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シチズンサイエンスプログラム「サンゴの好きを探し出せ!」 イベントレポート No.1(2023年8月19日)

 2023年8月19日に日本科学未来館で開催された、小学生・中学生向け体験型シチズンサイエンスプログラム「サンゴの好きを探し出せ!」のキックオフ・トークイベント「世界の海の未来をつくるのは、君だ!」に参加しました。
 このキックオフ・トークイベントには、アラムコ・アジア・ジャパン株式会社の代表取締役社長 アブドゥラ・ジャスタニアさん、東京大学教授 安田仁奈 先生、中学生海洋アントレプレナー 宮崎陽夏太 さん、小学生海洋研究者 中村輝さん、株式会社リバネスものづくり研究センター長/株式会社NEST EdLAB代表取締役 藤田大悟 さん、株式会社イノカ 代表取締役 高倉葉太さんが登壇し、会場の日本科学未来館 7階 イノベーションホールには、多くの親子連れが来場していました。

趣旨説明

 最初にイノカの高倉さんが趣旨説明のプレゼンテーションを行いました。今回のプログラムを通じて、「海の未来を子どもたちと作っていくこと、考えていくことをしたい」と言い、プログラム参加者に海の未来を守る仲間になってもらって、一人ひとりがアクションを起こそう、となるといいとメッセージを送りました。

corp.innoqua.jp

主催者挨拶

 続いて、主催者挨拶として、アラムコ・アジア・ジャパンのアブドゥラ・ジャスタニアさんがスピーチをしました。アラムコ・アジア・ジャパンは、日本の40%の原油を輸入している企業です。
 アラムコ・アジア・ジャパンは2010年から沖縄県うるま市に、東京ディズニーランドの敷地の4倍の面積を持つ石油基地ターミナルのタンクを日本政府から借りていて、そこから日本と近くの国に石油を供給しているそうです。それ以来、沖縄の海の環境を良くする活動として、サンゴの保全と養殖を行っているそうです。
 企業が海を守るために果たせる役割について考えさせられるスピーチでした。こうした視点は、学校の授業でも伝えられるとおもしろいなと思いました。

japan.aramco.com

トークセッション「世界の海の未来をつくるのは、君だ!」

 リバネスものづくり研究センター長の藤田さんが進行役となって、トークセッション「世界の海の未来をつくるのは、君だ!」が行われました。
 特徴的だったのは、ステージに大人だけでなく、小学生と中学生の2人が登壇していることだと思います。大人も子どももなく、海の可能性と海の課題を語り合い、海の未来をつくっていこうというメッセージが伝わるトークセッションとなりました。

 オニヒトデの研究者である東京大学の安田先生は、研究で訪れる世界の海で、美しいサンゴもダメになっているサンゴも見てきていると言い、サンゴが、動物のような一面、植物のような一面、地形のような一面の、3つの面をもっていることを教えてくれました。また、サンゴがなくなると失われること、サンゴ礁がなくなる原因、死んでしまったサンゴは回復するのか、などの話をしてくれました。

 中学生海洋アントレプレナーの宮崎陽夏太さん、小学生海洋研究者の中村輝さんは、イノカの主催するサンゴ礁ラボに参加したことがきっかけで海洋の研究を始めたそうです。
 2人はサンゴ礁ラボの教室に来ると、「授業が終わっても教室から帰らなくて、“ねえねえ、これなに?”といろんなことを訊いてきた子たちだった」と高倉さんが言っていました。また、高倉さんが「こういうの、やってみたら?」と提案すると、どんどん応えてきたと言っていました。
 こうした、いくらでも質問ができて、気になったことに没頭して何でもやってみることができる時間をとることが、学校ではなかなかできないことだと思います。

 中村さんは、「学校で“海が好き”と言うと“海で泳ぐのが好きなんだ”と思われてしまう。海の生きものが好き、という人は周りにあまりいない」と言います。「仲間がほしい。生きものについての情報を共有したい。議論ができる友達がほしい」と言っていました。
 また、宮崎さんは、「自分のしている研究や活動については、中学校では他の友だちに言わない。サンゴ礁ラボの人が仲間」と言います。「サンゴ礁ラボ、場所の関係で人数が少ないので、今回のこの会場くらい、語り合えるくらい知識をつけた人たちがたくさんいればいい」。
 2人にとっての、サンゴ礁ラボが、自分の好きに突き進んでいける探究の場であり、仲間たちと出会って学び会える場になっていることを感じます。こうした場を作ることは、企業が果たせる大きな役割だと思います。
 中村さんと宮崎さんの話を聴いて安田先生は、「(中村さん、宮崎さんをはじめとする)Z世代の人たちは、すごい。自分たちで活動して、企業を巻き込んでいく人たちが多い。本気でアクションを起こさなければいけない、と考える人が多くて、そういう人たちが増えてきていて、世の中が変わってきている」と言います。
 「突き抜けて探究していくときには、その熱量を受け止めてくれる仲間がいる場が必要で、そうした場を作るのが企業の役割だ」と藤田さん、高倉さんは言っていました。アラムコ・アジア・ジャパンの環境保全の取り組みもそうですが、課題の最先端にいるのは企業だし、行動できるのも企業なので、どんどん企業が仕掛けていくのが重要だと思います。

 また、最後に安田先生が、「本物を見ることが大事。自分の目で見られるチャンスを提供するのが大事で、イノカさんが見せてくれている環境は意味がある」と言っていました。
 イノカが提供している環境移送技術を使えば本物に触れることができるし、海について考える機会を与えてくれるのではないかと思いました。

 この日の会場にも、環境移送技術を使って作った水槽が展示されていて、子どもたちだけでなく保護者も興味深そうに見ていました。

 No.2に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)