2017年2月3日に、京都教育大学附属桃山地区学校園の教育研究発表会に参加しました。テーマは、「幼小中連携 幼小中で育む『確かな学力』と『豊かな社会力』 ―12年間の学びをつなぐ連携プログラムの実践と開発(第2次)―」でした。
幼稚園、小学校、中学校から研究主任の先生方が参加されてのミニシンポジウム「幼小中それぞれの立場から」を聴きました。それぞれの立場からの交流授業のいいところについてのまとめを挙げてくださいました。
- 幼稚園
- 自分たちの生活の幅を広げるきっかけになる。
- 幼稚園でヤモリの卵がかえったときに、以前に行った小学校の教室でイモリを買っていたのを思い出し、教えてもらいに行ったことがある。
- 小学生が身近な存在になっている。
- 小学校の先生にも親しみがもてる。
- 交流学習が、小学校への接続としてよかった。
- 小学校
- 新聞学習を10年やっている。
- 小学生として交流学習→中学生として交流学習、というふうに育っている生徒がいる。
- 教師も同じメンバーで研究ができている。
- 中学校
- 中学校に進学して、また交流授業に参加する生徒が出てきた
- 先生方の連携
- 次期指導要領と交流学習の関連。
小学校時代から交流授業をやってきた子どもたちが中学校に進学してきて、今度は違った立場で交流授業に参加しています、ということをおっしゃっていました。本当に、こうした形式が授業連携のいいところだと思います。
先生方の連携も10年間という長い時間をかけて培ってきたものなので、細かい打ち合わせなしでも、教材研究・児童生徒についての話ができるような環境になっているということも、成果として発表されていました。
中学校では、中1ギャップの予防についてのスライドなども準備されているそうで、こうしたことが公立の中学校区でも実施できればいいと思いました。
また、課題についてもそれぞれの校種の視点から挙げられていました。
- 幼稚園
- 幼稚園と学校とで、同じ指標で振り返りができなかった?
- 事前だけでなく、事後の振り返りもきちんとすべき。
- 年齢ごとに違う指標
- 3歳児が虫に心を奪われる=好奇心
- 4歳児「どうしたら砂団子が丸くなる?」→めあてをもつ
- 5歳児、ビー玉転がす道を作る“クーゲルバーン”→友達と一緒に考えを出し合って作る
- 小学校
- 自分の教科を、他学年/他教科にどう広げていくか。
- 他教科との連携をどのように行うか。
- 中学校
- もう少し広い視野で。
- 学校数は小学校20000校、中学校が10000校。一般の小中学校の連携はまだまだ。
交流学習を成功に導くために、京都教育大学附属桃山地区学校園で、16年間かけて作ってきたノウハウも紹介されました。
ポイントは、「いきなり交流学習をするのではない」ということです。ステップとしては、以下の3段階で行っているそうです。
- 授業を見合う
- 乗り入れ授業
- 授業日時の調整、などなど。
連携は、負担感は大きいが、成果は感じているそうです。
徳永先生は、「幼稚園、小学区、中学校のもともとのカリキュラムがあって、そこから“これくらいならできるだろう?”という連携の仕方をしてきた」とおっしゃっていました。交流学習は、日常の授業、カリキュラムの延長となるものであり、交流学習をするために何かが失われることもある、「コストペイ(Cost Pay)」についても考えるべきだとおっしゃっていました。
そのうえで、交流学習について考えるべき3点として、以下のことを挙げてくださいました。
- 異学年教育
- 自己肯定感なら、小1+小6でもいい。なぜ中学校とやるのか?
- 教科学習でやるか?/教科外でやるか?
- 教科の中での連携とは、どういう意味か?
- 学年が下の子には学びがある。学年が上の子には、何のメリットがあるか?
- →学習の仕方
- →学び直し
こういった部分を、しっかりと見据えて、交流学習を設計していく必要があるのだと思いました。そのために、先生方は、連携教育・交流学習によってどんな力を得ることができるのか、どんな力を身につけることができるのか、どんなことが学べるのか、明確にイメージしておかなくてはならないのだと思います。これこそが、カリキュラム・マネジメントだと、まとめの中で説明されましたが、そのとおりだと思います。その中で、子どもが想定を超えていくこともある。最初は偶発的なこともあるが、カリキュラムの中に組み直す、というふうに連携が進んできているそうです。
こうしたプロセスは、京都教育大学附属桃山小学校で子どもたちがしているところをよく見ます。桃山小学校では、子どもたちの制作は、だいたい1回では終わらないように思います。制作し、みんなに見せて、修正する。1回自分で考えて、クラスメイトに発表して、交流して、新たな考えを取り入れて、また考える。
子どもたちがしている学びのプロセスと同じように、先生方がカリキュラム・マネジメントを1回で終わるのでなく、何度も繰り返して高みにもっていっている、そうした学校文化が、京都教育大学附属 桃山地区学校園の連携教育にはあるのだな、と感じました。
(為田)