読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

教育ICTリサーチ ブログ

ICTを教育にどう活用できるか、現場目線でリサーチします。

「検索」について考える2冊の本

 会社の近所にある、青山ブックセンターの店頭に、下のような看板が出ていました。とてもいいメッセージだなと思い、撮影してきました。「検索でたどりつかない、本とアイデア」というのはありますよね。
f:id:ict_in_education:20170406185143j:plain:w400

 検索はとても便利だし、たいていのことについてすぐにわかるというのは本当にいいことだと思います。だから、検索の手法を学ぶことも非常に大事です。ただ、「検索ですべてがわかるわけではない」ということも同じように重要です。何か知りたいときに、「どこで調べたらいいか」「どうやって調べたらいいか」を知っていることが大事で、ネットで検索した方がいいもの、誰かに話を聴きに行った方がいいもの、図書館や図書室で書籍や雑誌にあたる方がいいもの、と使い分けをできるようにすることが、大切なのだと思います。もちろん、このなかで、紙の本がずらりと並んでいる書店の果たす役割りは、まだまだ大きいんじゃないかと僕は思っています。

検索は便利だけど…キーワードが大事

 …と、看板を見て、ああそうだなあ、と思って見ていて、ある本のことを思い出しました。東浩紀『弱いつながり 検索ワードを探す旅』。2年ほど前に、このブログで取り上げています。どこにも行かないで検索で情報を集めるのはとても便利だけど、基本的には「キーワードを知っていること」が必要なわけで、ただ検索しているだけでは世界は広がらない。新しい検索ワードを得るために、外に旅をせよ、という本でした。

blog.ict-in-education.jp

 ネットを使っての検索ということについて、そもそも検索キーワードを自分の中に持っているかどうか、だと思います。「これについて調べたい」と思うためには、自分の中に検索したいキーワードがなければいけません。キーワードを知らないことには、調べることもできない。だから、学校の授業で知識を増やすことも必要だと思うし、テレビ番組やネットなどの情報を見ることも必要だと思うし、人と会うことも大事だし、自分の身の周りの人から学ぶことも多いと思います。
 そうした視点も持ちながら、情報との接し方を教えたいな、と思います。

検索は便利だけど…その先に思考をつける必要がある

 もう1冊、こないだ読んだ本を思い出しました。森博嗣『人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか』。情報との接し方、思考についてのこと、学校教育についてのことなど、おもしろかった部分をメモ。

人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか (新潮新書)

人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか (新潮新書)

知識を得ることは、抽象的思考とは方向性がまったく異なる。もしも、知識の多さが「理解」であり、知識によって物事がすべて解決できると思い込めば、もうなにも考える必要がなくなってしまう。子供のうちから、知識の詰め込みを重視し、覚えた情報の多さがテストの点数になるのだから、考え方よりも知識量重視になるのも無理はない。子供は、教えられたものを覚えれば、それで社会の成功者になれる、と簡単に信じてしまうだろう。
今の子供たちにとって大事なことは、「覚えること」と「忘れないこと」そして「正確にそれを思い出せること」であって、「思いつける」ことではない。だから、たまたま思いつけるかどうかで解けるか解けないかが決まるような問題は、勉強した者が馬鹿を見る悪い問題だ、と判断されてしまう。(p.103-104)

 抽象的思考ができることは、正解がわからない問題に取り組むときには必要だと思います。そうした学びの形はこれから学校で増えてくるといいなと思っています(増やそう、という方向には絶対に来ていると思っています)。
 検索についても触れられていました。

最近では、不思議なこと、わからないことは、すぐにネットで検索する。もし、図書館で調べるとしたら、図書館が開く時間まで待たなければならない。そうなると、それまでの時間は、謎は謎のままでその人の頭の中で放置されている。少なくとも、少しは自分で謎に取り組む(あるいは、ぼうっと眺める)時間が必然的に生まれる。ところが、すぐに検索できる便利さが普及したおかげで、「不思議だ」と思うのも束の間のこと、考えるよりもさきに、ネットにアクセスしてしまう。
このような現代において、抽象的思考をするのは、たしかに難しくなっていると感じられる。あまりにも、具体的な情報が沢山あって、しかも簡単に(安く)得られるようになっているからだ。人々が抽象的思考をしない理由には、こんな社会環境もあるとは思う。(p.105-106)

 なるほど、便利でいいことばかりでもないか、と。思考する習慣を育むという意味では、不便さを意図的に作り出すということもありかもしれないと思いました。

まとめ

 2冊とも、とてもおもしろかったので、もし興味ありましたら、手にとってみてください。学校の先生方が読んで、どんな感想をもたれるのか、聴いてみたいです。情報の授業の中でも、検索の方法は学ぶと思うのですが、それの周辺に「検索キーワードを増やすこと」や「検索と思考の関係」などが存在するといいなあ、と思って書きました。授業の上手な先生は、このあたりをバランスよく配置するのが本当にうまいなあ、と思っています。
 学校の図書室とかにも入っているのかな…。中学生、高校生くらいで読んだら、どんなふうな感想なのだろう…と思いますね。

(為田)