教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

スマートに学べる問題集「リブリー(Libry)」を提供する株式会社Libry CEO後藤匠さん インタビュー No.6(2021年3月22日)

 スマートに学べる問題集Libry(リブリー)を提供する株式会社Libryが、「2022年春、学習者用デジタル教科書機能をリリース!~「生きる力」を育むデジタル教材プラットフォームへ!~」というリリースを出しました。リブリーが、学習者用デジタル教科書の本格的な普及に向けた2022年春に学習者用デジタル教科書機能リリースについて、CEOの後藤匠さんにインタビューをしてきました。

アダプティブラーニングで気をつけるべきところ

 個別最適化した学びで知識・技能を習得していくというのは、EdTechとしては多くのサービスで実現されつつあるところです。また、学校の先生方にも「学びの個別最適化」というキーワードは浸透しつつあると思っています。ただ、すべてがシステムで提示されていく通りに学んでいくだけになってしまってはいけない、という危機感も、後藤さんは語っていました。EdTechが入って、学校の先生の仕事がなくなるというのではなく、むしろ先生の子どもたちとの関わり方がより重要になっていくと思います。

後藤さん 教育においてテクノロジーは主役ではないので、テクノロジーは教育にどこまで介入すべきかと考えることは、とても大事なことだと考えています。
先日、社内のメンバーでオンラインで集まって、「学習履歴データに基づいたレコメンドがマインドコントロールになってしまわないか」というテーマでディスカッションをしました。
学習ログなどから子どもたちの特性を把握できるようになり、「あなたにはこれが向いています」とレコメンドしたとします。子どもたちがその結果を見て「私にはこれが向いていて、これは向いていないんだ」という固定観念に囚われてしまったら、良かれと思って行ったレコメンドがキャリアを広げるどころか狭めてしまうかもしれない、という話をしたんです。

どこまでが支援で、どこまで行ったらやりすぎなのかを喧々諤々議論しました。その時の議論では「あなたはこれが向いている」と断定はせずに、あくまでも「選択肢を提示する」までにするんだろうな、という話になりました。その結論はとてもリブリーらしかったんです。いまのリブリーで、問題を解いたあとに、類似問題が出るのですが、リブリーは「次はこれを解きなさい」とするのではなくて、複数の類似問題を提示して、「どの問題をやる?」と問いかけるんです。その感覚と同じです。

f:id:ict_in_education:20210525103625p:plain

学習において、主人公は子どもたちなので、子どもたちに「与える」のではなくて、子どもたちに「自分で手に取らせる」というスタンスであるべきだと思っています。そのために、わかりやすく手が届くところに情報を置いてあげたいんです。自分で手を伸ばして獲得した情報は、子どもたちが得た情報で、それには価値があると思っています。
ベルトコンベア式にどんどん情報が運ばれてきて、目隠しして口を開けていれば情報が流れ込んでくるというのはリブリーらしくありません。

そういうやり方を否定するわけではありませんが、僕らが作りたい世界観は、そういう世界観ではありません。もっと自由で自律的な世界観を作りたい。
手が届かないと思っていたり、それがあることに気づかなかったりして、キラキラしたものを見過ごしていた子たちに、「手にとってみたら?」と問いかけてあげるような温度感を目指したいんです。

「まず第一段階としてオートパイロットにして、自己肯定感を高める、というところから始めてもいいのでは?」と言う先生もいます。それでも、何もないよりはいいと思うんですが、オートパイロットでやらせてしまってそこでよしとしてしまわないようにしないといけないと思っています。アダプティブラーニングでも、ゲーミフィケーションでも、最終的に子どもたちが未来や自分に自信や期待をもちながら、力強く幸福に生きられるか、が重要なポイントですよね。

 2019年12月に、日本教育工学会 SIG-04「教育の情報化」主催のワークショップ「ICT?EdTech?テクノロジーは子どもの学びをどこまで支援できるのか?」にリブリーが参加していたときに、研究者の先生から「アダプティブラーニングでどんどん問題が出されていくときに、学習者の意思はあるのか?」という質問があったのを思い出しました。
blog.ict-in-education.jp

後藤さん まさにそうですよね。リブリーは、これまで同様、知識習得はしっかりやっていきます。いま自分が何ができて何ができないのかを理解できるようにし、目標としている学力に対して、速くキャッチアップできる手助けをする、そこはどんどんやっていきます。
また、リブリーはQRコードへの連携をすることで、動画コンテンツへの対応もやっていくので、テキストだけではわからなかったものが、マルチメディアをもとに、より理解を助けられるようにします。知識習得を支援していくということを重要だと思っているし、そこに対しては労力・リソースを割いていくことにはなると思います。

でもやはり、そこだけではないんです。もし、知識習得支援だけなってしまったら、日本の教育の目標は達成しえません。両輪が必要です。

 No.7に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)