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佐賀県立致遠館高等学校 授業レポート No.1(2020年2月27日)

 2020年2月27日に、佐賀県立致遠館高等学校を訪問し、溝口哲史 先生が担当されている1年4組の数学の授業を見学させていただきました。佐賀県はすべての県立学校で電子黒板と無線LANの整備を終え、2014年度からすべての県立高校(全日制、定時制)で一人1台の学習用パソコンを導入しています。

 授業の最初に、3分間の小テストが行われました。プリントが配布され、生徒はそれぞれ問題に取り組んでいます。
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 プリントの左半分に印刷された問題を解き終わる生徒たちが出てくると、溝口先生は「終わった人から、各自リブリーで丸付けして、類題を解きましょう」と言いました。リブリーは、提携出版社の中学校・高校向けの教科書・参考書が収録されているデジタル問題集で、学習履歴を使ってアダプティブラーニングを実現するサービスです。リブリーは学習者用パソコンにインストールされているので、生徒たちは自分のペースでリブリーの画面を見て自己採点をします。
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 リブリーでは、収録している問題に「その問題を解くために必要な知識」のタグデータが20から30ぐらいつけられています。それによって、問題を解いた後に、似た問題や関係する問題が類題として自動的に表示されます。 溝口先生が「難しいのに挑戦してみようよ」「自分にあった類題を選んでね」などのように、生徒たちに声掛けをしていくなか、生徒たちは表示された類題から、次に解く問題を自分で選びます。
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 次に解く問題を選んだら、さっきまで取り組んでいたプリントの右半分に、類題を自分で選んで解いていきます。問題番号を書く欄が用意されているので、先生はこれを手がかりに生徒たちがたくさんある類題の中からどれを解いたのかを見ることができます。
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 10分ほど時間をとったら、溝口先生は「残りは家で復習も兼ねて取り組んでください」と言い、残りは宿題となりました。こうして、授業の最初の3分間での小テストから、類題を解く時間を作り、そのまま宿題までをリブリーを使って出題をしています。家庭学習で続きをやって、最初に解いた問題と同じように自動採点をして、リブリー経由で先生に提出できるようになっています。
 先生は、リブリーを通じて提出された宿題について、生徒たちがどの問題を解いていて、正答率はどれくらいなのか、ということもわかるようになっています。

 リブリーを使う時間が終わった後、溝口先生は「教科書とノートを開いて」と言って、電子黒板にデジタル教科書から「対数の性質」のページを提示して授業を行いました。デジタル教科書を使って説明をし、黒板にどんどん板書をし、練習問題をみんなで一緒に解いていく数学の授業でした。

 一人1台の学習者用パソコンがあるからといって、すべての学習をコンピュータを使って行うのではなく、解説と最初の練習問題は黒板を使ってみんなで同じ問題を解いていきます。こうした学びの場の設定は、これまでの授業の形(=アナログ)の方が適している部分だと思います。
 そして、そこからは理解度に合わせて類題をどんどん自動で提示して、自分たちでどの類題に取り組むかを決めるところはリブリー(=デジタル)を活用して行っています。この後、宿題を解き提出するところもリブリーを使っていますが、クラウド上にすべて管理されますし、ノートと違って問題ごとに誰がどの問題を解いたのかを見ることもできるようになります。
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 アナログとデジタルをバランス良く使っていくことが重要になるし、先生が授業をどう設計するかによって、デジタルのいいところをうまく使っていくことができるようになれば、学びはより個別最適化できるようになると思います。こうしたデジタルの活用の仕方について、どんどん授業設計が進歩していけばいいと思いました。

 No.2に続きます。
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(為田)