教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするために、現場目線での情報発信をしていきたいと思います。

戸田市立戸田東中学校 公開研究発表会 赤木かん子先生 特別講演会レポート(2018年11月2日)

 2018年11月2日に、戸田市立戸田東中学校にて行われた公開研究発表会に参加しました。この公開研究発表会は、平成28・29・30年度 戸田市教育委員会研究委嘱事業で、研究主題は「豊かな人間性と社会性をもった生徒の育成」でした。
 研究授業と全体会が終了した後、体育館で児童文学評論家の赤木かん子先生による講演会が行われました。
f:id:ict_in_education:20181211065726j:plain

 赤木先生の講演会のタイトルは、「豊かな人間性と社会性をもった生徒を育成するために」でした。子どもたちを取り巻くメディアの変化とともに、子どもたちにどんな影響があるのかということについての講演でした。

 以下、講演を聴きながらとった為田のメモを公開します。

 最初に、子どもたちがどのように変わっているのか、ということについてから講演はスタートしました。

  • 今の21歳と22歳の間には、⻲裂がある。
    • 22歳より上は、『ハリーポッター』も『ダレンシャン』も読んでいる。『ハリーポッター』は映画化されて有名だからみんな知っている。でも、図書館に『ハリーポッター』を借りに来なくなった。
    • 1995年生まれに⻲裂がある。Windows95、コンピュータが日常に入ってくる以前/以後の子。
  • 2008年にスマホが登場した。スマホはPC以上に世界を変えた。子どもの世界でも、何かが変わると思っていた。
    • 幼稚園と保育園で子どもたちの文化を追求するのは難しいので、世界が変わったというのを最初にクリアに感じられるのは、小学校1年生の学校図書館
    • 活発に動いていた子どもたちが、ぴたっと動かなくなる。『レインボーマジック』が止まる。『マジックツリーハウス』が徐々に動かなくなる。女子の方が敏感。男子の文化は2年から3年かけて変わっていく。『マジックツリーハウス』が動かなくなるのに3年くらいかかった。
    • 2008年生まれの子どもたちが、いまの5年生。だから、いまの5年生と6年生の間に深い⻲裂がある。気がつくと、廊下や教室で取っ組み合いをしているのは6年生だけ。5年生から下はそういうのをしない。
  • 今年の1年生は文化の最先端を突っ走っている。
    • 1年生が6年生に「どいて」と命令する。6年生がどく。「今年の1年生は賢い」と言われる。「この本はどこにありますか?」と図書館に来て司書の先生に訊いてくる。分類を訊かれたのは初めて、と司書の先生が驚いていた。
    • 今や、ティラノサウルス、カブト虫、はたらくくるま、は、1年生には見向きもされない。恐⻯のピークは4歳。アンパンマンのピークは2歳。どんどんピークの年齢が下がってきている。
    • 今年の1年生は、「強くて大きいものには値打ちがない」という価値観を持って小学校へやってきた。「地位もお金も名誉もいらない、人の役に立つ仕事につきたい」と考えている。
    • 日本は8年かけて、いい意味での貴族のお坊ちゃん、お嬢ちゃんを育てたということ。金に転ばない子が育った、人の役に立ちたいと生真面目に思っている。
  • いまの1歳半くらいから下は、もうひとつ別の文化を持っていると思う。2017年が新しい文化の1年目。サザエさんちびまる子ちゃんが止まった。日本から茶の間が消滅した。フジテレビが看板番組を潰した。SMAPが解散した。
    • 1歳10ヶ月の子より、いま5ヶ月の子の方がすごい。生まれてきた時に乳児じゃなくて、幼児な感じ。生まれたての子どもの写真を見ると、カメラ目線(生後15分くらいでも)。最初から、周りを見て、何かをしようとする。

 ここで赤木先生が語っている子どもが変わっているタイミングの話は、本当におもしろいと思いました。会場には中学校の先生方だけでなく、小学校の校長先生方もいらっしゃいましたので、どんなふうな現場感覚なのか、伺ってみたいと思いました。

