力が定着しているかがわかれば、その先にある「プロジェクト化」=「探究」の段階へ進んでいけばいいと思います。

 苫野先生は、公教育の本質を言語化しています。

結論から言えば、公教育の本質は、すべての子どもが「自由」に、つまり「生きたいように生きられる」ための“力”を育むことにあります。(略)
自分が「自由」に、つまり「生きたいように生きる」ためにも、他者の「自由」もまた認め、尊重できるようになる必要があります。
これを「自由の相互承認」と呼びます。つまり教育は、すべての子どもに「自由の相互承認」の感度を育むことを土台に、すべての子どもが「自由」に生きられるための“力”を育むためにあるのです。(p.85-86)

 僕はこの苫野先生の言葉には大賛成です。そのために、学校教育をどうアップデートしていくかを考えることが重要であり、そのためのヒントが、この本、『「学校」をつくり直す』の中にはたくさん含まれていると思います。

「学校」をつくり直す (河出新書)

「学校」をつくり直す (河出新書)

「学校」をつくり直す (河出新書)

「学校」をつくり直す (河出新書)

(為田)