教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

福生市立福生第七小学校 校内研究授業 レポート No.1(2019年7月3日)

 2019年7月3日に福生市福生第七小学校にて行われた、校内研究授業を見学させていただきました。福生第七小学校の2019年度の校内研究の主題は、「EdTech(教育×IT)を活用して、21世紀を生き抜く確かな学力を育む」となっています(参考:福生市立福生第七小学校 校内研究会 レポート(2019年4月24日) - 教育ICTリサーチ ブログ)。
 この日の授業は、1年生と2年生の生活科「まちがだいすき たんけんたい」の単元でした。これまでの授業で2年生は、まちについて知り、iPadをもって町に探検に出て、「気になるところ」を撮影してきていました。撮影した「気になるところ」について調べたことをまとめて、この日の授業で1年生にプレゼンテーションを行いました。

 今回の授業での提案は2つ、「提案1 地域の人々、自然、公共施設などに目を向け、関わり合うことを楽しみながら、愛着をもち、気付いたことを表現する」と「提案2 学習者である子どもたちが取捨選択して活用できるツールとして、アナログとデジタルを融合させ、活動の場面ごとによりよい方法を選び、実践する」というものでした。
 特に、教育ICTの実践としては、提案2の方に興味がありました。先生方は、町を体験する前に、2年生に対して、表現方法が多様であることと、それぞれの特性が違うということを以下のような例を出して伝えたそうです。

  • 画像
    • 一瞬のできごとを見るのにわかりやすい。
  • 映像(動画)
    • 音を聞いたり、変化に気づくのにわかりやすい。
  • 絵にかく
    • 目的に合わせて表現しやすい。
  • 物(実物)
    • 大きさや長さなどをたとえるのにわかりやすい。

 1年生に対して、「教えてあげたい」と思ったことをいちばん伝えられるのは、どの表現方法(=メディア)なのか、ということを考えることは、情報活用能力のひとつのステップになると思います。2年生は撮影してきたものと、1年生に伝えたいテーマごとにグループを作り、発表を準備してきました。
 開場である体育館では、2年生はグループごとにブースを作り、1年生が来てくれるのを待ちます。自分たちで探検して町を知り、知ったことを1年生に伝えてあげることが楽しみでしかたない、という様子が見てとれました。この「伝えたい!」という気持ちを引き出すことは、情報活用能力を養うためには必要だと思います。また、紙とiPadが等価値に扱われているのも、おもしろいと思いました。
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 「自然」をテーマにしたグループの様子を見てみました。このグループでは、公園で見つけられた風景を撮影していました。ある児童は、「1年生が気に入ると思ったから」という理由で、ピンクの花を紹介してくれました。アップで撮影したり、遠目に撮影したり、どんなふうに撮影するかによって、見え方が変わるということも学べるように思いました。
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 また、噴水の大きさを説明してくれるときには、「大きい噴水が自分25人分、中くらいの噴水が身長、小さい噴水は足くらい」というふうに説明をしてくれました。これは事前に、「大きさや長さなどをたとえるのにわかりやすい」というのを先生が紹介をしていたからこそだと思いました。
 その後で、噴水の動画を見せてくれました。動画があることで、噴水がどれくらい大きいのかということを実感できていいと思いました。
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 また、iPadで撮影した写真や動画だけでなく、絵を使って紹介をしてくれる児童もいました。とてもいいなと思ったのは、玉川上水の鯉の大きさを実寸の絵を描いて紹介してくれた児童です。実際の大きさは、iPadの写真ではなかなか伝わりません。こうした活動を通じて、メディアを使い分けることの大切さと楽しさを感じられるといいと思います。「これは実際の大きさです」と言いながら絵を広げたときに、1年生はその大きさに驚いていました。この1年生の反応は、この児童がメディアの工夫をしたからこそのものだと思います。
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 写真や動画だけでなく、地図なども組み合わせて説明をしているグループもありました。町を探検するという活動にすると、写真を見せたら、それが通学路でいつも見ているものだとわかる1年生がたくさんいました。自分の学校の周りを写真で見るからこそ、「あ、ここ知ってる!」というような反応もたくさん返ってきていました。こうした伝え方も、言葉だけで伝えるのとは、まったく異なる効果を持っているように思います。
 iPadを使っての写真や動画の撮影、そして撮影したものの提示はとても簡単です。今回、2年生はiPadの撮影やカメラロールの操作について、ほとんど困っていなかったように見えます。簡単に操作ができるからこそ、それを使いこなすことも容易になります。その下地があって、「情報を最適に伝えるためのメディアを選択する」というねらいを実現しやすくなったと思います。
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 また、今回の授業では、「授業のユニバーサルデザイン化(視覚化・焦点化・共有化)」を図るために、1年生は2年生が発表してくれた後に、「わかりましたカード」「はつみみカード」「いってみたいカード」の3種類を使って、反応を伝えることになっていました。1年生からの感想を集めるために、おもしろい試みだと思いました。
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 こうした形で撮影→メディアの選択→プレゼンテーションという機会を何度も持つという活動は、グループで行うだけでなく、個人での活動にしてもいいかもしれないと思いました。例えば、毎朝1人ずつプレゼンテーションを実施したり、というようなことも可能かもしれません。そうすると、プレゼンテーション力や情報活用能力を継続的に高める活動ができるようになります。そうした可能性を感じられる授業だったと思います。

 No.2に続きます。

(為田)