9月17日の第62回 デジタル教科書教材協議会(DiTT) 勉強会にて聴講した、株式会社コンセントの小橋さんによる、サービスデザイン思考による体育のアプリ開発プロジェクトのメモを公開いたします。
まずお話を伺っていて思ったのは、「現場をよく見て作っている」ということでした。今回のタイトルにもなっている「サービスデザイン思考」ということを考えると、当然どう使うのかをイメージして、それに合うようにデザインをしているのでしょうけれど、学校向けのサービスや教材では「現場をよく見て作っている」と思えないものも少なくないのです。
プロジェクトのスタートが、2012年~2013年のDiTT実証研究プロジェクト「ICTを活用した体育の授業」だったそうです。東京学芸大学附属小金井小学校で実証研究を進めていき、授業の中での気づきがこの体育のアプリのコンセプトに結びついていったそうです。
- 2012-2013 DiTT実証研究プロジェクト「ICTを活用した体育の授業」
- iPadを40台導入した東京学芸大学附属小金井小学校
- プレイしている様子を録画して、動画を見ながら振り返り。
- 動画を見ながら先生が指導する。
- 動きをその場で見せる、映像による動きの可視化で授業が分かりやすくなった。
- ただ撮るだけでは問題もあった。
- 撮影するだけだと、2~3回で飽きてしまう。
- 体育の授業はとにかくスピーディー。短時間で効率的に動画を見返せる工夫が必要。(3分試合→1分で振り返り→また試合…とかもある)
この「ただ撮るだけでは2~3回で飽きてしまう」とか「体育の授業はスピーディー」とか、授業の現場に足を運び、実際に使ってもらって、それをさらにデザインの現場に戻し…ということをやってこそのことだと思います。
コンセントでは、「学びのインタラクション」を変えられるか?と考えています。そして、授業がどう変わっていくのかを考え続けていっていると思いました。
- アプリを媒介にして、「学びのインタラクション」を変えることができるか?
- 2015年11月に東京学芸大学附属小金井小学校で実証研究を予定。
- 教育とICTをめぐる課題に対して、サービスデザインはどう寄与しうるか?
- ICTの導入を「目的」ではなく、「手段」として活用するために、どのようなアプローチで取り組むか?
- ユーザー視点での調査にもとづく提供価値の抽出
- 「既存ツールの単なるデジタル化」ではなく、ICTがあるからこそできる学びのスタイルとは?
- プロトタイピングと仮説検証のサイクルによる「発見的」なサービス開発アプローチ
- 現状の授業スタイルの最適化ではなく、将来を見据えた「仮想的」な学習スタイルをどうやって構築するか?
- 演繹的なロジックの積み上げではなく、アブダクション(仮説的推論)によるアウトプットの飛躍
このあと、2015年11月にまた東京学芸大学附属小金井小学校での実証研究を予定しているそうです。アプリの公開については、2016年春頃を予定されているそうです。たくさんの小学校での活用を経て、どんどん使いやすいアプリに育っていきそうな、そんな気がしました。楽しみです。
(為田)