2018年7月17日に、戸田市立戸田第一小学校にて、4年5組の道徳の授業(担当:榮 亜耶 先生)を見学させていただきました。この道徳の授業は、ポプラ社の出版した『答えのない道徳 どう解く?』という書籍を使った、「うそ どう解く?」という授業でした。
この書籍『答えのない道徳 どう解く?』のなかには、議論が分かれそうな内容がたくさんあります。これを教室という場で先生がファシリテーションをして授業をすれば、考える道徳の授業、議論が起こる道徳の授業ができるのではないかと思い、21世紀型スキル育成アドバイザーとして関わらせていただいている戸田市教育委員会にご紹介したところ、「ぜひ、戸田第一小学校でやりましょう」と実現した授業です。
今回は、書籍のなかの、「嘘、どう解く?」を授業の題材として選びました。授業中に嘘をテーマに考え、意見をあげてもらうという授業でしたが、その過程で、「自分の意見にいくつかの根拠をもって考える力をつける」という国語科との関連も踏まえて、授業が設計されていました。
最初に榮先生は、「嘘はついていいの?」と児童に質問しました。その後で、書籍の中にも書かれている「友達から好きじゃないプレゼントをもらった。“うれしい”と嘘をついたら、友達は喜んでいた」というエピソードを紹介します。このエピソードをもとにして、意見をみんなで挙げていきます。ワークシートを配布して、「国語でやったように、理由を3つ書いてみましょう」と榮先生は言います。
児童がワークシートに書いた、「うそをついてもいい」「うそをついてはいけない」、それぞれの意見を、榮先生は黒板に書いていきます。
予想と違ったのは、「嘘をついてはいけない」という子が案外、少なかったことです。これは、エピソードで場面が設定されていて、具体的に考えることができていたためかな、と思いました。非常にたくさんの子が手を挙げて、自分の意見を言うことができていました。もちろん、どちらが正解、というものではありません。だからこそ、さまざまな意見が出てきていたように思います。
授業後に子どもたちの感想を聴いてみると、「たくさん考えて疲れた…」という子がいましたが、でも「考えるのが楽しかった」という声もありました。
榮先生に授業後に話を伺うと、「普段の授業で、正解があるものであれば、わかりきっているから手を挙げないというような子も、積極的に手を挙げていたように思います。そうした面では、正解がないのがよかったのかもしれません」とおっしゃっていました。
ここで、榮先生から、では、「ついていい嘘と、ついちゃいけない嘘って、どう違うんだろう?」という問いかけがされます。
子どもたちはワークシートに自分なりの答えを書いていきます。こうしてワークシートがあることで、考えをまとめることができます。また、クラスメイトの意見についても、追記している子もいました。多様な意見があるのだということを知り、そうした意見も受け入れられるようになることは、この道徳の授業の中で内容項目として設定されている「相互理解、寛容」につながるところだと思います。
また、考えていくなかで、「例えば、家族が大きい病気になったとして、それを軽い病気だと嘘をついて、そのまま亡くなってしまったら?」などのように具体的な場面を想定した意見が出てきていたのも素晴らしいと思いました。
ひっきりなしに発言が連なっていき、それぞれに子どもたちは自分の言葉で説明をしようとしていました。最後に、榮先生は『どう解く?』の中にも紹介されている、谷川俊太郎さんの「うそと本当を正反対のものとしてとらえるのは単純すぎる」というコメントを紹介しました。
子どもたちにとって、「嘘を言ってはいけません」「正直でいましょう」と伝えるだけではなく、それを日常の中の行動などとどう結びつけるのかを考えるひとつのきっかけになればいいな、と思いました。
No.2に続きます。
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(為田)