教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

守谷市立守谷中学校 授業レポート(2023年3月16日)

 2023年3月16日に茨城県守谷市立守谷中学校を訪問し、羽富圭吾 先生が担当する2年2組の英語の授業を参観させていただきました。この日は、羽富先生とALTのDontae Huskey(Tai)先生とTyler Spiess先生の3名で授業を行っていました。

 授業は第2学年のNEW HORIZON2のUnit2 Foods Travels around the Worldの単元で、学習者用デジタル教科書や1人1台端末などのICT機器を効果的に活用した授業を行っていました。まず、学習者用デジタル教科書のPoint of viewのページを大型電子黒板に映し、3人の先生がその4つのメニューの中でどれが好きかを話し合う「Small Talk」から始まりました。3人の先生の会話の中で、“Which do you like of the four?”という質問と、“I like sushi, because…”という答えの表現を、生徒たちはくりかえし聴くことができていました。
 羽富先生とALTの先生の会話を聴いた後で、今度は生徒たちがTai先生から“Which do you like of the four?”と質問されました。そのメニューを好きな理由も続けて質問されます。Tai先生が会話をリードしながら、楽しそうに英語を話しているのが印象的でした。
 その後で、全員がiPadを持って立って、隣の人とペアになって1分間、学習者用デジタル教科書のページに載っているメニューの写真を見せながら、“Which do you like of the four?”という質問をし、その質問に答えて理由を言うSmall Talkをしました。
 この日の授業のゴールは、「好きな食べ物や好きではない食べ物を外国の人や友達に紹介する」でした。羽富先生とTai先生は、そのためにALTにお気に入りの給食を紹介しましょうと言います。

 好きな食べ物や好きではない食べ物を外国の人や友達に紹介するために、一人1台のiPadを使って学習者用デジタル教科書を開き新出単語をレビューしていきます。
 イヤホンを使って学習者用デジタル教科書を活用しているので、一人ずつ自分のペースで単語の発音を聴き、意味を確認していくことができます。難しい発音の単語を何度も聴き直すことができ、自分の聴きやすさにあわせて読み上げのスピードを変えることも可能です。

 単語のレビューが終わると、教科書の本文が読み上げられるのを聴きながら、同じように英語の文章を発音していくシャドウイングを行います。読み上げに沿って文章の色が変わっていくので、どこを読んでいるのかがわかります。
 ここでも、読み上げのスピードを自分で変えることができます。CDの音声をみんなで一緒に聴く授業の形式ではこうしたことはできません。学習者用デジタル教科書を一人1台の環境で使えるからこそ、生徒一人ひとりが自分の習熟度に合わせて、自分で練習できるようになっています。

 次に、教科書の本文を読んで、Key Information(重要な情報)が書かれている部分に画面上で線を引いていきます。好きなメニューとしてナポリタンと寿司が紹介されている本文を読んで、ナポリタンについてのKey Informationの部分に赤の線、寿司についてのKey Informationの部分に青の線を引いていきます。

 線を引き終わったら、自分がどの部分をKey Informationだと思って線を引いたのかを見せ合う時間をとっていました。
 一人ひとりがKey Informationとして線を引いている場所は、まったく同じにはなりません。文章として線を引く生徒も、単語のところで線を引く生徒もいると思います。こうした活動は、Key Informationの見つけ方を学べる機会になります。また、この後、自分で給食を紹介する文章を書くとき、どんなKey Informationを伝えるべきなのかを考える機会にもなっていたと思います。

 生徒たち一人ひとりが給食を伝える文章を書き始める前に、Tylor先生とTai先生が自分で食べたことのあるアメリカのスクールランチの写真を見せて、メニューの説明をしてくれました。
 生徒たちは自分たちの給食との違いが大きいので、興味をもったようでした。自分たちの知る文化とは全然違う文化があることを知ることで、「違う文化圏の人に伝えよう」というモチベーションが生まれると思います。こうした環境を作ることができるのは、ALTの先生が教室にいて子どもたちに語りかけてくれるからです。

 ここから生徒たち一人ひとりが給食を紹介していきます。iPadでMetaMoJi ClassRoomを開いて、羽富先生があらかじめクラウドに保存しておいた給食の写真から1つメニューを選んで写真を貼り付け、メニューを紹介する文章を書いていきます。MetaMoJi ClassRoomとは、デジタルノートとして守谷市で導入している学習アプリです。

 MetaMoJi ClassRoomに用意されているワークシートに選んだ給食の写真を貼り付け、3つの文章で紹介コメントを書きます。Tai先生は、“Making a picture perfect is not important. Writing is important.”と生徒たちに言っていました。どの写真を使うか、写真をトリミングしたりしていくと、どんどん時間が過ぎていってしまいます。写真を貼り付けることよりも、「書くこと」が大事なんだということを伝えていたのが印象的でした。紹介コメントとして使える表現をみんなで確認して、文章を書く時間をとりました。

 ワークシートへの入力は、キーボード入力でも、ペンで書くのでも、どちらでも可能です。画面をスプリットビューにして、画面の半分で“小麦粉”を英語で何というかを検索して、ワークシートに書き込んでいる生徒もいました。
 「テクノロジーばかりを使うようになってしまうのはよくないが、英語を学ぶためのツールとしてテクノロジーを使うのであればいい」とTai先生が授業後に話していましたが、辞書を引きながら英文をキーボード入力するのは、英語を学ぶツールとしてテクノロジーを使っていることになるのだと思います。

 MetaMoJi ClassRoomでは、画面の右側にある赤い「?」のボタンを押すと、先生に通知がいくようになっています。羽富先生は、助けを求めている生徒のところへ行って、サポートしていました。

 また、MetaMoJi ClassRoomでは、リアルタイムで生徒が書いている内容を先生の画面で確認することができるので、羽富先生は教室を歩き回りながら、自分のiPadでMetaMoJi ClassRoomを開き、生徒たちの書いたワークシートを確認しながら赤ペンで添削したりコメントを書いていたりしました。

 最後に、ペアになってプレゼンテーションをしました。一人1台のiPadがあることで、自分が書いたワークシートを見せながらプレゼンテーションをすることができます。慣れてくると、写真や見せたい文章の部分を拡大して指し示しながらプレゼンテーションをすることもできるようになってくると思います。何かを伝えるためのツールとして英語を使う場面を増やすために、授業でこうしたプレゼンテーションの機会を作るのは大切だと思います。

 学習者用デジタル教科書を使って発音を練習する機会も、MetaMoJi ClassRoomで書く機会も、ペアでプレゼンテーションする機会も、いずれも授業の中で英語をどんどん使っていくための工夫だったと思います。
 生徒たちが失敗を恐れずに英語を使っていくためのツールとして、一人1台のiPadをはじめ、テクノロジーが使われているのが印象的な授業でした。

(為田)