教育ICTリサーチ ブログ

ICTを教育にどう活用できるか、現場目線でリサーチします。

JAPET&CEC海外調査部会 オーストラリア視察研修報告7「EduTECH 2018参加報告」

 6月7日と8日は場所をシドニーに移して、EduTECH 2018に参加してきました。
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 公式発表ではスポンサー・出展社数が276社、参加者数が11,000人以上ということで、南半球で最大級の教育系イベントとのことです。EDIX(教育ITソリューションEXPO)のオーストラリア版といったところでしょうか。

 第7回の今回はその中からいくつか気になった商品やブースを紹介させていただきます。

Osmo

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 今回訪問したHillard State Schoolでも導入されていた教材です。日本でもすでに以下の記事などで紹介されていますが、ご存知でない方は是非一度動画をご覧ください。

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 例えばタングラムなどの図形パズルをする際に、一般的なアプリでは画面の中にあるブロックを操作します。一方、OsmoではiPadと実物のブロックがセットになっていて、画面の外にある実物のブロックを操作すると画面の中の図形が動くようになっています。
 画面上の操作だけだと、低年齢の児童にとっては思うようにいかない場合もあるでしょうし、1人での作業に終始してしまうこともあるかもしれません。その点、実物を操作できるOsmoは操作がしやすく、横から手を出したりしやすいので複数人で活動することができます。実際に触ってみると、認識の精度もとても高くて、全く違和感なく画面の外と中が連動しています。
 Tangram(図形パズル)、Words(英単語)、Cording(プログラミング)、Numbers(算数)など様々なアプリがあり、日本語にも対応しています。アプリ自体は無料ですが、使用するにあたってはベースのキット(スタンドと画像認識用の鏡)+各アプリに対応したブロックのキットを購入する必要があります。決して安いとは言えないので学校現場などで大規模に導入するのは難しいかもしれませんが、その分クオリティーはとても高いです。Osmo社のHP(https://www.playosmo.com/ja/)やAmazonなどからも購入が可能ですのでご興味のある方は一度ご覧になって下さい。

Dash

 こちらも今回の訪問した学校に導入されていたロボットです。オーストラリア中の学校にキットで導入されているそうで、前後左右の動きや首の角度、ライトの光り方などを制御することができます。それ自体でも十分面白いですが、例えばシロフォンを取り付けて音楽を演奏させたり、ペンを装着してキャンバスに絵をかかせたりといったこともできるようになっています(※それぞれのキットは別売り)。
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 子どもの発達段階に応じて様々なアプリが提供されており、それぞれのアプリの内容や対象年齢に応じたUI設計がされているのも特徴です。
 残念ながらアプリはまだ日本語対応はしていないようですが、こちらもAmazonなどで購入できるようです。

KAPLA (HAPPY BUILDER)

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 同じ形・大きさのブロックからなる積み木です。シンプルなブロックを組み合わせることで様々な造形を作ることができ、大勢で力を合わせれば非常に大きな構造物をつくることも可能です。オーストラリアでの代理店であるHAPPY BUILDER社は、STEM教育の一環として全国で未就学から高校まで段階に応じたワークショップを開催しています。

 日本ではSTEMというとプログラミングやロボティクスの方に関心が行きがちですが、試行錯誤をしながら造形や構造を考えたり、友だちと協力や分担をしながら1つの構造物を作り上げたりする活動はSTEM教育やプログラミング教育の目指すべき方向のど真ん中と言えるかもしれません。日本にも代理店があり、小中学校などにも導入されているようです。

Kids News(https://www.heraldsun.com.au/kids-news

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 様々なメディアに掲載された記事やニュースを子ども向けに編集して配信しています。記事は読み取りのレベルによって3段階に色分けされており、個人のレベルに応じた記事を読むことができます。また、記事の内容を読み上げたオーディオファイルが用意されていたり、映像が用意されていたりと、読むことが苦手な子どもに対するフォローがされている点も特徴です。さらには、記事の内容に対する簡単なクイズや学級での活動の例まで示されており、単に読むだけでなくニュースやインターネットを学校教育の中に効果的に取り込むための工夫がされています。
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 もちろん英語圏(特にオーストラリア)の子どもたちが主な対象となっているわけですが、日本でも中学校や高校向け英語教材としても使えるかもしれません。

Read&Write (Texthelp)

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 今回の一押しがこれです。簡単に言ってしまうと読み書きの支援のためのアプリケーションなのですが、とにかくいろいろなことができます。例えばテキストの音声読み上げや読み上げ箇所のハイライトなどが特別なビューアやコンテンツの作り込みなしにできるほか、画像化されたテキストを認識して読み上げることまで可能です。

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 辞書検索では単語の意味だけでなく単語のイメージを表したイラストが表示されるようになっていて、文章の読み取りが苦手な人でもおよその意味が分かるようになっています。また、マーキングした単語とその意味を集めた単語帳をボタン1つで作成したり、長い文章を要約したり、音声メモをつけたりと実に様々な機能があります。

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 英語だけでなく様々な言語に対応しており、言語間の自動翻訳もできるので、外国語の学習にも大いに力を発揮しそうです。日本ではまだまだアクセシビリティに配慮されたWebページや電子書籍は多くないですが、このアプリを使えばかなりの部分にアクセスできるようになるのではないでしょうか。ただ、誠に残念ながら日本語には対応していません。是非とも日本語対応してもらいたいところです。

◆ ◆ ◆

 いくつか取り上げて紹介しましたが、冒頭でも述べた通り、全体的な雰囲気はEDIXと大差なく、国内の展示会等で見知った会社も多かったです。ただ、国内だとデジタルドリルやデジタル教科書など、コンテンツ系の展示が数多く見られるのに対し、EduTECHではそういったものはあまり見られませんでした。とは言え、授業で使っていないというわけではありません。オーストラリアでは統一カリキュラムに沿って各学習内容で使えるデジタルリソースを検索することができる仕組みが既にあり(http://www.scootle.edu.au/ec/p/home)、先生方が独自に教材を探すことができるため、こういった展示会にわざわざ出典する必要がないのかもしれません。
 一方、生徒情報システム(SIS)や学習管理システム(LMS)の展示がとても多く、それらの相互運用が1つのキーワードとして様々なところで語られていました。生徒情報や学習履歴に関わるデータの蓄積や活用は日本と比べて格段に進んでいる印象です。

 また、日本と異なる点の1つとして、会場には制服をきた学生の姿も散見されました。実はEduTECHでは生徒や保護者向けの体験イベントやセッションなども開催されています。中には学校でのSTEM教育の取り組みを生徒自身が紹介するセッションなどもありました。
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 日本で開催される展示会の多くは企業や教師、教育関係者向けで生徒や保護者が直接最新の教材や教育動向に触れる機会はあまりありません。このように、教える側だけでなく、学習する側も自ら体験して選択できる機会があるのはとても良いことだと思いますし、是非日本の教育系イベントにも取り入れてもらいたいと思いました。

 第8回に続きます。
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(東京書籍:清遠)