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戸田市立笹目東小学校 研究発表会 レポート No.1(2018年1月16日)

 2018年1月16日に戸田市立笹目東小学校において、研究発表会が行われました。笹目東小学校は、戸田市教育委員会の研究委嘱校(平成27年度~29年度)として、また文部科学省委託事業においても市内拠点校(平成28年度・29年度)として、研究に取り組んできたそうです。研究主題は「知・徳・体のバランスのとれた児童の育成 ~教科等の本質的な学びを踏まえたアクティブ・ラーニングの視点からの学習・指導方法の改善~」というテーマでした。

 6年2組の総合的な学習の時間を見学させていただきました。単元は“将来の自分「わたしの夢発見プロジェクト」”でした。10月から取り組んでいるこの単元では、「働くこととは?」「仕事人にインタビューしてみよう」「キッザニアに行こう!」「10年後のまち~○○タウンで会社を設立しよう!」と学びを進めてきています。今回が19時間目。
 前時に学んだAIやロボット、コンピュータなど最先端のテクノロジーの様子をベースにして、「人間にしかできないことを考える」「これからの未来の自分について考える」ことが学習内容として挙げられていました。

 授業を担当された髙野萌先生は、最初にソサエティ5.0の動画などを使って最先端のテクノロジーの様子を子どもたちに見せていました。そうして将来を想像させたうえで、「人間にしかできないことはあるだろうか?」と発問します。子どもたちの意見は、「人間にしかできないことがある 28人」VS「人間にしかできないことはない 2人」でした。
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 ここから、AIにはさまざまな未来予測ができるということを説明しました。教室には「AIから手紙が届きました」ということで、AIが子どもたちの未来を予測するというストーリーが展開します。例えば、「どの学校へ進学した方がいいですよ」「どちらの会社へ行った方がいいですよ」というような予測が手紙には書かれていました。この手紙に「従う」か「従わない」かを、AIの言うとおりにするかしないか、話し合いの時間がとられます。

 笹目東小学校では、平成27年度からタブレットPCが先行導入されています。児童一人一人がタブレットPCムーブノートを使って、意見を書いたものを教室で共有し、発表してもらいます。
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 「作られたものに従いたくない」「自分で考えられるのに、言うことをきいていたら、自分で考えられなくなる」などの意見が発表されました。結果としては、AIの手紙に従う人は0人、従わない人が28人となりました。
 AIによって未来予測がされて、それに従うか従わないか、またその理由はなぜか、ということを話し合うのは非常におもしろいと思いました。2015年1月3日に、NHKスペシャル「NEXT WORLD 第1回 未来はどこまで予測できるのか」を見たときのことを思い出しました。(実現可能性の高い)未来予測に従うかどうか、ということについて取り上げられていました。
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 教室で出てきた意見のなかに、「自分の人生を決めることは、人間にしかできない」というものがありましたが、これはAIと人間の関係を考えるときに非常におもしろいテーマになりえると思いました。人の人生を予測する、ということの精度が高まれば、実は人間よりも上手に人生を決めることができるかもしれない、というのが髙野先生の出した「AIからの手紙」が示唆するところに繋がるように思います。このあたりをじっくり子どもたちとディスカッションをするというのもおもしろそうだと感じました。

 ふりかえりのときには、ある児童が「AIやロボットが増えると、一緒に仕事できて、将来の夢も変わるかも」ということを言っていましたが、こうした思いから、“将来の自分「わたしの夢発見プロジェクト」”へと繋がっていく、興味深い授業だと感じました。

 No.2に続きます。
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(為田)