山野弘樹さんの『独学の思考法 地頭を鍛える「考える技術」』を読みました。学校を出た後、どんな人生を送るにしても、自分で学べるようになる=独学できるようになることはとても大切です。独学できるようになるために、どんな思考法が必要なのか、どんなスキルが必要なのか、を知りたくて読みました。読書メモを共有します。
最初に、「独学」がいかに大切なのかを山野さんが書いてくれています。
正解がない時代において「何を、どのように勉強すれば良いのか」という問いに答えることは容易ではありません。明確なゴールを設定しやすい「参考書」を用いた学習の場合でさえも、「本当にこの本を読み通せば自分の望む知力が手に入るのか?」ということは、誰も教えてくれないでしょう。
何をどのように学ぶのか、常に自分自身に問いかけながら前進していく独学の道のりは、どちらが前なのかも分からない闇の中を歩み続けるようなものです。こうした闇の中を、何の武器や道具も持たないままに歩き始めてしまったら、私たちは幾度となく途方に暮れてしまうことでしょう。
そう、独学こそ「自ら思考する力」が本質的に試されるのです。(p.4)
独学の思考法として、原理編「自ら思考する力」と応用編「対話的思考」に分けられていて、それぞれで3つのステップで紹介されています(p.17)。
- 【原理編】自ら思考する力
- ステップ1
- 問いを立てる力
- ステップ2
- 分節する力
- 要約する力
- 論証する力
- ステップ3
- 物語化する力
- 【応用編】対話的思考
- ステップ1
- 「問い」によって他者に寄り添う
- ステップ2
- 「チャリタブル・リーディング」を実践する
- ステップ3
- 他者に合わせた「イメージ」を用いる
このなかで、初めて出会った言葉が、「チャリタブル・リーディング」でした。チャリタブル・リーディング(Charitable reading)は、「他者と生産的かつ円滑な対話を行うためのスキル」(p.166)と書かれています。
学校で一人1台の情報端末で授業支援ツールを使って意見を交流したりするなかで、「ただクラスメイトの書いたことを読む」のではなく、そこから「生産的かつ円滑な対話を行う」ことができて、その対話から自分で学べるようになることはとても大切だと思います。だからこそ、この「チャリタブル・リーディング」という考え方は、授業のなかに取り込むこともできるのではないかな、と思いました。
チャリタブル・リーディングについて書かれていたページをまとめてみました(p.167-176)。
チャリタブル・リーディングとは、「相手の欠点があったらその欠点を補ってあげる」ような読解方法のことを言います。
- 相手が「一面の真理」を突いていると仮定する。
- 粗探し的な態度を予防する
- チャリタブル・リーディングとクリティカル・シンキングは相互に両立する思考法である。
- 相手の主張が正しいと仮定することで、「あれ、それが正しいなら、この点はどう説明したらいいんだろう?」という箇所をあぶり出せるのが、チャリタブル・リーディングの効用。
- このチャリタブル・リーディングの側面が、上手く説明できていない点を見つけだし、その問題点を検討するクリティカル・シンキングとしての側面とつながる。
- チャリタブル・リーディングにおける対話者同士の関係性は「相互補助」的なものである。
- チャリタブル・リーディングは、どちらかが一方的に先生役を担うわけではない。
- お互いに補助しあい、相手の論をブラッシュアップする可能性がある。
対話者同士が「相互補助」的な関係を作る体験をたくさんさせてあげたいと思います。そうした学びが教室で起こる学級文化を先生と子どもたちが作っていくことも必要です。
そのために、ICTができることもあると思います。先生方がICTを活用することで、「チャリタブル・リーディング」を子どもたちができるようになっていくのではないかと思いました。
(為田)