2017年2月3日に、京都教育大学附属桃山地区学校園の教育研究発表会に参加しました。テーマは、「幼小中連携 幼小中で育む『確かな学力』と『豊かな社会力』 ―12年間の学びをつなぐ連携プログラムの実践と開発(第2次)―」でした。
プログラムの最初を飾る全体会Ⅰでは、京都教育大学附属小学校の研究主任 池田恭浩先生が講演をされました。今回の幼稚園・小学校・中学校の連携教育は、22年の歴史を持つプログラムだそうです。
池田先生は、講演の中で、今期の研究の方向性について、前回の研究の課題の検討と改善とも合わせて紹介されました。
- 段差の再考
- 教師の連携重要性の再確認
- 交流学習の意義の明確化
1つめの「段差の再考」については、ここで言われる「段差とは単なる違いではなく、現状の制度や環境より高度なことが求められる制度や環境の違い」と紹介されていました。例えば、幼稚園では、「遊び中心で一人ひとりの活動を尊重」しています。小学校では、「教科学習中心で集団行動が前提」「学級担任制でテストが単元終了後」という制度や環境になっています。中学校では「教科担任制で定期考査(中間・期末)」があり、「部活動の本格的な導入」があるという制度・環境的な特性があります。
「小1プロブレム」や「中1ギャップ」などというワードもよく聞かれるようになり、それに対して「段差を有効活用することもできるのではないだろうか、という視点が紹介されました。また、小1・小2・中1で桃山小学校・桃山中学校独自の調査もされているそうで、どのように段差を評価しているのか、非常に興味深いと思いました。
2つめの「教師の連携重要性の再確認」については、先日も兵庫県の中学校の校長先生も、以下のようにおっしゃっていました。「効果はあると思いますよ。中学校の先生は、小学校でどこまで学んできているかを知った方が、中学校の授業のスタート地点を決めるのにいいと思います。また、逆に小学校の先生も中学校に上がるにあたって、どれくらいのことまでできるようになっておけばスムースに中学校の学習に入ることができるのかを知ったほうがいい。でも、忙しいからなかなか難しい。」とおっしゃっていました。
また、以前、奈良市で行われた小中一貫校サミットでも、同じように小中連携では先生同士の連携が大事だということを宣言していました。京都教育大学附属の桃山地区学校園での実践から、教師の連携をすることで、どういうことが可能になるのか、連携をするときのコツや使うと便利なツールなどを紹介できるといいのではないかな、と思いました。ここで言う“ツール”は、もちろんICTに限定されるものではなく、紙などのアナログツールも含めてのものですが、同じ職員室を使っているわけでもなく、物理的に情報共有などをすることが大変なのであれば、デジタルツールで情報を共有するということも、選択肢のひとつとして持っておくといいと思います。実際に、企業などでは多拠点での情報共有をこうした形でやっているので、セキュリティ面などでの問題はあるにせよ、部分的に試験してみるのもいいかと思います。
3つめの「交流学習の意義の明確化」のところでは、「交流学習の原理原則」が示されました。そこで紹介されたのは、以下の3つのポイントでした。
- 幼児・児童・生徒が同じ時間に同じ場所で共に学ぶ
- 連携する双方の子どもに意義(互恵的な学び)がある活動をする
- 日頃行っている教育活動を活性化させる
多くの交流授業が行われていますが、この3つのポイントのうち、1つめは「同じ時間」「同じ場所」というのは簡単に実現できますが、「共に学ぶ」ということについては、しっかり設計されていないケースも多いのではないかとこの3つのポイントを見て思いました。2の互恵的な学びがある活動をするということにもつながってきますし、学びがあるということは、3つめの「日頃行っている教育活動を活性化させる」ということにもつながります。交流学習は、授業だけでなく、生活指導や行事などにも接続されるものだと思います。
特に、交流授業をするときには、年長者は与えるばかりになってしまうことが多いのではないかな、と思うことが多いのですが、「自己肯定感や自己有用感の向上」というメリットがあると書かれていました。こうしたことを感じられるように、授業を設計することが重要ということだと思います。
最後に、幼小中連携プログラムの実践と開発を通じての成果と課題が紹介されました。
成果
- 段差が多くの子ども達にとって有意義なものであることが明らかになった
- 本校園全体としての交流学習のせいかと課題を示すことができた
- 本校園の連携教育に汎用性があることを明らかにすることができた
課題
- アンケート調査の結果をさらに詳しく分析し、段差が障害になっている子どもへの効果的な対応を考える
- 教師の連携の具体的な方法について、さらに詳しく示していく
- 交流学習を中核として、新たな連携の携帯を提案していく
こうして最初に全体像や成果・課題を紹介してもらうことで、公開保育・授業の中で行われている交流授業を見るときの、評価の軸ができたように思いました。この観点を持ちながら、公開保育・授業のレポートをしていきたいと思います。
No.3に続きます。
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(為田)