教育ICTリサーチ ブログ

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京都教育大学附属桃山小学校 授業レポート No.1(2020年2月19日)

 2020年2月19日に、京都教育大学附属桃山小学校を訪問し、長野健吉 先生が担当する5年1組の理科の授業を見学させていただきました。
 今回の授業は、ふりこの授業の最初の導入のところで、長野先生は最初にブランコの画像をモニターに映し出し、「ブランコが好きだったんだけど、残念な思い出があって…。高さで勝てない、速さで勝てない、飛んだときの距離で勝てない」と言い、そんなときにどうすればいいでしょう?とパフォーマンス課題を子どもたちに伝えました。
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 長野先生は、手元のiPadでロイロノート・スクールを使って、児童全員にパフォーマンス課題の書かれたカードを配りました。児童は、自分のiPadでパフォーマンス課題を確認します。そこには、「太郎くんがブランコでAくん、Bくん、Cくんと遊んでいるときに、10往復する時間で競う。太郎くんはいつも1番になることができない。ふりこの規則性の学習を活かしてなぜ負けるのかを説明し、太郎くんが1番になる方法を教えてあげましょう」と書かれていました。データとして、Aくん、Bくん、Cくんと太郎くんの身長と体重も書かれています。
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 長野先生は、「太郎さんはどうすればいいか?表など根拠を示して説明できるようにしよう」と言い、そのために必要な、「ふりこの規則性」を学んでいくことを児童に伝えます。最初に「ふりこの長さ」「ふれはば」「おもり」の3つの言葉を学ぶために、ふりこがふれる動画をロイロノートでみんなで一緒に見てみました。その後で、どこが「ふりこの長さ」「ふれはば」「おもり」がそれぞれどこなのか、を考えていきます。
 
 児童は自分のiPadで動画を何度でも見直すことができます。何度も動画を見直しながら、「ふりこの長さ」「ふれはば」「おもり」がどこになるのかを、ロイロノート・スクールのカードの上で別の色のペンで直接書き込んでもらいます。書き込んだ結果は、グループで共有し、検討していきます。
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 グループで話し合った後で、クラス全体で確認していきます。発表する児童が、AirPlayでモニターに自分の画面を映し出して発表します。こうした情報共有を教室全体で簡単に行えるようになるのは、ICTを活用する大きなメリットだと思います。何人かが発表し終わった後、長野先生から「間違えやすいポイント」などを補足説明していきます。
 ここまででわかったことについて、児童はそれぞれノートにまとめていきます。一人1台のiPadを持っていますが、すべての活動がiPadの中で終わるのではなく、ノートに情報をまとめる時間もありました。
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 教室には、グループごとにふりこの実験ができる器具が用意されていました(グループごとに少しずつ使える器具が違っていた)。目の前にある実験器具を使って、ブランコの様子を再現してもらいます。さっきまとめた「おもり」「ふりこの長さ」「ふれはば」がどこにあたるのか、自由に試すことができます。
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 グループごとに自分たちでふりこを動かしてみながら、ロイロノート・スクールでKWLシートに「Know(わかった)」「Want to know(知りたい)」「Learn(学んだこと)」の欄にカードを作っていきます。「カードは、文字だけでなく、動画などでも残しましょう」と長野先生は言います。
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 途中、児童から「先生、動画、見直していい?」という質問が出ました。長野先生は「もちろん。何度でも見直してください」と答えます。一人1台のiPadを使って動画で撮影をして、それをロイロノート・スクールを使って共有しておくことで、一人ひとりが自分自身の教材をどんどん増やしていくことができます。そして、一人ひとりが自分がいま見る必要のある教材にいつでもアクセスできるようになります。
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 自分たちで実験を繰り返していくうちに、どんどん「Want(知りたい)」のカードが増えていきます。「ふれはばを変えるとどうなる?」「重さ、変えてみた?」「長さ、いじってみた?」「どうやったら速くなってる気がする?」「変えても変わらないものもある?」「どうやったら正確に測れるのか、その方法もまだ学んでないね」と長野先生はどんどん問いを投げかけていきます。
 ロイロノートの方で色分けをしていて、「Want(知りたい)」のカードはピンクで作っていました。児童のロイロノート・スクールの画面に、どんどんピンク色の「Want(知りたい)」のカードが増えていきます。
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 「おもさ」「ふりこの長さ」「ふれはば」の3つを、何を変えると何がどのように変わるのか、3つ要素があるから、これを知るためには「“条件制御”を考えないといけない。これは調べていきましょう」と長野先生は児童に伝えます。

 長野先生は、「ピンクのカードだけまとめて提出してください」と言うと、ロイロノート・スクールに全員の「Want(知りたい)」のカードがまとめて表示されます。それを見ながら「W(Want=知りたい)をノートにまとめてみましょう」と長野先生は言い、提出された「Want(知りたい)」のカードをまとめて、ホワイトボードに項目をどんどん書き出していきました。
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 ここまでやって、最後に教室を出て校庭のブランコのところで、実際にやってみました。グループのリーダーだけiPadを持っていって、気になることがあれば記録ができるようにします。実際にブランコで今日学んだこととパフォーマンス課題を結びつけることを体験しました。例えば、「足でこぐ」のと「足でこがない」のはどう違うのか、「立ってこぐ」のと「立たないでこぐ」のはどう違うのか、きちんと測れるのか、というような興味関心が、またここで児童のなかに生まれていたと思います。
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 長野先生の授業を見学して、45分間の授業での伝達される情報量や、思考と発信(発言やタイピングなど)の量がとても多いと感じました。これは、デジタルのサポートがあってこそだと思いました。その一方で、デジタル(iPadの活用)とアナログ・リアル(ブランコでの体験)とを組み合わせていくことで、学びがより主体的で深いものになっていると思いました。この両面が重要なのだと思います。

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 今回見せていただいた授業は、ふりこのパフォーマンス課題に取り組む単元の導入(課題把握)だったのですが、2年前の研究発表会でこの単元の最後の授業(課題解決)を見せていただいて、レポートを書いています。こちらも合わせてお読みいただくといいかと思います。
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 No.2に続きます。
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(為田)