2019年8月2日に、福生市立福生第七小学校で公開EdTech研修会が開催されました。福生第七小学校では、2019年度の校内研究主題を「EdTech(教育×IT)を活用して、21世紀を生き抜く確かな学力を育む」として、研究授業を重ねてきています。
すべての模擬授業が終わり、最後に東北学院大学の稲垣忠 教授による基調講演が行われました。タイトルは「情報時代の学校をつくる6つのアイデア」です。
EdTechとは?
稲垣先生は、今回の「公開EdTech研修会」というイベントのタイトルにも入っている、「EdTech」という言葉について、「学習者主体のテクノロジー活用」だという説明を行いました。これまでも学校ではいろいろなテクノロジーが活用されてきました。例えば、幻灯機やOHPがそうです。しかし、これらは教師主体のテクノロジー活用でした。それに対して、EdTechは、「学習者主体のテクノロジー活用」であるというのがポイントです。
また、EdTech業界には、ベンチャー企業も含めて、新しい企業が入ってくるようになってきています。これも、これまでと違う点だと言えます。また、ターゲットが学校だけではなく、学習塾、通信教育、ホームスクーリングでも使えるようになっています。
未来の学校はどんなものか?
ここで、政府が作ったSociety5.0の動画をみんなで見ました。稲垣先生は、「この動画の中で、Society 5.0に生きる高校生が学校へ行く様子が出てきます。この子たちが行く学校は、どんな学校だと思いますか?それを考えてみてください」と言いました。
https://www.gov-online.go.jp/cam/s5/www.gov-online.go.jp
このあと、Mentimeterというサイトを使って、会場のみなさんからの「こういう学校だと思う」というコメントを集約して話し合いました。こうして意見を集約することで、他の人の意見をたくさん見ることができるのも、学習者主体のひとつの形だと思います。
www.mentimeter.com
さまざまなコメントが出ていましたが、授業がどう変わるのか、という部分については、「授業でどうICTを活用するか?」と「子どもの学びをEdTechがどう豊かにするか?」ということに、あとは何があれば「情報社会にふさわしい学校になるのか?」ということを考える必要があります。
文部科学省が目指す次世代の学校・教育現場の姿も、「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」として2019年6月に出されました。このなかでは、学びの個別最適化や遠隔教育、先生が授業をするときの指導案をレコメンドしてくれる、というような将来像も描かれています。
EdTech(=テクノロジーの発展)は、かつてできなかったことを可能にしていると稲垣先生は言います。教材/授業を、「一人ひとりに合わせたものを…」と考えるのは当然だし、そうした理論は1950年代からあったのです。それが、アダプティブ・ラーニング(適応学習)として現実になりました。テクノロジーが可能にしたのです。
今日の模擬授業の中では、やるKeyを解くときは、みんな黙々と問題を解いていました。でも、これならば学校にいる時間に、みんなで揃ってやるのはもったいないのではないか、と考えて、反転学習など新しいスタイルも生まれてきます。
同じく模擬授業でやった、スクールタクトも、「授業支援ツールなのに、データは学習履歴としてクラウドに残っている。授業支援ツールなのに、ポートフォリオにもなっている」と稲垣先生は言います。こうした形は、子どもにとっても、先生方にとっても良いものです。
稲垣先生の訳した『情報時代の学校をデザインする』の本の中でも、さまざまな学校が紹介されています。学校の規模をもっと小さくして、先生10人くらいでクラスターを作れば、学年ごとに分ける必要もなくなるのではないのかというアイデアも紹介されています。本で紹介しているもの以外にも興味深い学校はたくさんあります。例えば、教師をLED(Learning Experience Designer、学習体験デザイナー)と呼ぶ学校として、Design39Campusは校舎も斬新です。
こうして、情報時代に入り、テクノロジーが発達し、新しい形の学校が可能になってきています。その一方で、地域の学習拠点として、みんなが学ぶ従来の学校の形にも価値はあるので、どの部分をテクノロジーでアップデートし、どの部分を残していくのか、ということを考えていく必要があるのではないかと基調講演を聴きながら思いました。
稲垣先生は、講演を「情報化と人口減少という変化は、学校は受け止めざるを得ない」としながらも、「そのなかで、身につけなければならない力、例えば、読み書き能力はこれからも大事でありつづけるけれど、それをどう活かすか?という資質・能力の視点から捉え直していくことになる。そのため、学び方は一斉指導から、テクノロジーを用いた個に最適化された学びと、地域や実社会とつながるプロジェクト型の学びの組み合わせへと変わり、制度・枠組みも変わりつつある」とまとめました。
地域の人たちも含めて、新しい学校の姿を考えるいいきっかけになったのではないかと思いました。
(為田)