教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

「ピジン」と「クレオール」を、学校と学校外で作りたい

 僕は「ピジン」と「クレオール」という言葉に、ずっと魅力を感じています。大学生の頃に、たしか「比較文化論」の講義で、はじめて「ピジン」と「クレオール」という言葉を知りました。それ以来、ずっと惹かれている言葉です。

ピジン」って何?

 「ピジン」は、異なる言語を話す人々の共通語として、互いの言語が混合して生まれた新たな言語です。16世紀以降の欧米諸国の植民地で、入植者と現地の人との間でコミュニケーションする必要があったことから、ヨーロッパ系言語と現地語が混合して生まれました。お互いの共通言語がないので、簡単な単語とジェスチャーを使い、文法も簡素化されています。日本でも横浜ピジン言語などがあったようです。

クレオール」って何?

 ピジンの中には、使う人が増えて地域に根づき、世代を超えて受け継がれていくものもあります。日常生活でピジンが使用されるようになり、その地域の人の母語として使われるようになった言語が「クレオール」です。クレオールは、語彙・文法・発音ともに複雑化していくそうです。

どうしてピジンクレオールに惹かれるのか?

 共通言語がない人たち同士で、簡単な単語とジェスチャーと簡素化した文法を使った「ピジン」が生まれ、どうにかコミュニケーションが取れるようになる。そして、コミュニケーションが何世代も積み重なって日常生活で使われるようになって「クレオール」になり、語彙・文法・発音などが複雑化してきてコミュニケーションが豊かになっていく。
 この「ピジン」が生まれ、「クレオール」に育っていく過程が、バックグラウンドが全然違う人や価値観が全然違う人同士で一緒に何かを少しずつでもやっていく、そんなシーンを思い起こさせるから惹かれるんだと思っています。

 コミュニケーションができない人と関係を作るのは本当に大変です。でも、大変だけど、不可能ではない。これはすごく希望があることだと僕は思いたいです。

学校と学校外とのコミュニケーションの難しさ

 僕は学校を外からサポートする仕事をしています。先生ではなく、学校の外からサポートをする仕事です。
 学校の役に立てるようにとは思ってはいますが、学校現場に行くと「学校」という場のことも、その地域のことも、先生方の仕事のこともスキルのことも、これまで歴史的に先生方が積み重ねてきた実践も知らないことがたくさんあります。教育学を専門的に学んだわけでもなく、教育の法規も知らないことだらけです。「基準と規準」とか、使う言葉もまったく知らないことも多いです。

 そのなかで、先生方がちょっと簡易に説明してくれたり、単純化して説明してくれたり、僕でもわかる状況に置き換えて説明をしてくれることで、少しずつ分かり合えてきていると思えることもたくさんあります。先生方のおかげで、コミュニケーションが少しずつできるようになり、一緒に何かを成し遂げることができるようになってきているように思います。これが、先生方のおかげでピジンができてきたような感じがするのだと思います。
 僕だけでなく、学校に外から関わる人は、共通言語がないことが多いと思います。自分たちの文化のものをそのまま持ち込もうとしない方がいいと思うのです。自分たちの言葉ばかり話すのではなく、最初は単純な語彙と簡素な文法でいいから、通じる「ピジン」を作っていくのでいいじゃないか、と思うのです。
 お互い、共有できるピジンみたいな言葉や考え方をまずは作って、それで時間をかけていって、それを時間を積み重ねて熟成させてクレオールにしておく、みたいな仕事ができないかな、と思うのです。

 学校と企業だけでなく、学校と地域社会の間にもあると思うし、文部科学省教育委員会の間にもあると思うし、その間をどう取りもって、「ピジン」が生まれるような関係を作るお手伝いができないかな、と思っています。
 そしてできた関係を育てて、学校と学校外が一緒になって子どもたちのことを語れる「クレオール」に育っていったらいいな、と思うのです。

(為田)