北村厚『大人のための世界史入門 教養のグローバル・ヒストリー』を読んだ。著者の北村さんは、もともと高校の先生だったそうです。「おわりに」から、この本が生まれた経緯の部分を抜粋します。
本書を書こうと思ったきっかけは、高校教師をしていた二年前、ふと思いたって自分の知る世界史教科書とは違う教科書を手にとったことだった。
その教科書には、ほんとうにこの内容を高校生に教えても大丈夫なのだろうかと心配になるくらい、最新の歴史学の研究成果がおりこまれ、遊牧民の興亡や海域アジアの「大交易時代」、ヨーロッパ中心主義を相対化するさまざまな知見などが大胆に構成にくわえられていた。
いまの教科書はこんなに進んでいたのかと驚くとともに、そうした進歩を知らずに十年一日のごとく同じようなプリント授業をしていた自分を恥じた。ときあたかも高大連携の歴史教育改革が聞こえはじめたころでもあり、さっそく現行教科書七冊をそろえて研究を開始した。
あたらしい知識がどんどん増えていくとともに、次第にそれぞれの記述が結びつき、ひとつのストーリーになるような感触があった。古代から現代まで連綿とつながるひとつづきのグローバル・ヒストリーを書くことができるかもしれない。そう思うといてもたってもいられず、さっそく夢中で書きはじめた。これ本当に楽しい作業だった。(p.323)
日本史、東洋史、西洋史を垣根を越えて結びつけて考える記述が非常におもしろかったです。「ユーラシア・ネットワーク」、「大交易時代」、「世界の一体化」などの新しいキーワードを知ることができました。専門家がするような説明ではなく、世界史の教科書に出ている記述を再構成して説明されているのもとてもいいと思いました。新しい世界史を読むことができたように思います。
15世紀「琉球とマラッカが結ぶ海洋ネットワーク」の記述でマラッカと琉球の地理的な重要性なども出ていました。Google Earthでマラッカ海峡から琉球の方へ抜けていくところを、ぐるぐる回しながら見て、実際にそこを通るような気持ちをもって読みました。
それぞれの国の歴史に分断しないで、どんなネットワークがあったのかを考えるときに、Google Earth見ながら読み進めるのは非常によかったように思います。
(為田)