 そして、2017年以後、どう変わってくるのかというところを赤木先生の話は続きます。

  • 2017年以後は、IT世代。ロボットが日常に入ってくる。日常が変わると、子どもたちが変わる。
    • スマホはわからないことを調べる方法。機械には果てがある。果てがわからないうちは楽しい。果てがわかるところで終わり。いまの1年生は、スマホの果てがわかっているように思う。
    • いまの小学校1年生がいやがるのが、「子どもっぽい」ということ。図書室にあった子どもの本が、軒並み落ちた。
    • 3歳でも、ありさえすればスミソニアンの地球博物大図鑑でも見る。4歳から5歳の時には図鑑に触れているので、図鑑を手渡すと、「これじゃない」と言われる。
    • いまの1年生は、ブラックホールダークマターダークエネルギーが好き。自分たちが宇宙に行ける気満々。当然行けると思っている。
  • 単に機械を使える人ではなく、機械の原理を知っていて、使える人にならなければならない。生き延びるためには、最先端の機器を使いこなすだけでなく、原理を知っていることが必要。

 このあたりの話は、プログラミング教育の話などと重ね合わせて聴いていました。どうやって動くのかを知っていること=原理を知っていることが重要だという話でした。

 話は、学校の図書室の話に移ります。

  • 子どもたちにいちばんの手当ては、学校図書館をきっちり整備して子どもたちに提供すること。
    • 中学校がいちばん図書室が活用されていない。古い本を捨てていない、新しい本を買っていない。おもしろくないので、ほとんど生徒たちが来ない。
  • 赤木先生が関わった図書室の古典の棚では、芥川や太宰の文庫を表紙を見せるように並べている。表紙は文豪ストレイドッグス(略して「文スト」というそうです)。
  • 図書室を改装することで、子どもたちを集めることができる。そのために、知恵とちょっとしたお金が必要。
  • これだけ時代が動くと、本はほぼ総入れ替えになる。日本人は本が好きで、大事にしてきた。本がずっと使えると思っている人が多いが、自然科学や社会科学は、社会が動いてしまえば使えなくなる。
    • 恐⻯の本は羽毛恐⻯が載っていなければだめ。
    • ソビエト連邦と書かれていたら、廃棄しなければ。
    • 温暖化が進んで、りんごは北海道でも育てられるようになった。札幌の周りは、小⻨畑から水田に変わり、いまや稲作の一番は北海道、二番は九州。
    • リーマンショックで工場もかなり動いた。
  • 世界は一瞬も止まっていない。だが、本は刷られた瞬間に世界が止まる。だから逆に証拠として使えるようになる。ネット情報はいくらでも書き換えられる。全冊回収できることはないので、どこかに証拠は残る。

 「本は刷られた瞬間に世界が止まる」という表現は、非常におもしろいとおもいました。ネットの情報について信憑性は語られますが、本についても情報の新しさ/古さという観点からみなければならないというのはその通りだと思いました。

 最後に、子どもたちがこれから生きていく時代についての話になりました。最初に、赤木先生は、「Atlas, The Next Generation (Boston Dynamics)」という動画を見せてくれました。
www.youtube.com

 こういうロボットが出てきたら、どんなふうな仕事が残るのか...。10年後、どんな世界かはまったくわからない。

  • いま赤木先生が育てたいと思っているのは、3日間電気が止まっても生き延びられる人、そのために原理がわかっていること、豊富な雑学を持っている人。
  • スパークするためには、いまは役に立たないかもしれないこと=雑学を知っていなければならない。雑学は、YouTubeと本と大人が話している内容から身につける。
    • 学校司書に、子どもの前でたくさん話してほしいと言っている。それで子どもたちのアンテナが育つ。テレビのニュースが引っかかるようになる。
    • 大人がしゃべってあげることと、新しい本を揃えてあげること。「図書館ってもういらない?」全部をデジタル化することはできるかもしれないが、金がかかる。現状、本がいちばん安上がり。1200円で買ってしまえば、学校全員が読める。デジタルはそこまではいかない。

 以上が、赤木先生が話してくれた、「10年後に世の中に出て、働ける子どもたちになるためにどういうことが必要か」という講演でした。直接ICTに関わる部分というよりは、子どもたちをとりまく情報やテクノロジーなど広い範囲をカバーしていた話だと思います。
 赤木先生は、いろいろな授業を小学校や中学校でご自身でされているということで、もし一緒に授業を作ってみたい、という先生方がいらっしゃいましたら、ぜひ何かできたらと思いますので、ご相談をいただければと思います。



(為田)