教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

森村学園初等部 授業レポート No.1(2021年5月31日)

 2021年5月31日に、森村学園初等部を訪問し、榎本昇 先生が担当する4年生の総合的な学習の時間、Springin'(スプリンギン)を使って「楽器に自動演奏をさせる」という授業を見学させていただきました。
f:id:ict_in_education:20210608114454j:plain

 前回までの授業で、子どもたちはSpringin'で、触れるとド、レ、ミ…と動物の声で音が鳴るボタンを作ってありました。この動物の声で音が鳴るボタンをド、レ、ミ…と鍵盤のように並べて画面の上の方に配置します。画面の下のスペースに演奏したい曲の楽譜通り音がなるボタンをコピーして並べて、自動演奏できるようにしていく授業でした。
f:id:ict_in_education:20210608114546j:plain

 榎本先生は、「こういうふうにしてください」という指示出しをほとんどしません。プログラミングで何を実現したいかを説明したら、どういうふうにしたらできると思うかを子どもたちに問いかけます。
 「自動演奏をするためには、どうやったらいい?」と子どもたちに榎本先生が問いかけると、子どもたちから「白いボールを準備して、それが動いていけば自動演奏になる」「透明なボールにしたら自動演奏に見える」とアイデアが出てきました。
 アイデアが出てきたら、それを実現するためにどうすればいいのかを榎本先生は示し、説明します。並べた音が鳴るボタンの上を順番に移動して演奏するための「音符くんを作ろう」と榎本先生は言い、子どもたちも自分のiPadで自分なりの「音符くん」を描いていきます。指で描く子も、Apple Pencilを使う子もいました。
f:id:ict_in_education:20210608114627j:plain

 音符くんの絵が描けたら、実際に音符くんを動かしてみます。音が出る1つめのボタンに接触すると音は出ましたが、そこで止まってしまって、次のボタンの音が出ません。「あれ?できない。どうやったらいい?」と榎本先生は子どもたちにまた問いかけます。ここでも、子どもたちからは「鍵盤のボタンを透けるようにすればいい!」「いや、音符くんを透けるようにすればいい!」とアイデアが出てきます。
 こうして、「あれ?できない?」という場面を故意に作って、そこから脱却する方法をみんなで考えるのはプログラミングの授業として、「問題を解決したい!」というモチベーションを作り出すことができ、子どもたちも何を考えればいいのかが明確で、デバッグすることをみんなで体験することができていました。
f:id:ict_in_education:20210608114711j:plain

 「自動演奏楽器を作るのはみなさんです。だから、わかりませんではなく、自分で想像して作っていってね」と榎本先生は言います。曲を演奏するための音が出るボタンは、上から下に行くように並べてもいいし、下から上に行くように並べてもかまいません。
 鍵盤のボタンをちょっと空けて配置すれば、休符を表現することもできます。また、1ページだけで曲が演奏できないならば、次のページに行くボタンを作ることもできます。

 ここまで説明をしたら、子どもたちは教室から持ってきた音楽の教科書などから、好きな曲を選んで自動演奏を作っていきます。Springin'で使うパーツとやることはみんな共通ですが、どんなふうに配置するか、できあがる曲はみんな違うようになります。プログラミングの操作があまりに複雑になりすぎてしまうと、教えてもらったブロックを並べるだけで手一杯になってしまうこともありますが、今回の「自動演奏する」というテーマは、課題の難易度と設計の自由度のバランスがちょうどいいなと感じました。
 榎本先生は、「今日のテーマは自動演奏。それができていれば、どんなやり方でもOK。先生のやり方は参考にしてください」と言います。「こうやればできるよ」と正解を示しているわけではありません。だからこそ、子どもたち同士で教え合ったり、一緒に考えたりする場面もたくさん見ることができました。
f:id:ict_in_education:20210608114758j:plain

 音符くんを音が鳴るボタンの上を移動させて音を出す、という榎本先生が示したやり方をしている子が多かったですが、なかには、鍵盤のボタンを画面の下の方に並べて、その上に次々とたくさんの音符くんが落ちてくるように作った子もいました。
f:id:ict_in_education:20210608114825j:plain

 こういう、「他の人とは違うけど、これやってみた!」とどんどんチャレンジできる環境と雰囲気を作り、チャレンジしたクラスメイトに対して「すごーい!」と言い合える場を作ることが、プログラミング教育にとっては大事だと思っています。そうした雰囲気を感じられる授業でした。

Springin'

Springin'

  • SHIKUMI DESIGN, Inc.
  • 教育
  • 無料

 No.2に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)