フューチャーインスティテュートの前田です。美大卒の教育コンサルタントです。この連載では、ICTを使ってこんな授業ができるのではないかというアイデアを紹介していきます。
今回は、何度も試行錯誤をしやすいというデジタルの特性を活かして、PowerPointを使って「学校のポスターを制作する」というテーマの、小学校の授業を紹介します。ICTを活用してポスター制作をする際には、全員がゼロから作るとどうしても操作的に時間がかかってしまうこともあるので、最初の何工程かを作ってある状態の教材ファイル(テンプレートファイル)を作っておくといいでしょう。教材ファイルの中には、修正すべき箇所を最初から用意をしておき、「先生、ここを直したい!」「この色を変えたい!」というふうに、児童の方から言ってもらえるように仕掛けておくことができます。
こうしてテンプレートファイルを作っておくことで、その授業内で学んでほしいポイントに、児童が自ら気づく機会とすることができます。
授業前準備
事前にどんな準備が必要かを見てみましょう。授業の前に、教材となるテンプレートファイルを作成しましょう。例えば、次のようなポイントをテンプレートに入れておくといいでしょう。
- 学校名やキャッチコピーのテキストを仮のものを入力して配置する。
- 何もないところから考えるのが苦手な児童もいるので、仮のものがある方が、書きやすいかもしれません。
- また、学校名の中に誤字を入れたり、読みにくい文字の色にしたりしておくと、タイピングや書式設定の方法を復習することができます。
- 文字のサイズを極端に小さくする。
- 極端に小さい文字サイズで「読めない!」という状況を作ることで、児童に「では、どれくらいの大きさなら読みやすいだろうか?」と発問することができます。
- 文字の色を背景の色味と似た色にする。
- 文字の色が読みにくいときに、どのような色の組み合わせだと見やすいかを考える機会にできます。
- 文字のフォントを明朝体の細いものにする。
- 読みにくいフォントを用意することで、逆に「どういうフォントなら読みやすいだろうか」と考える機会にできます。
- キャッチコピーを長文にする。
- キャッチコピーが長文だと伝わりにくいのだ、ということを実際に見てもらい、「では、もっと伝わりやすくするためには、印象に残るようにするには、どうすればいいのだろう」と考えてもらう機会にしましょう。
テンプレートファイルを作成できたら、完成サンプルも用意しておくといいでしょう。
授業での流れ
授業中は、一人ずつPowerPointを操作して、テンプレートファイルをもとにしてポスターを作成してもらいましょう。
- 写真を使った学校紹介ポスターを作成することを伝えた上で、ポスターに必要な要素は何か質問したり、サンプル画像を見せたりして、これから作成するもののイメージをしてもらいます。
- どんな人にポスターを見てもらいたいか(対象)、どうしてその人にポスターを見てもらいたいのか(目的)、そのためには何をどう伝えたらいいか・どんな写真を撮ったらいいか(方法)を考えてもらいましょう。「新入生に、この学校のことをわかってもらう」というように、目的をこちらで用意しておいてもいいでしょう。
- グループに分かれて、デジカメで写真撮影をしてもらいましょう。
- PowerPointを起動して、テンプレートファイルを開き、気づいたことを発表してもらいましょう。
- 〇×小学校(学校名)と文章(キャッチコピー)がある
- 文字が読みづらい(小さい、背景と色が似ている、字が細い)
- キャッチコピーが長すぎて読まないとわからない
- 撮影した写真データをパソコン上に取り込んで、画面内に挿入しましょう。
- 写真をトリミングして不要な部分をカットし、大きさと位置を調整します。写真を挿入したことで、学校名とキャッチコピーが見えなくなってしまうときは、写真を最背面へ移動させましょう。
- 学校名を、実際の学校の名前に修正しましょう。また、見づらいのでフォントサイズを大きくし、色を変え、字体が太いフォントにし、位置を調整します。
- キャッチコピーを考えて、オリジナルのものに修正しましょう。元から入っていたキャッチコピーは長すぎなので、パッと見で印象に残るように短いものにするように伝えてください。 キャッチコピーも見づらいので、フォントサイズ・色・フォントを変更し、位置を調整させましょう。
写真撮影の前に、前回紹介した写真の表現について紹介したり、キャッチコピーの書き換えの前に、前々回紹介したキャッチコピーの種類などを紹介したりして、子どもたちの創造性の幅を持たせるようにしてもよいかと思います。
今、学校教育においても、問題発見・解決力などを養うことが求められていますが、図工の授業においても、上記のようにデジタルならではの修正・試行錯誤のしやすさを利用して、クリエイティブ面での問題発見・解決力を養いつつ、見る人の視点を意識した作品づくりをさせることができます。
(前田)