山口周『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』を読みました。
哲学者の思想や人生については、高校の倫理の時間に時系列でざーっと追っていったのはなんとなく覚えています。大学時代に文学部の倫理学概論なども他学部の単位振替で履修もしました。
たいていは、あるテーマにそって、時系列に哲学者とその思想が紹介されるのがオーソドックスなパターンになりますが、この本はそうではなく、時間軸に関係なく「人」「組織」「社会」「思考」の4つのキーワードが目次に並んでいます。これらのキーワードに絡めて哲学思想が紹介されています。学ぶメリットとして、以下の4つが挙げられていました。
- 状況を正確に洞察する
- 批判的思考のツボを学ぶ
- アジェンダを定める
- 二度と悲劇を起こさないために
Kindleで読んでいたので、気になるところはハイライトで残してあるので、マイノートでいつでも確認できます(これをいつでもiPadで確認できるのは本当に便利だと思います)。
気になったポイントは以下のようなものでした。
- 01 ロゴス・エトス・パトス――論理だけでは人は動かない アリストテレス
- ビジネスだけでないですけど、まあ社会はこういうことは多いので。
- 09 悪の陳腐さ――悪事は、思考停止した「凡人」によってなされる ハンナ・アーレント
- 18 解凍=混乱=再凍結――変革は、「慣れ親しんだ過去を終わらせる」ことで始まる クルト・レヴィン
- 仕事上、この「慣れ親しんだ過去」を終わらせる必要はないと思っているものの、「慣れ親しんだ過去」から次へ歩みを進めるということをサポートしているので。
- 20 他者の顔――「わかりあえない人」こそが、学びや気づきを与えてくれる エマニュエル・レヴィナス
- 「自分は正しく、自分の言説を理解しない他者は間違っている」という断定から起こる悲劇のいろいろ。小さな範囲から、こういうのを変えていきたいと思っています。
- 27 一般意志――グーグルは、民主主義の装置となりえるか? ジャン・ジャック・ルソー
- 「組織における集合的な意思決定の仕組みの可能性について」。思想家の東浩紀さんが、現在のテクノロジーでできるのではないか?と指摘している、『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル (講談社文庫)』もおもしろかった。もう一度読もうかな、と思いました。
- 33 パラノとスキゾ――「どうもヤバそうだ」と思ったらさっさと逃げろ ジル・ドゥルーズ
- 37 公正世界仮説――「見えない努力もいずれは報われる」の大嘘 メルビン・ラーナー
- 公正世界仮説の持ち主は、「世の中というのは、頑張っている人は報われるし、そうでない人は罰せられるようにできている」と考える。この逆の推定も起こる、「成功している人は、成功に値する努力をしている」、逆に不幸な目にあった人は、それに相当する原因が本人にあるのだろう」と。これも社会のことを考えるのには乗り越えなければいけないことだと思っています。
- 43 シニフィアンとシニフィエ――言葉の豊かさは思考の豊かさに直結する フェルディナンド・ソシュール
- 44 エポケー――「客観的事実」をいったん保留する エドムント・フッサール
- VUCA(Volatility=不安定、Uncertainty=不確実、Complexity=複雑、Ambiguity=曖昧)な世界において、正しく物事を判断することは大事。わかったつもりにならないために、エポケーは大事かな、と。
いずれのテーマにしても、学校のシーンと組み合わせて話すこともできるように思います。授業で紹介する哲学者と関連するキーワード→自分の学校生活との関連性の紹介→哲学の紹介→みんなでリフレクションをGoogleドキュメントやスクールタクトなどで共有→ピアレビュー、という流れの授業もおもしろいのではないかと思いました。
(為田)