教育ICTリサーチ ブログ

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愛和小学校 × Ludix Lab「i和design冬期講習会」@東京大学レポート #2 アイスブレイク~校長講話

 12月26日に、東京大学福武ホールにて、Ludix Lab公開研究会 愛和小学校 × Ludix Lab「i和design冬期講習会」@東京大学を開催しました。

アイスブレイク

 最初に愛和小学校の下鶴先生がアイスブレイクをしてくれました。4人グループのテーブルを4つ用意して、スタートをしたのですが、長時間みんなで過ごすイベントで、テーブルでやりとりが活発に行われる方が、今後もつながって、一緒にどこかで協力できたりする可能性は高まるので、こうした機会があると助かります。最初は全員で1つの大きな輪になってスタートです。
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 その後、2つのグループに分かれて、それぞれのグループで自己紹介をさまざまなルールを使って行っていきます。ランチも挟んで夕方までの長時間のセッションを、みんなで楽しく学び多い状態で過ごせたのは、このアイスブレイクが大きな役割を果たしたのではないかな、と思いました。
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校長講話

 松田先生による、校長講話がスタート。いくつかポイントを写真とともにレポートしていきたいと思います。テクノロジーが学校をどう変えていくのか、これからの子どもたちにどんな能力が必要なのか、ということを語ってくださいました。そして、「学校は時代&技術を学ぶ場」という定義も見せてくれました。こうした定義を、たくさんいるステイクホルダーと合意していくことで、いろいろなことをできるようになっていくのかもしれない、と思いました。
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 学校へのICTの導入について、「流行と不易」で考えた時に、「ICTは流行であり、授業こそが不易」だと発言される方もいます。それに対しての、松田先生のスタンスが明快で、ひとつのカウンターとなり得るものだと思いました。曰く、「学校は最先端だ、というのが、私にとっての不易だ」。この言葉は非常に大切だと思います。
 自分の小学校時代を振り返ると、放送室から教室へ放送ができるようになって、とてもワクワクした記憶があります。学校にピカピカのトランペットが来たときも嬉しかったですね。トランペットを思いっきり練習できるのも、学校の良さだったと思うのです。学校って、「学校だから、失敗したって平気だし、思う存分やっていいよ」という場所であってほしいと思います。そのためには、学校が最先端にいなくてはいけない、と思います。
 そのためには、松田先生の言葉で言えば、まず「(デジタルを)使って使って使いまくること。それから。」なのでしょう。「できるけど使わない」のと「ただ使わない」には天地の差があります。僕は「デジタルを使わない」のでもいいと思いますが、どういうことができるのかを知って、実際に使ってみて、そのうえで「使わない」と決めてほしいと思います。
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 校長講話の後半で、松田先生は、「新たな学び」をいくつか紹介してくれました。ここで、BB-8→プログラミング、EV3→正負の数、Minecraft→回路、English Central→英語と4つのテーマを示し、「BB-8、何台動かせる?」「Minecraftのこないだの、ライトつけられる?」など次々と隣のスペースで作業をしていた先生たちに指示を出します。そして、先生方がすぐに準備に入ります。実は、こうした瞬発力が愛和小学校の先生方(今回来ていただいた、チームi和design)は極めて優れているな、と思いました。
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新たな学び(1)BB-8

 BB-8は、前日の愛和小学校の終業式でダンスをさせたそうです。児童たちは拍手喝采。アンコールの拍手がすごかったそうです。終業式でアンコールって…と思いますが、こうしたところも、松田先生が重視される、Enjoyable、Fantastic、というところなのだと思います。初等教育において、「楽しい!」とうのは力強い学びのエンジンになるものだからです。
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 後で聞きましたが、BB-8を動かしたときに、プログラムがどうなっているのかを見たくて、iPadの方を見に来る児童もいたそうです。これって、すばらしいと思います。BB-8はかわいい。でも、それ以上に“どう動かしているのか”に興味がある、ということですよね。そこから、ものづくりに興味がいき、そこから科学教育やSTEM教育の方にどんどん興味関心を伸ばしていく…。そうした流れができるのではないかと思いました。
 7台のiPadでBB-8は動かしていたのですが、iPad間でプログラムはやりとりできないそうで、終業式前日に、業務が忙しい先生方(このイベントのために梱包などもあってより忙しかったと思います…)に任せるのではなく、プログラミング自体は、松田先生が自ら1台ずつ、校長室でやっていたそうです(と、田畠先生が教えてくれました)。こういう、校長自ら、どんどんチャレンジしているというのが、チームi和designのいいところです。松田先生は、「わからなかったら、どんどん授業で使っている先生に訊く。それでもわからなかったら、子どもたちに訊く。だから、先生たちのこともリスペクトしているし、子どもたちのこともリスペクトしている」と。
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新たな学び(2)EV3で正負の数

 続いて、EV3を使って正負の数を教える、というもの。正負の数は中学校1年生の数学で学びますが、けっこうつまずく子も多いところです。それを、EV3でタイヤを何回転させるか、というのと連動させて教えましょう、ということです。EV3を松田先生自ら設定して、床にタイヤ1回転を1目盛にしてある紙の上を動かします。
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 そして、タイヤを「5回転」と「-3回転」させるプログラムを続けて書いて、結果がどうなるのかを考えさせます。5回転して、-3回転するということは、目盛はいくつのところで止まるのか?というのを実演します。
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 ここから、「では、5-(-3)はどうするか?」をグループディスカッションしました。松田先生は、EV3を動かして、5まで進んだところで、EV3の向きを180度変えました。すると、見事に8のところまで進むということです。こうして科目の中にプログラミングが入ってくる、ということもどんどん増えてくるだろうと思います。

新たな学び(3)English Central

 続いて、English Centralの紹介です。これは知らなかったですが、良さそうでした。10,000本以上の動画が、レベル別に見ることができます。ほどよい長さの動画です。
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「見る」→「学ぶ」→「話す」→「GOLIVE!」とステップを踏んで学んでいくようにデザインされています。話すのところでは、音声認識システムが実装されていて、自分の発音を採点してくれます。松田先生がデモで実際に発音したものも、「Nice!」などと評価され、ポイントが入る、ゲーミフィケーションが導入されていました。
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新たな学び(4)Minecraft

 最後に、Minecraftです。5年生が行ったエディブルガーデンの様子を、Minecraft内で再現したそうです。5年生も一緒に作ったそうです。Minecraftでは、内部まで作れるので、仕組みを作れます。外側だけを作るのではなく、内側を作ることもできます。実際、ネットで検索してみると、ピラミッドの内部構造までしっかり作っているユーザがいたり、大きな構造物の内部構造などを作っているユーザの作品をたくさん見ることができます。
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 また、Minecraftでは、レッドストーン回路というのを使って、回路を作ることができます。上田先生が回路を作って、ランプをつけたり、ツリーを光らせたり、ということもしているそうで、そうした説明もしてもらえました。理科の回路を学ぶところと結びつけたりすることもできそうです。
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 松田先生は、「マイクラMinecraftの略称)は教科の中に取り入れられるのではないか、という勘。」と言っていました。実際に、この活動でやってみると、子どもたちの集中力が本当にすごかったそうです。90分、休憩なしで集中できていた、とのことです。そうして没頭させられるコンテンツというのは素晴らしく、それをどう教科の中に入れ込むか、というのを考えるのも、楽しいのではないでしょうか。

まとめ

 こうした最先端のものと教科指導とを、どう結びつけられるだろうか、というのを常に考えているのだろうな、と思わされる、校長講話でした。

 #3へ続く。
blog.ict-in-education.jp


(為田)