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JAPET&CEC会員交流会 ICT CONNECT 21会員交流会 レポート No.2(2018年9月13日)

 2018年9月13日に、筑波大学東京キャンパス文京校舎にて開催された、一般社団法人 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)、一般社団法人 ICT CONNECT 21共催の「平成30年度 第2回 JAPET&CEC会員交流会 ICT CONNECT 21会員交流会」に参加しました。
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 文部科学省 生涯学習政策局 情報教育課長 髙谷浩樹 氏による「情報教育関連 文部科学省 平成31年度概算要求」のプレゼンテーションから、興味深かったところをメモしました。

総合教育政策局の新設

  • 来月(2018年10月)から、文科省は大きな組織改編を行い、生涯学習政策局は、総合教育政策局が新設される。
    • 情報教育課は、初等中等教育局のなかに入る。かつ、外国語教育と一緒になる。名前は、「情報教育・外国語教育課」になる(予定)
    • 一見すると関係ないような組織がくっつくように思えるが、情報教育・外国語教育は、教育の基盤になるもの。教育指導要領でも新しく入ってきて議論がされているもの。どちらもコミュニケーションの基盤になる。親和性が高い。統合効果が高い業務を進めていきたいと考えている。

 あらためて、教育の情報化が目指すものについての説明があり、そこから概算要求の内容に入っていきます。

教育の情報化が目指すもの

  • 教育の情報化の3つの側面→教育の質の向上
    • 情報教育
      • 児童生徒に、情報活用能力を育成する仕事。
    • 教科指導におけるICT活用
    • 校務の情報化
  • 教育の情報化を支える3つの基盤
    • 教員の情報教育・ICT活用指導力向上
    • 学校のICT環境整備
      • PCやWiFiなどを整備する仕事
    • 教育情報セキュリティの確保

 この3つの側面と3つの基盤の全体が、「教育の情報化が目指すもの」で、この6つに分けて事業を進めてきていると髙谷さんは言います。概算要求で出している事業も、この3つの側面+3つの基盤のいずれかに当てはまるものが中心となっています。

平成31年度 教育の情報化関係予算 概算要求等

  • 概算要求は1,501百万円(昨年は667百万円なので、増額)。これから財務省と折衝。
  • 概算要求を見ると、上記の3つの側面、3つの基盤に分かれる
    • 情報教育及び学習活動におけるICT活用の推進
      • 次世代の教育情報化推進事業 128百万円【拡充】
      • 情報モラル教育推進事業 63百万円【拡充】
    • 校務の情報化の推進
      • 統合型校務支援システム導入実証研究事業 311百万円
      • 次世代学校支援モデル構築事業 119百万円
    • 教育の情報化を支える基盤整備の推進
      • 遠隔教育システム導入実証研究事業 52百万円
      • ICT活用教育アドバイザー派遣事業 10百万円
      • デジタル教科書の効果影響等に関する実証研究 40百万円
      • 学校におけるICT環境整備に係る地方財政措置 単年度 1,805億円(2018~2022年度)
  • その他、教育の情報化の推進に関する調査研究、教育用コンテンツ奨励事業などもあり
  • これに入らない、新規要求「Society5.0に向けた人材育成に係る」予算
    • EdTech等の推進
      • 学校における未来型教育テクノロジーの効果的な活用に向けた開発・実証推進事業 700百万円【新規】

 EdTech推進に関する事業への金額が非常に大きいのが目をひきます。これは、2018年6月に出された報告書「Society 5.0に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」に関連されたものです。この報告書は、文部科学省ホームページに掲載されています(リンクはこちら)。

文科省におけるSociety5.0に向けた人材育成

  • Society5.0に向けた人材育成報告書取りまとめ(平成30年6月5日)
    • 「公正に個別最適化された学び」を実現する多様な学習の機会と場の提供
      • EdTechの活用:教育におけるAI、ビッグデータなどのさまざまな新しいテクノロジーを活用したあらゆる取り組みを活用していく
      • ここを文科省としてしっかりやっていきたいと考えている。
    • 基礎的読解力、数学的思考力などの基盤的な学力や情報活用能力をすべての児童生徒が習得
    • 文理分断からの脱却

