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戸田市立新曽中学校 授業レポート(2022年11月17日)

 2022年11月17日に戸田市立新曽中学校を訪問し、廣川隼志 先生が担当する1年6組の国語の授業を参観させていただきました。

 授業の最初にスピーチの時間があり、4人の生徒が「おすすめしたい昔話」のテーマでスピーチしました。生徒たちは原稿も見ずに「桃太郎」と「鶴の恩返し」についてスピーチしていました。
 1回の授業で何人かずつ、順番にさまざまなテーマでのスピーチを行っているそうです。こうした機会が毎回あることは、生徒たちが自分でスピーチをするだけでなく、クラスメイトのスピーチを多く聴くことに繋がり、自分のスピーチのスキルも上げていく機会になると思います。
 現状では、廣川先生からスピーチのスタイルについて指示をしていないそうで、この日の授業では提示スライドもありませんでしたが、だんだん「写真を見せながらスピーチをしたい」や「資料を見せながらスピーチをしたい」というふうに生徒たちの方から要望が出てくるようにも思いました。「どうしたら伝わるか」を考える、とても良い機会になるのではないかと思いました。

 スピーチが終わったらグループに分かれて、一人1台のChromebookでデジタル紙芝居の制作へと進みます。古文「竹取物語」の世界に親しんでもらうことをねらいとして、教科書で描かれている場面をロイロノート・スクールを使ってデジタル紙芝居にしています。

 廣川先生から生徒たちへ、ロイロノート・スクールでワークシートが配信されていて、そこには、デジタル紙芝居制作のねらいが書かれていました。
 デジタル紙芝居は、絵(イラストや写真などを使う)と音声で成り立つもので、絵と音声を4人グループのなかで分担して作成していきます。グループ内での自分の役割についてもワークシートに書き込むようになっていました。

 廣川先生は、授業で使うすべてのワークシートをロイロノート・スクールで配信しているそうで、生徒たちはいつでも自分のChromebookでワークシートを簡単に見返すことができるようになっています。

 グループでデジタル紙芝居を共同制作することになるので、ロイロノート・スクールの生徒間通信をONにして、グループ内でカードや素材のやりとりができるようになっていました。生徒たちは、ロイロノート・スクールだけでなく、他のツールも使って、さまざまな素材を分担して作り、グループ内で共有していきます。

 デジタル紙芝居で使うものとして、画像を検索して素材として活用しているグループもあれば、自分たちでイラストを描くグループもありました。
 「スライドごとに絵のタッチが変わっちゃうな…統一感がほしいよね」と言っていたグループでは、イラストを描ける生徒に「こんなかんじで…」と描いて説明していました。それぞれに得意な分野があったり、やりたい分野があるときに、こうしてグループ内で個性に合わせて協業ができるのはとてもいいと思いました。

 画像を探したり、イラストを描くことを、楽しくなり過ぎてしまって、本来の目的が見失われてしまうことも多くあります。そこで、廣川先生は途中で「自分たちで楽しむためでなく、“自分たちがこうして見せたい”ということを相手に明確に伝えられるように、画像を選ぶ、描くようにしてください」と伝えていました。
 「金色の水が流れているってこと?」と話し合っているグループがありましたが、こうしてどんな画像・イラストを使うのかを考える過程で、みんなで教科書を読み合って理解を深め、イメージを広げることで、古文に親しんでいるように見えました。
 また、廣川先生は、「正確さも大事ですよ。この場面ではいない人がイラストで出てきていたりしては困りますよ」とも言っていました。こうして、デジタル紙芝居を制作する過程で教科書の本文を何度も読み返すようになっていたと思います。

 デジタル紙芝居で絵と合わせて再生されるように、竹取物語の本文を録音する作業も進んでいました。廣川先生は、「音声については、切るところやアクセントなど、正確さにこだわってください。音声を吹き込む前に練習したほうがいいですよ」と伝えていました。
 インターネットで竹取物語の朗読ファイルを検索して、それを参考に練習している生徒もいました。自分で参照できる情報を探して、実際に録音してみて、自分で聴いてみて、修正したいところは何度も修正できる、そうした活動ができるのも一人1台のChromebookがあるからこそです。

 デジタル紙芝居を制作する過程で、どんな絵をつけるのか、どんな音声をつけるのか、グループで協働して作るからこその楽しさがあり、楽しいからこそ何度も教科書本文を読み込む、ということができていたように思いました。

(為田)