教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

関西大学初等部 Think × Act × Creation 2019 イベントレポート No.2(2019年12月12日)

 2019年12月12日に、関西大学初等部で行われた、Think × Act × Creation 2019に参加しました。この日は5校時と6校時に、全部で9つの公開授業が行われました。見学させていただいた授業をレポートします。

3年生 国語「読書CMをつくろう」

 松本京子 先生が担当されている3年2組の国語の授業「読書CMをつくろう」を見学しました。授業の最初に、読書CMをつくる活動の目的を、松本先生が子どもたちに質問します。「みんなに本を読んでもらう」ことと、「国語の読む力をつける」ことの2つが目的だったことを確認していました。
 ここで目的を明確にすることで、目的を達成するために、読書CMをどのような観点で準備していくのかを決めることができます。クラスみんなで確認すると、内容(あらすじのつながり、登場人物、おすすめのところ)と見せ方(文字の大きさ、文字の色、アニメーション、キーワード、挿絵)などが子どもたちから出てきました。

 4人グループでKeynoteとスクールワークを使って、1冊の本の読書CMを作成しています。できた読書CMを他のグループのメンバーに紹介して、コメントをもらう活動をしました。自分のグループの読書CMをiPadを使って紹介して、聴いてもらった他のグループの人からコメントをもらい、最後にグループに戻ってコメントを共有します。
f:id:ict_in_education:20200116164232j:plain

 紹介された読書CMを見ていて特徴的だと思ったのは、1ページずつめくっていく形ではなく、最初のページがインデックスページになっていて、「あらすじ」「登場人物」「作者」「おもしろいところ」などのコンテンツへのリンクが表示されていることです。リンクをタップすることでそのページを表示することができるので、好きな順番でページを呼び出すことができます。インデックスページを使って読書CMを紹介するプレゼンテーションをするので、好きな順番でプレゼンテーションを行うことができます。
 「まずはあらすじを紹介します」と言ってから、「あらすじ」と書かれているところをタップし、表示された画面を使ってプレゼンテーションをして、またインデックスページに戻る、というふうになっています。

 小学校のプレゼンテーションでは、あまり見ない発表の仕方だったので、イベント終了後に堀先生に訊いてみたら、「それは、アプリケーションデザインの授業でやったからだと思います」とのことでした。さまざまな学習活動が横に繋がっていて、情報を伝える力を育んでいることを感じます。

6年生 理科「水溶液の性質」

 孕石康孝 先生が担当されている6年2組の理科の授業「水溶液の性質」を見学しました。理科室で、紫キャベツを指示薬として水溶液の性質を調べる実験を行いました。もちろん、一人1台のiPadを持ってきています。印象的だったのは、実験内容のまとめ方について、孕石先生が「KeynoteでもClipsでも、まとめやすい方で考察していい」と言っていたことです。
 ICTを導入している学校のなかには、使うアプリを限定することで、子どもたちの表現を制限してしまう学校もあります。孕石先生の授業では、「自分がまとめやすい方法を自分で選べるようになりなさい」という先生からのメッセージが伝えられているように思いました。子どもたちのことを信頼して、道具としてiPadを手渡している様子を見ることができました。こうして手渡すことで、子どもたちが思考や表現に使える道具が増えていくことに繋がると思います。

 実験中、スポイトで水溶液を入れていくときに、子どもたちは色が変わる/変わらないを仮説を立ててから、子どもたちは試験管の中の混ぜた液の色がどのように変化していくかを動画で撮影していました。色が変わっていく様子を撮影しながら、「ほら!ほら!変わった!」という声があがっていました。
 肉眼で観察するだけでなく、テクノロジーを使うことで、「変化の過程」を何度も見直すこともできます。観察記録の手段としてテクノロジーを使うことで、実験で気づけることが増えると思います。
f:id:ict_in_education:20200116164315j:plain

まとめ

 3年生の国語の授業も、6年生の理科の授業も、どちらも一人1台のiPadを思考・表現の道具として、「いつでも使える」ように環境を作り、授業の中でもどんどん使っている様子がわかりました。普段遣いの日々のなかで、「使っていいところ」「使ってはいけないところ」「使ったほうがいいところ」「使わないほうがいいところ」を子どもたちはわかってくるのだろうな、と感じました。


 No.3に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)