教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

岡山県備前市立香登小学校 授業レポート No.1(2019年3月13日)

 2019年3月13日に岡山県備前市香登(かがと)小学校で津下(つげ)哲也先生が行った、総務省の5G動画を使った授業を、津下先生がFacebookに投稿されたレポートをもとに再構成しました。4年生、8名を対象にした授業です。
 授業の最初に、津下先生は子どもたちに総務省の5G動画を見せました。動画を再生するや否や、繰り広げられる映像の衝撃に「すごい!」「自動運転!」「うそみたい!」「まるでアニメの世界!」と、子どもたちは大盛り上がりでした。
www.youtube.com

 ここで、津下先生は、「この映像の中には、どんな技術が出てきましたか?」と質問をします。子どもたちからは、ドローン、自動運転、自動翻訳などが挙げられました。それらを黒板に書いて、「この技術の中で、『もうすぐ実用化されるもの』をA、『ここ数年で実用化されるもの』をB、『実用化はまだ10年以上先だと思うもの』をCとして、それぞれの技術に、ABCのどれかをつけなさい」と津下先生は発問しました。

f:id:ict_in_education:20190316173956p:plain

f:id:ict_in_education:20190316174110p:plain

 子どもたちの答えを集計して、黒板に書いていきます。自動運転は既習の内容なのでA。買い物などは、まだ先だと考えているようです。
f:id:ict_in_education:20190316173612j:plain

 津下先生は、「この技術の中から1つを選んで、その技術について『こんなことができそうだ』『こんなことができたら楽しいな』と思うことをノートに書きなさい。」と発問します。すると、以下のような答えが出てきました。

  • 自動翻訳
    • ALTの先生と自由に会話ができる
    • 外国に行っても困らない
    • 私はフランスに行きたいけれど、それ以外の言葉でもすぐ訳せるので便利
  • 遠隔医療
    • 急に病気になってもアドバイスをもらうことができる
    • 足が悪いお年寄りでも治療が受けられる
  • プロペラ付きボールカメラ
    • アメリカの絶景やスリランカの山など、行ってみたいけど危なくて行けないところの映像を見ることができる

 こうしていろいろな意見が出てきます。すると、ある子が「先生!英語翻訳をする時に、ボールカメラや眼鏡で見る映像を見せると、コミュニケーションもできるし、その国の文化を紹介したり、教えてもらったりできる」と発言します。これまでは、「翻訳」と「VR」は独立していましたが、「翻訳×VR」というミックスの視点があることに気付きます。
f:id:ict_in_education:20190316174218p:plain

 ここから、次々と子どもの発想がスパークしていきます。

  • 「病院で治療してもらって、ドローンが薬を届けてくれたら便利だね!(病院×ドローン)」
  • 「結婚式やお葬式(病院×3D×AR)の時に、遠く離れていたら会えないこともあるけれど、これがあると集まれるよ!」
  • 「僕が忘れ物したら、こっそりドローンにとってきてもらおうかな!そうしたら、先生に叱られなくて済む!」
  • 「スマートウォッチがあると、不審者がきても警察に通報できるよ。そして、3Dの警察官に登場してもらって、犯人を捕まえてもらおう!」←「犯人は捕まえられないよ、3Dだもん!」
  • 「学校に行かなくても、先生の授業が受けられるね。」←「インフルエンザの時も授業受けられるよ。」←「ええ~!私は休みたい!笑」←「でも実物の先生、いらないね!笑」←「そうなったら、もう学校行かなくていいじゃん!爆笑」←「いやだ~~~!私は、絶対本物の先生がいいぃ!直接教えてもらいたいもん!爆笑」…。

 爆笑に次ぐ爆笑。その中には、教師の想定をはるかに超えた子ども視点の気付きがあり、すごいテンポで、次々と話が続いていきました。

f:id:ict_in_education:20190316174315p:plain

 そこで、ドラえもんやコナンの世界は、もうすぐそこに来ていることを子どもたちと確認し、Societyの話。1.0が獲物(狩猟)、2.0が栽培(農耕)、3.0が工業、4.0がインターネット(情報)と、子どもが分かる言葉で簡単に解説しながら説明。そして5Gを含む世界がSociety 5.0だと告げました。

 まだまだ発表した足りない子どもたちは、授業時間の終わりが近づいても「先生!休み時間はいりません!この授業を続けましょう!」「先生!頭を使いすぎて!楽しくて仕方ないです!」「早く続きをやりましょう!」と言っていました。子どもの気付きは教師の想定を超えていた、と津下先生は言います。

 No.2に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)