教育ICTリサーチ ブログ

ICTを教育にどう活用できるか、現場目線でリサーチします。

宝仙学園小学校 授業レポート No.1(2018年6月11日)

 2018年6月11日に、宝仙学園小学校で授業を見学させていただきました。宝仙学園小学校は、ICTを活用した授業を積極的に行っている学校です。今年度に入ってからは、新しくMy Lab.(マイラボ)という教室も完成し、これからもICT活用がどんどん進んでいきそうな学校です。

 6年松組の社会の授業を見学させていただきました。担当されていたのは、中村優希 先生です。中村先生は、教室の前方にあるモニターに、先生のiPadやPCの画面を表示させながら授業を進めていきます。

 今回の授業のテーマは、「公害とは?」でした。iPadのアプリを使って、音の大きさをデシベルで測定し、表示していました。今日のテーマの公害に関連して、中野区上空を通る飛行機による騒音は、70デシベル以上だそうです。中村先生は、子どもたちと一緒に70デシベルとはどれくらいの音の大きさなのか、声を出して測定し、70デシベルを体感しました。こうして実際の数値を簡単に体感できるのは、ICTを活用する利点だと思います。
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 中村先生の授業中に感じたのは、iPadが普通に子どもたちの机の上にあることです。中村先生が「iPadを使います」と言わなくても、子どもたちが自分で使うべきときかどうかを判断しています。机の上にiPadが伏せてある子もいるし、カメラ越しに板書を見ている子もいます。
 一緒に授業を見学していた、吉金佳能 先生(ICT教育研究部主任)に、「授業中にiPadを自由に使わせることに抵抗はないのですか?」と質問すると、「授業がおもしろければ、子どもたちはiPadは見ないですからね」とおっしゃっていました。なかなかこう言い切ることのできる学校は多くありません。子どもたちがiPadを学びの道具として自由に使えることを目指すのであれば、「いつ使うか」も子どもたちの自由にするのは非常に大切なことだと思います。
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 中村先生は、ロイロノート・スクールを使って情報を提示していきます。ロイロノートを使って提示し、そこに先生が言葉で補足した情報を加えて、中村先生は発問をします。そして、発問に対して子どもたちから出た意見を、中村先生は黒板に書いていきます。デジタルとアナログの融合がとてもいいと思います。
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 総務省のホームページ「典型7公害」のコンテンツなどを見ながら、公害について、四大公害病について、学習を進めていきます。

 この後、SDGs(持続可能な開発目標)17項目と四大公害病との関連を学びました。中村先生は、「水俣病は、どの項目に当てはまると思う?」と発問をします。手元にあるプリントを見ながら、子どもたちは考え、最後に黒板に貼られている17の項目のうち、自分が「水俣病が関係する」と思う項目に、名前のマグネットを貼っていきます。「14 海の豊かさを守ろう」を選ぶ子が多いなか、「3 すべての人に健康と福祉を」を選ぶ子も数人います。デジタルだけでなくアナログでも並行して、自分たちで考え、意見を表明する機会があること、多様な考えがあることが見えるのはとても大切だと感じました。
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 その後、実際にSDGsの評価で、項目14と項目3を見てみます。すると、日本はまだまだな現状がわかります。公害病はもう過去の話だと感じている子どもたちにとって、今でもまだ安心できるレベルではないのだ、ということが感じられると思います(インターネットで現状アクセスできる最新のデータは、2017年のものでした)。
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 また、中村先生は水俣病訴訟で被告になっているチッソの「救済は終了」というコメントが出ているニュースも教室で示しました。「水俣病は終わっていないし、この先も終わらない」というニュースの中でのコメントも紹介します。
 こうして最新のデータを見せながら、社会の授業を行うことで、リアルな世界との繋がりを子どもたちに知らせることができると思いました。

 最後に、子どもたちはMetaMoji Classroomを使って、「今なお残る公害って何があるだろうか?」という課題に取り組みます。
 この課題をしている間、中村先生は、「どうしてもわからない人は検索してもいいよ」というふうに声をかけていたのですが、実際に検索をして、検索結果を画面スプリットで表示して、MetaMojiに入力していく子が数人いました。日常でiPadを使うなかで、こうしたスキルも上がっていくのだな、と感じました。
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 また、課題に取り組むときに、音声入力をしている子もいました。静かな教室で、急に「地球温暖化」と子どもの声がしました。ふりかえると、音声入力をしているのでした。急に音声入力が始まるとびっくりしますが、中村先生は「現代人だねー」という返事。子どもたちも何も言いません。ふだんから慣れているのですね。よく見ると、音声入力だけでなく、手書きで文字を入力している子も、手書き認識でテキスト入力している子もいました。入力の方法もどんどん自由になっていくのだと感じました。

 最後に、ログアウトするときに、「今日の残りの授業では、もうiPadは使わないから、集めます」と中村先生は言います。授業によって使うときは使う、使わないときは使わない。このようにメリハリをつけて使うようにデザインさえすれば、よりICT化は広がっていくだろうな、と感じさせられました。

 これだけ堂々とICTを取り入れた授業をされている中村先生は、初任の先生です。「初任でこれだけICTを活用した授業研究に取り組んでいること自体、本当に凄いことであると感心しています」と吉金先生もおっしゃっていました。また、こうしたチャレンジを認める環境を作っている学校が素晴らしいと思います。ますます、宝仙学園小学校のなかで、チャレンジをしていく先生方が増えていくと思います。

 No.2に続きます。
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(為田)