2023年3月3日に、たつの市立龍野西中学校を訪問し、坂口万理 先生が担当する1年3組の英語の授業で、東京書籍の「NEW HORIZON」の学習者用デジタル教科書を活用している様子を参観させていただきました。
坂口先生の英語の授業では、週4回の授業のうち、1回がALTとネイティブのコミュニケーション力を高める授業で、残りの3回で教科書を活用する授業となっているそうです。教科書を活用する授業は、表現を学んだり文章を読みながら解説していく1時間と、単語や表現の定着を図っていく1時間、合わせて2時間の授業を1サイクルにして進んでいくそうです。
今回の授業は教科書「Unit 11 Story 2」の2回目、単語や表現の定着を図る授業でした。黒板には、どんな流れで授業が行われるのかがリストアップされて貼られていました。この流れに沿って、一人1台のChromebookを使いながら学習を進めていきます。
坂口先生の「Open your digital textbook to page 111. 」という言葉で、生徒たちは自分のChromebookで学習者用デジタル教科書のページを開いて、教科書本文の音読練習を2回します。本文を読み上げる音声を一人ずつヘッドセットで聴いて、自分でも発音をしていました。
学習者用デジタル教科書で音声を聴いて練習した後は、発音がきちんとできているかを確認します。Googleドキュメントを開いて、「ツール」メニューから「音声入力」を選び、マイクに向けて教科書本文を読んでいきます。正しく発音ができていれば、教科書と同じ文章がGoogleドキュメントにどんどん入力されていきます。学習者用デジタル教科書で本文を確認してから読み上げている生徒もいましたし、紙の教科書を開いて本文を読み上げている生徒もいました。自分が学びやすい方を選べるようになっています。
教科書本文にあった「Were you a starter?(スタメンなの?)」という文章が正しく音声認識されていない生徒が何人かいましたが、すぐに学習者用デジタル教科書で音声を聴いて確認していました。一人1台の学習者用デジタル教科書があることで、こうした音読練習が可能になっています。
音声入力のための操作方法は、坂口先生がプロジェクタで画面を映して、押すべきところをペンで囲んで表示していました。何度も繰り返している操作なので生徒たちも慣れているので全体に毎回説明するべきことでもありません。こうして画面でヘルプになる情報を映しておくだけでも十分効果があると感じました。
音読練習の後は、ディクテーションを行いました。学習者用デジタル教科書の本文を隠した状態で音声を聴いて、ノートに聞き取った英文を書いていきます。
ディクテーションのために学習者用デジタル教科書のマスキングの機能を使っているのですが、マスキングは何%くらい隠すかを自分で設定することができます。また、「文」単位で隠すか、「単語」単位で隠すかも自分で決めることができます。こうして生徒たちは自分自身で、どのレベルでディクテーションに取り組むかを決めることができます。
続いて、ノートと教科書を閉じて、Chromebookで東京書籍の「問題データベース タブレットドリル」を使った単語テスト(全13問)を行います。全員が同じ問題に取り組んで、全部やったら答え合わせのボタンを押すと自動で採点が行われます。終わった人は、宿題も同じタブレットドリルで出題されているので、単語テストがはやく終わった生徒は、宿題に取り組むこともできます。
テストが終わったら、各自で新出単語の意味を確認し、発音練習をしていきます。ここでも、学習者用デジタル教科書を使って英文にマスキングをして、発音練習をしていました。
この時点で授業の前半25分が経過していました。一人1台の学習者用デジタル教科書を使って、発音の練習をしたり、ディクテーションをしたり、単語テストをしたり、さまざまな活動をしてきました。
ここから、プリントの答え合わせの時間となりました。坂口先生は、実物投影機でプリントをスクリーンに映して、デジタルペンを使って正解を書き込みながら説明していきます。生徒の手元にあるプリントと同じフォーマットに書き込むようにするために、あえて実物投影機を使っているそうです。
一方で、黒板に英文を書くのに時間がかかる回答については、Googleスライドに英文を準備しておいて、プロジェクタに投影したらすぐに解説を始められるようにしていました。
こうして、「プロジェクタでスクリーンに解説を投影する」ということでも、「生徒の手元と同じものを用意してわかりやすさを高める」「生徒の待ち時間を減らす」というように目的を明確にして、実物投影機を使ったりコンピュータの画面を映したり、坂口先生がICTを目的に応じて活用しているのが印象的でした。
プリントの答え合わせが終わったら、学習者用デジタル教科書へ線を引いていきます。こうした、いままで紙の教科書で行っていたことをそのままデジタル教科書でも同様に行うことができます。
ここでは、分からなかった単語や重要表現に線を引きます。線を引く色を自分で選んだり、マークを使ったりすることで、自ら学習を調整できるように促すことをねらっていると坂口先生はおっしゃっていました。こうして学習者用デジタル教科書へ書き込んだ内容は、ふりかえりの時間に見直しを行うことで、まとめ学習の参考にもなっていきます。
この後、宿題として出題されているタブレットドリルに取り組む時間がとられました。タブレットドリルでは、先生側でどの生徒がどれくらいのところまでできているかを見ることができます。坂口先生は、タブレットドリルでの正解率や得点などは評価としては使っておらず、あくまで進捗を確認するために見ているそうです。
最後に、次回の授業で学ぶページから、キーセンテンスと単語調べを行いました。単語調べについては、学習者用デジタル教科書は一度閉じて、紙の教科書とノートを使って学習している生徒も多かったように思いました。単語を一覧で調べたりするのに、紙が便利なのかもしれません。こうして、英語を学ぶ活動において、「これをやるときはChromebook、これをやるときは教科書」というふうにツールを持ち替えながら英語を勉強している生徒たちが多かったです。
授業を参観させていただいて、一人1台のChromebookと学習者用デジタル教科書を使うことで、生徒たち一人ひとりが自分にあった英語の学び方をしている時間が多かったように思います。
先生が板書をしている時間を待っていたり、先生が書いたことをノートに写していたり、みんなでそろって英語を話したり、という時間はほとんどありませんでした。その代わりに、音声入力で自分の話した英語がきちんと入力されるかどうかを見たり、タブレットドリルを使って自分がいまどの部分が苦手なのかを知って練習する時間にしたり、自分自身で英語を学ぶ姿勢ができていたように思いました。
教室で、坂口先生が「こういう順序で学んでいって英語の力を身につけよう」という流れを作ってくれていて、そのなかで一人1台のChromebookと学習者用デジタル教科書を使うことで、自分にあった学びが実現できているように思いました。
こうして基本的な力を身につけて、ALTとのコミュニケーションをする授業で力試しができて、「もっと話したい」「もっと練習しよう」と思えれば、英語の力が伸びていくように感じました。一人ひとりが自分で学ぶ時間がクラス全体で学ぶ授業の中にあることの意義を感じられた授業でした。
(為田)