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墨田区立錦糸中学校 授業レポート No.2(2022年10月14日)

 2022年10月14日に墨田区立錦糸中学校を訪問し、古賀隆一郎 先生が担当する1年1組の社会の授業を参観させていただきました。
 授業の最初にKahoot!を使って、知識定着を確認する活動をしました。生徒たちは一人1台のiPadQRコードを読み込み、Kahoot!に参加します。全部で9問の4択問題が出題されましたが、回答の4つの選択肢のなかに、「管領(かんれい)」と「管領(かんりょう)」と読み方までしっかり読まなければいけない問題も用意されていました。
 Kahoot!では、1問ずつ正解不正解、回答に要した時間によってポイントが与えられます。生徒たちが楽しそうに参加していて、モチベーションを上げながら既習知識の定着を確認することができていたと思います。

 すべての問題が終わった後で、回答の分布をモニターに表示させながら、古賀先生がふりかえりをしていきます。「管領の読み方は、”かんれい”ですね。この役割、鎌倉幕府では何でしたっけ?」「執権!」というようなやりとりも生徒との間でされていました。こうしてすぐに回答分布などを見ながらふりかえりができるのも、デジタルで小テストを行うことによるメリットです。

 Kahoot!が終わると、この日のテーマである「室町時代の産業の発達と民衆の生活」の授業へ入っていきます。
 古賀先生はモニターに「一遍聖絵」や「蒙古襲来絵詞」などの資料を大きく提示しながら、これまでの授業を復習していました。大型モニターでこうして図版を大きく見せながら授業ができるのは、資料集のページを指定して見てもらうよりもずっといろいろな情報のやりとりができると思います。

 今回の授業では、「洛中洛外図屏風」を教材として使って、中世の人々の様子をとらえよう、というものでした。

 古賀先生は、ロイロノート・スクールで国立歴史民俗博物館のサイトで公開されている「洛中洛外図屏風」へのリンクがはられたカードを送ります。
 生徒たちは自分のiPadで「洛中洛外図屏風」にアクセスします。iPadの画面は小さいですが自分自身で好きなように見る場所を変えたり、拡大して注目する場所を選べることは、生徒たちにとって興味関心をかきたてられるようで、「すげ、動かせる!」「拡大もできる!」という声があがっていました。
 古賀先生も、「博物館に行っても、こんなに鮮明にアップではなかなか見られない」と言っていましたが、本当にそのとおりだと思います。

 ここで、古賀先生から生徒たちにロイロノート・スクールで、Xチャートが描かれたワークシートが配られました。ピンクのカードと黄色のカードが3枚ずつ貼ってあります。
 ピンクのカードに「見てわかったこと」を、黄色のカードに「気づいた疑問」を、1つのカードに1つのことを書いていっていくように古賀先生は生徒たちに伝えます。
 Xチャートの中央には水色の「視点」のカードが貼ってあります。ピンクのカード(見てわかったこと)と黄色のカード(気づいた疑問)を自分で分類してグループ分けしていきます。そのグループの見出しを「視点」として水色のカードに書いていきます。

 古賀先生は、「洛中洛外図屏風を見ていて、人や建物を見つけたら、“この人、仕事は何をしてるのかな?”とか“この建物は何かな?”というふうに疑問を見つけていってください」と言い、生徒たち一人ひとりが洛中洛外図屏風iPadで探究していく時間が始まりました。
 「これ何?」「ひもじゃない?」とか、「これなんだろう?」「足跡に見えない?」とか、「猿がいる」「どこどこ?」「2枚めの真ん中ちょっと左くらいに…」「あ、いた!」というようなやりとりが教室のあちこちから聞こえます。また、誰かが発見したものを教え合うことも多くありました。「その近くに幽霊いるよ」とか、「延暦寺あった」「本能寺あった!」という声が聞こえていました。

 iPadのスプリットビューの機能を使って、画面を分割して、半分でロイロノート・スクールでカードを書いて、もう半分で洛中洛外図屏風を見ている生徒もたくさんいました。

 授業の最後には、それまで一人で書いてきたロイロノート・スクールのカードを班で共有するために、ロイロノート・スクールの共有ノートを使っていました。班のメンバー全員のシンキングツールが共有ノートに入ったら、班長のリードで意見を共有していきます。

 こうしてたくさんの気づきや疑問が班ごとに集まったところで、次回以降は、「洛中洛外図屏風からわかる中世の暮らしの謎」を一人ずつが設定し、その謎を解いて、Keynoteでプレゼンテーションを作成していくそうです。

 班のなかでみんなで話し合うだけでなく、教科書・資料集・インターネット検索などを使って、謎を解いていくことになると思います。その出発点として、一人ひとりがじっくりと洛中洛外図屏風を見ることができる活動があるのは、とてもいいと思いました。

 No.3に続きます。
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(為田)