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近畿大学附属小学校 授業レポート No.2(2022年10月3日)

 2022年10月3日に近畿大学附属小学校を訪問し、福嵜将樹 先生が担当する5年梅組の理科の授業を参観させていただきました。今回の授業は、「プロジェクトF:ふりこのきまりを証明しよう」と「ミッションF:ふりこのきまりを解明しよう」の2つのコースに分かれていました。
 プロジェクトFは、ふりこの実験で「ふれはばを変える」「ふりこの長さを変える」「おもりの重さを変える」という3つの実験を各自で自由に進めていく、順序選択学習になっています。ふりこのきまりを見つけるのではなく、「ふりこが1往復する時間は、ふりこの長さで変わる」ことを証明することが課題になっています。
 ミッションFは、教科書をベースに実験を行って、実験結果から分かることを丁寧に読み取ることを目指して、福嵜先生と一緒に実験を進めていきます。

 最初にクラス全体で前時までの授業のふりかえりをしました。福嵜先生はロイロノート・スクールで提出してもらった実験結果を見せながら、あるグループの実験結果で、同じ条件で実験をしたのに、結果が1.52秒と15.1秒と大きく違う結果が出ていたことを紹介しました。「これだけ大きな差がある結果が出たら、“あれ?おかしい?”と思ってほしい」と福嵜先生は言います(この測定誤差は、結果の入力ミスによるものでした)。
 こうしたことが起きないように、福嵜先生は「何回も実験する。何回も測る。最低3回は同じ実験をくりかえしてほしい」と子どもたちに伝えていました。実験の結果をクラス全体でふりかえって、うまくいったことを共有するのではなくて、おかしなデータが出たときにどう考えるのかを伝えるのは、問題解決能力に繋がっていくと感じました。

 ここから、プロジェクトはグループで、ミッションはペアに分かれて実験に取り組んでいきます。すべてのテーブルで、ふりこの実験ができるように機材がセッティングされています。

 プロジェクトに取り組んでいる子たちには、福嵜先生が前回の授業の提出物にコメントして、ロイロノート・スクールで返していました。子どもたちはコメントを読んで、自分たちのグループでどう今日の実験に活かして取り組むかを考えていました。

 実験の様子を撮影するときにも、ふりこが1往復する時間を計測するときにも、一人1台のiPadが活用されていました。実験器具を操作する子、実験の様子を撮影する子、計測した時間をNumbersに入力する子、ロイロノート・スクールのカードに表を作って書き込む子、というふうに、グループで役割分担をして、実験に取り組み、実験結果をまとめていきました。実験の様子を撮影したデータや、内容をまとめたものは、AirDropなどでどんどんグループ内で共有もされていました。

 ミッションに取り組んでいる子たちは、実験を2人組のペアで行っていました。実験の結果は、全員で共有しているスプレッドシートに入力していきます。3回実験結果を入力する欄と、平均を入力できる欄があるので、そこに実験データを入力していきます。共有のスプレッドシートなので、他のペアの進捗も見ることができるようになっています。

 授業の終盤に、1時間の活動のふりかえりをレポートとして書いて、ロイロノート・スクールで提出してもらいます。
 福嵜先生が「ロイロ、生徒間通信を許可してあるので、お互い必要なものをやりとりしてね」と言うと、実験の様子を撮影した動画や、実験結果などの文章をグループ内で共有していました。
 動画やデータは簡単に共有できますが、そこでとどまらずに、自分の言葉で考えたことを表現してもらうために、福嵜先生は「レポートについては、実験をしてわかったことと、どうしてそう思ったかの根拠を自分の言葉で書いてほしい」と子どもたちに伝えていました。

 近畿大学附属小学校では、一人1台のiPadを使っていますが、カバーやキーボード、ペンは一人ひとりが自由に選んで使えるようになっているそうです。ペンで書いている子も、キーボードで入力している子もいますが、自分の考えを、自分の言葉で書くことを大事にしていて、そのために合う方法を自分たちで選べるようにしたいという学校の方針が感じられました。

 授業の最後に、前回までの授業で出ていたらしい「ふれはば30度と60度のそれぞれのときの実験動画を並べて再生したい」という子どもからの要望について、福嵜先生が調べて、Keynoteで動画を並べて同時再生したらできるかもしれない、と紹介していました。
 こうして、子どもたちの「並べて再生したら違いがわかりやすそう」という気づきを、テクノロジーでどう解決できるかを、先生が一緒に考えていける関係になっているのがいいな、と思いました。「わからないからやっちゃだめ」という方が簡単ですが、そうではなく、先生が一緒に考えているのがとてもいいと思います。

 No.3に続きます。
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(為田)