教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

書籍ご紹介:『16歳からの交渉力』

 田村次朗『16歳からの交渉力』を読みました。部活、お小遣い、進路など、高校生に親しみのあるストーリーをベースに、交渉力について考える本です。

 「おこづかいの値上げ交渉」のケースのところで、子ども側にだけわかっている秘密情報と、親側にだけわかっている秘密情報で、それぞれに分かれて交渉をするというのが例として紹介されています。

1つのクラスを、「子供」役の生徒と、「親」役の生徒の半々に分け、それぞれにロールを渡し、紙に書いてあるお互いの情報は見せないようにする。次に、5~10分ほどかけてそれぞれ読んでもらう。それが終わったら、「子供役チーム」と「親役チーム」に分かれて、さらに10分ほど戦略会議をしてもらう。つまり、どのように相手と交渉したらいいのかみんなで話し合ってもらうわけです。そして、2人1組になって交渉を始めてもらいます。
(略)
大切なことは、交渉が終わってから相手と紙を交換して、相手の情報を知ることです。あー、そういうことだったのか、それが早くわかっていれば、もっといい交渉ができたのに、ってみんな言います。ならば、なぜそれを聞き出そうと努力しなかったのか。そこがキーポイントなのです!(p.100)

 実は、僕の結婚披露宴のときに、上司が交渉に関する話をしてくれました。夫婦で、お互いに「1個だけあるオレンジをほしい」とケンカになったりすることがあるかもしれない。でも、相手の話をよく聴いてみたら、夫は「果肉の部分を食べたい」、奥さんは「皮を使って、オレンジピールを作りたい」のであって、1個のオレンジを2人で使うことができる、という話だったと思います。

 お互い、相手がどういう目的で、どういう条件で交渉をしているのかということがわからない状況での交渉をするときには、「相手のことを知る」ということが重要になります。こうしたことを実地で学べるケースをたくさん用意して授業をやってみたいな、と思いました。

 著者の田村先生の授業を、大学時代にいくつか履修したことがあります。田村先生の担当ではなかったですが、学部では「交渉研究論」という授業があって、こういうケースについて、「面と向かって交渉する」「電話だけで交渉する」「メールで交渉する」というふうに条件をつけて、それぞれについて結果がどう違うか、というようなこともやった記憶があります。
 いまだったら、これらに「LINEだけで交渉する」「ビデオ通話(Zoomなど)で交渉する」というようなのを入れてもいいかもしれません。
 教室でやってみるときにも、授業支援ツールなどを使って、さまざまな交渉をやってみるというのもおもしろいかもしれないと思いました。

(為田)