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京都教育大学附属桃山小学校 授業レポート No.1(2019年2月6日)

 2019年2月6日に、京都教育大学附属桃山小学校を訪問し、授業を見学させていただきました。今回は、木村明憲 先生が担任されている、5年1組の朝の時間の様子をレポートします。5年1組の教室には、iPadを置くラックが教室に置かれていました。
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 木村先生が教室にいないときでも、児童はiPadを自由に使っています。ロイロノートを使ってスピーチの練習をしている子や、絵を描いている子など、いろいろな使い方をしています。個人の普段使いが浸透していると思いました。
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 児童はiPadを文房具として扱っている様子で、ノートや教科書と同じように筆箱の下にiPadが置かれています。そして、これは児童が文房具として扱っているというだけでなく、先生もiPad(をはじめとするICT機器)を特別なものでなく、ツールのひとつとして扱っているからこそだと思いました。
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 木村先生のクラスでは、朝の時間に一人の児童が3分間のスピーチをします。朝の時間にロイロノートを使ってスピーチの練習をしていた児童が、「おすすめの言葉」というテーマで『こども菜根譚』や『こども武士道』の2冊の本から、おすすめの言葉を紹介していました。言葉を紹介するときに、「今日みたいな雨の日は、どう思いますか?」と教室全体に質問をしました。「実は、雨にはいいイメージがないかもしれないけれど、“雨=作物が育つ”というふうに、見方を変えればいい面も見えてくる、ということを伝えてくれる言葉がある」とスピーチしていました。
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 スピーチをする児童は、スピーチが終わった後は、教室でのディスカッションなどをファシリテーションする役割をします。「3分で、おすすめの言葉を考えて発表してください」と言うと、何人かが発表してくれました。例えば、「レッドクリフという映画のなかで出てきた、“動かざること山のごとし”」や、「本を読んでいて出てきた、“名探偵の仕事は、人の幸せのために謎を解くことだ”」という発表が行われました。

 クラスの中で紹介された言葉を、担当の児童がホワイトボードに書いていきます。こうして、教室内のやりとりが可視化されます。
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 挙がっている手が少なくなってきたところで、スピーチをした児童が、「国語の教科書に書いてあることでもいいですよ」と言いました。この一言で、もう一度教室が活性化されました。「(国語の教科書で出てきた)『想像力のスイッチ』の最後の“メディア側も情報を受け取る側も努力が必要”がいいと思います」という発表が行われました。この発表には、「あー!」とクラスから同意の反応がありました。これが大切だと思います。

 最後に、2分間で「私のプレゼンはどうでしたか?」とスピーチをした児童が言い、スピーチを聴いていたみんなは、プレゼンテーションパワーチェックカードを使って、スピーチを評価していきます。プレゼンテーションパワーチェックカードは、ラミネートされているので、マーカーでチェックします(消せば何度でも使えます)。文字色、間のとり方などについて評価をするとともに、「身振り手振りを入れるといいと思います」などのコメントもありました。
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 最後に、木村先生からコメントをもらいます。木村先生は、「みんなの役に立つスピーチだった。構成もよかった。本の紹介が、自分の勉強にもなったし、みんなの勉強にもなった。難しい言葉をスラスラ言えているのは、努力したから。練習したと思う」と褒めていました。始業前の時間にロイロでスピーチの練習をしていた努力がこうして形になって、先生から褒められるのは、とてもいいなと感じました。
 また、最後の「国語の教科書からでもいいです」とみんなに助け舟を出したことも、木村先生は高く評価していました。木村先生は「先生は言わないように我慢してた」と言っていました。我慢していたからこそ、児童が自分で、次に繋がる言葉を教室に投げかけたことを高く評価していました。こうして、ただのスピーチだけでなく、教室でのやりとりのファシリテーションも、学ぶことができています。

 プレゼンテーションチェックカードは以下のサイトでダウンロードできます。
sites.google.com

 No.2に続きます。
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(為田)