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開智望小学校 授業レポート No.1(2019年3月7日)

 2019年3月7日に、開智望(かいちのぞみ)小学校を訪問し、峰岸巧先生が担当されている5年生の授業を見学させていただきました。
 開智望小学校は国際バカロレア「PYP(Primary Years Program)」認定校です。国際バカロレアのカテゴリであるPYPは5年間。この後、MYP(Middle Years Program)が5年、DP(Diploma Program)が2年続きます。MYPとDPは、2020年4月開校予定の開智望中等教育学校(仮称・設置認可申請予定)にて学ぶことになります。

 今回は、理科の授業をレポートします。ホワイトボードには、10日ほど前に自分たちでした実験をもとにして考えた、「“とける”とは何か」という定義が書かれていました。
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 子どもたちの机のうえには、実験の結果を書き込んだワークシートがあります。タイトルは、「もののとけ方を自分でていねいに観察」となっています。自分たちで、さまざまなものを実際にとかしてみる実験をして、とけたかどうかを見て、「“とける”とは何か」という定義を考えていた様子が見られます。
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 たくさんの実験をして、いろいろと仮説をたてて考えて、定義を作っている様子を見ることができます。ここにしっかりと時間をかけているのが印象的でした。班ごとに定義を考えるために、仮説をたてる→話し合って検証する→考察する、というサイクルを班のメンバーでもぐるぐる回していますし、教室全体でも峰岸先生がそのサイクルを回していきます。
 峰岸先生は、どんどん質問をしていきます。そのたびに子どもたちは自分たちの班の定義について考えます。峰岸先生は、「ホワイトボードに書いたものを、いま訂正してもいいよ」と言います。検証・考察して、他の定義に行き着いたら、それを表現してみる、というサイクルになっています。

 他の班の定義を見てみて、また自分の班の定義を検証・考察するということも行われます。ある班が、「自分たちは、とけるということは、“肉眼で入れた物体が見えなくなる”のを、とけるという規則(定義)にした」と言うと、他の班は、「自分たちは、“物体の形が見えなくなり、色や味が変化した”ら、とけるということだという規則(定義)にした」と言っていました。どうなんだろう?とどんどん子どもたちが考えていきます。

 ここで、10日ほど前に実験をしたものがそのまま置いてある理科室へ移動します。開智望小学校では、4年生と5年生は一人1台のiPadを持っています。峰岸先生は、「iPadで写真を撮る人は持っていって」と言います。

 理科室に行ってみると、色とりどりの液体が並んでいました。たくさんのものを「とかす」実験をしたことがわかります。
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 「透明かどうか、色がついているかどうかは関係ない」など、子どもたちが自分でいろいろなことに気づきます。ここでまた、自分たちで決めた「とける、とは何かの定義」が揺さぶられます。

 ipadでの撮影については、実験当日と見た目が変わっているものを写真撮影したり、もう一度かき混ぜてみたらどうなるかをビデオで撮影したり、インカメラにしてニュースレポート風に説明をしている子もいました。
 iPadで記録を簡単に撮ることができるようになったからこそ、少し集中が切れてしまうところもありました。峰岸先生は、「iPadを使って思考が妨げられるなら、やめて。写真を撮るのに夢中になって、考える時間がなくなるのはダメ」と、思考を中心に、そのツールとしてiPadを活用するように伝えていました。
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 この後、「とけることについての疑問を解消するために、どんな実験をしたらいいかを考える」という課題が峰岸先生から出され、班ごとに10分間、実験計画を考えました。
 「どういう実験をすれば、知りたいことがわかるのか」ということを自分たちで計画するのは、先生から提示された実験を行うということでは得られない学びがあるように思います。5年生の教室の後ろのホワイトボードに書かれていた、「疑問→仮説→検証→考察→…」の流れに沿うものだと思いますし、こうした流れで考えていくことを、子どもたちはしっかり姿勢として身につけているように感じました。
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 No.2に続きます。
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(為田)