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教材で使えるかも?:『ナチスの戦争 1918-1949 民族と人種の戦い』

 リチャード・ベッセル『ナチスの戦争 1918-1949 民族と人種の戦い』を読みました。ナチスの政権奪取の前、第一次世界大戦の戦後処理から話が始まり、第二次世界大戦後まで、ナチスの戦争が丁寧に描かれていきます。

ナチスの戦争1918-1949 - 民族と人種の戦い (中公新書)

ナチスの戦争1918-1949 - 民族と人種の戦い (中公新書)

 そのなかで、とても気になったのは、以下の部分、反ユダヤ主義を掲げたナチスが選挙で政権を獲る過程での、ユダヤ人組織の指導者のコメントです。ちょっと長い引用になります。

あからさまな反ユダヤ主義は、ナチが大衆の支持を得るためにはさほど重要ではなかったように思われる。もちろん、ユダヤ人に対する偏見、そして一般的に人種主義の姿勢は、1920年代から30年代初頭にかけて多くの活動家がナチ・ムーヴメントに参加する強い動機となった。しかしだからといって、1930年から33年にかけてNSDAP*1に投票した数百万の人々の大多数にも同じことが言えるわけではない。ヴァイマル・ドイツの主要なユダヤ人組織だった「ユダヤ教を信仰するドイツ市民の中央協会(Central Association of German Citizens)」ケルン支部の指導者は、1930年9月の選挙でナチが躍進したことにショックを受け、こう述べている。「650万の[ナチへの]投票者が650万の反ユダヤ主義者だと考えるのは明らかに誤りだ」。むしろこのふたつがイコールでないほうが恐ろしいと彼らは認識していた。つまり、「反ユダヤでないのにNSDAPに投票した人々は、ナチへの支持を思いとどまるほどには反ユダヤに嫌悪感を抱いていないということなのだ」。(p.42-43)

 最後の、「650万の[ナチへの]投票者」イコール「650万の反ユダヤ主義者」ではない。「イコールでないほうが恐ろしい」。なぜなら、「反ユダヤでないのにNSDAPに投票した人々は、ナチへの支持を思いとどまるほどには反ユダヤに嫌悪感を抱いていないということなのだ」という部分は、選挙の怖さということを示しているように思います。

 あまりICTとは関係がないように思われるかと思いますが、ネットでさまざまな政治的メッセージを読めるようになり、Twitterやニュースアプリなどで自分で読むニュースを選べるようになってくると、投票という行動は、どんどん難しくなってきていると思います。与えられたニュースだけでなく、あえて反対意見などを自分で取りに行く、ということをある程度しなければいけないように思います。
 「まあ、ダメだと思う部分もあるけれど…」と思って投票をして、その後、ナチスドイツがどのような道を辿ったのか、ということも含めて、きちんと歴史から学ぶべきだと思います。
 こうした部分こそ、歴史の授業や主権者教育やメディアリテラシーなどのなかで、しっかり考えるべきところだと思います。何か授業の中に取り入れることってできないだろうか、と終戦の日に考えています。

(為田)

*1:国家社会主義ドイツ労働者党。一般にナチス、ナチ党などと呼ばれる。