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京都教育大学附属桃山小学校 授業訪問レポート No.2(2016年2月22日)

実況中継:算数

 1時間目は算数の時間です。今日の学習は、見取図のかき方を考えるところです。木村先生からの最初の質問は、「見取図とはどのようなものですか?」というものです。児童は教科書の説明を読まずに、モニターに映し出された見取図を見て、意見を言っていきます。「見て、形をかくものだと思う」「奥があって、見やすい図だと思う」…いくつかの意見が出た時点で、教科書を拡大して映し、定義文を紹介します。先に自分たちで考え、その後で教科書を読むことにより、児童が考えた説明よりも、教科書の定義文の表現がわかりやすいことが実感として腑に落ちると思いました。
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 さらに、見取図のかき方の説明の中で出てくる、「となりあった面」についても、それはどんなものなのかを児童に質問します。児童からは、「くっついている面」「垂直になっている面」「辺でつながっている面」などのようにたくさんの意見が出ます。ここでも、木村先生は、「そうしていろいろな言葉で言い換えられることが大切だよ」と児童の発話を促していました。
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 そして最後に、「見取図は、どんなときに使いますか?」と質問します。ここでの児童からの意見がおもしろかったです。

  • ダンボールやサイコロを作るとき
  • 家を建てるとき
  • 作ったり、立てたりするとき
  • 設計図、やる前と計画を立てるとき
  • 絵をかくとき

 ここで、木村先生は、「そう!絵をかくとき!絵に立体感がないのは、見取図のかき方を知らなかったからかもしれないね」と答えます。
 こうして、算数と他教科が繋がっていくのって、とてもいいことだと思いました。算数は算数のためだけにやっているのではなく、他のところにも転移できる知識がたくさんあるのだ、ということを実感としてわかるといいと思います。

 ここまで説明して、児童は教科書に見取図を自分たちでかいていきます。
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 見取図、ひとりでかくと意外と難しいです。長さが違っていたり、平行になっていなかったり、そうしたポイントを間違える児童が多いので、木村先生が「ちょっと違うよ」と指摘すると、クラスメイトと話し合って考えていきます。
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 見取図がかけたら、実物投影機のところにもってきてもらって、それをモニターに映し出し、どういうところに気をつけたか、気づいたポイントについて発表してもらいます。
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 児童が言ったポイントを、木村先生はホワイトボードに書いていきます。
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 何人もで、少しずつポイントが出揃っていき、みんなで協力して授業が作られていきます。使っているのは実物投影機とモニターだけですが、板書と組み合わせて使うことで、児童の学習の過程を教室全体でシェアをして、さらにそこで児童が発表する機会を多くとるように授業がデザインされているのが、木村先生の授業の特長だと僕は思います。

 教科によって得意不得意もあるのが、何度か訪問させていただくうちにわかってきました。全員がすべての授業で手を挙げられるわけではなく、決まった教科でしか挙手しない児童もいます。それでも、見学させていただいている多くの教室よりは、ずっと多くの児童が手を挙げていると思います。木村先生は,手を挙げることが授業に主体的に関わることにつながり,学習への理解にもつながっていくと話しています。朝の時間のスピーチや、算数以外の教科も含めて、意見を発表し交流させていく雰囲気を、木村先生がクラスに作り出し、自分の意見を発表することを安心だと感じられるように働きかけてきたからだと感じます。「あ、ここでは間違ったことを言っても平気」というemotionally safeな環境が教室にあることが、木村先生のクラスでの最も注目される点だと思っています。
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 No.3に続きます。
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(為田)