 この新規に要求された「学校における未来型教育テクノロジーの効果的な活用に向けた開発・実証推進事業」の予算(700百万円)で文部科学省は何をするのか、ということについても説明がありました。

学校における未来型教育テクノロジーの効果的な活用に向けた開発・実証推進事業

  • 事業概要は、原則4年と考えている。他の技術の動向を見て変わる可能性もあり。
  • 校種は初等中等教育の対象校。
  • 主な経費
    • 学校現場と企業の協働による、学校教育の質の向上に向けた未来型教育テクノロジーの効果的な活用の在り方に係る開発・実証等に要する経費(先端技術自体の開発ではなく、学校における実装に必要な経費を想定)
    • 実証に係る先端技術の適用・利用に係る経費
    • 実証に必要な追加的なインフラ活用等に要する経費
  • 教育委員会に手を挙げてもらおうと思っている。そして、企業に以下の4つの「戦略的開発・実証領域」(仮)について、実証してほしいと思う。1領域あたり、4つの教育委員会を考えている。
    • 一人一人の能力や適性、学習状況(スタディ・ログ)に応じた学びの個別最適化
    • 支援が必要な児童生徒の早期発見、支援の個別最適化
    • 教員の指導力の分析による教員の資質能力の向上
    • 児童生徒の学習データ等の蓄積・活用による、教職員・保護者の負担軽減や教育施策の改善・充実
  • 上記の4つ以外については、まだ検討中。具体的にどんなことができるのか、どんなデータが活用できるのか、というのは検討している。
  • この4つをどう実現するのか、海外にどんな技術があるのか、というのも、民間から持ち込まれることもありと思っている。

 髙谷さんは、「企業や経産省は、未来のあるべき姿を思い描くという方法もある。が、文科省は、全国の先生方に導入をしていきたい」とおっしゃっていました。数名、数十名のやる気のある学校だと追いつけているが、まだまだ全国的に見ると、ICT導入のメリットなどについて先生方に伝えていかなければならない、とのことでした。

 既存予算としては、「次世代の教育情報化推進事業」(要求額128百万円。前年度 108百万円)についての説明がありました。

次世代の教育情報化推進事業

  • 新学習指導要領の趣旨の実現に向けた情報教育及びICT活用の推進に関する調査研究
    • カリキュラムの事例、ICTを活用した深い学びの創出、を進めていきたい。
  • 小学校プログラミング教育支援推進事業
  • 新学習指導要領に対応した高等学校情報化担当教員の指導力向上。

 その他、既存事業についての説明がありました。

  • 情報モラル教育推進事業
    • 子どもたちを取り巻く状況が変わってきている。小学生でも、スマホが普及してきている。小学校中学年に間に合うように、事業を大きく拡大していきたい。
  • 統合型校務支援システム導入実証研究事業
    • 統合型校務支援システムの普及はまだまだ。
  • 遠隔教育システム導入
    • 教育の質を上げる可能性あり。効果的に取り上げていきたい。
  • 次世代学校支援モデル構築事業
    • 学習履歴と校務データをつなぎ合わせる。
    • EdTech、AIの一歩手前。データログを使って先生が教える、というふうになる。渋谷区、大阪府、奈良など。
  • ICTを活用した教育推進自治体応援事業
    • ICT活用教育アドバイザー派遣事業
    • 教育の情報化の推進に関する調査研究
  • 学校ICT環境整備に係る新たな地方財政措置
    • 今年度から新たな5カ年計画
    • 2018年度以降の学校におけるICT環境の整備方針のポイント。
    • 学習者用コンピュータは、3クラスに1クラス分程度
    • 学校のICT環境整備の現状を紹介。
    • 都道府県別 学校における主なICT環境の整備状況。整備状況の地域差が顕著。

 最後の、都道府県別 学校における主なICT環境の整備状況については、「学校における教育の情報化の実態等に関する調査(平成30年3月現在)」が出典です。
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 EdTechに大きな新規予算がついたのが特徴かと思います。現状の学校への関わりが大きい文部科学省ならではの、「広げていく」政策が実現されるといいと思いました。

 No.3に続きます。
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(為田)