教育ICTリサーチ ブログ

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富士見市立針ケ谷小学校 校内研修 レポート(2023年5月22日)

 2023年5月22日に富士見市立針ケ谷小学校を訪問し、校内研修の講師をさせていただきました。針ケ谷小学校は、昨年度の5月に初めて校内研修の講師をさせていただき、その後2回の研究授業にも参加させていただきました。
 今年度の最初の研修では、昨年度に引き続き子どもたちが一人1台の情報端末を文房具のように活用して学べるように、「デジタル・シティズンシップ」について取り上げたいとのことで、お声をかけていただきました。

 研修では、情報モラル教育とデジタル・シティズンシップ教育の違いについて最初に紹介しました。ネットの活用のなかで危ないことだけを伝えて、「危ないから使わないように」とするのではなく、危ないことに気をつけながらもデジタルを活用して社会と関係していくためにどうすればいいのかを考えていきましょうと伝えました。
 子どもたちがどんなことができればいいのか、先生方が子どもたちのデジタル活用のどんなところを価値づければいいのかの軸として、書籍『デジタル・シティズンシップ』のなかで紹介されていた、『学校リーダーのためのデジタル・シティズンシップ・ハンドブック』から、「デジタル・シティズンシップの9要素」を紹介しました。

 僕は、「デジタル・シティズンシップ」という大きな言葉で考えるのではなく、そのなかに「どういう要素が含まれているのか」を先生方が知り、どの要素を大事に思うのかを考えることが重要だと思っています。
 これは、同じ富士見市内でも学校ごとに文化がありますし、子どもたちが家庭でどれくらいデジタルに親しんでいるか、家庭でどんなふうにデジタルを使っているかなども地域性があるので、学校ごとに考える必要があると思っています。

 ここで紹介した9要素のなかでは、僕は「3. デジタル・コミュニケーションと協働」がとても好きです。この「3. デジタル・コミュニケーションと協働」ができるようになることは、デジタル・シティズンシップを身につけることに繋がりますが、そのためには、授業の中で、デジタル・コミュニケーションと協働につながる活動をしていなくてはいけません。
 例えば、授業支援ツールを使ってただプリントを配布し、それを回収するというだけでは、「協働」は生まれません。自分で考えを書いてみて、それをみんなで共有して、クラスメイトが書いたことを参考にして書き直したり、意見交換をしたり、ということが授業の中に入って、そこではじめて「デジタル・コミュニケーションと協働」をしていると言えると思います。
 他の8つの要素に関しても同様です。学校でデジタルを活用するなかで、ここに挙げられている要素に触れられるように先生方が意識する必要があると思います。

 情報モラルも、デジタル・シティズンシップも、文言だけ知っていてもしかたなく、それが日々の生活の中で積み重ねられるなかで、子どもたちが身につけ、使えるようになるものだと思います。そう考えると、「情報モラル」や「デジタル・シティズンシップ」から、デジタルを抜いて「情報モラル」「デジタル・シティズンシップ」と考えれば、学校での日々がこれらを子どもたちに伝えていくのだということは納得してもらえることだと思います。

 日々の子どもたちのデジタルを使った活動への価値づけをしてほしいということを伝えたうえで、授業で使える教材としてSTEAMライブラリーにある「GIGAスクール時代のテクノロジーとメディア~デジタル・シティズンシップから考える創造活動と学びの社会化」のサイトを紹介しました。
 僕自身が、小学校2年生と3年生のクラスでやってみたワークシートも紹介しながら、子どもたちが体験をしたうえで学ばないと、ただ知識としてしか得られないという話をしました。

www.steam-library.go.jp

 デジタル・シティズンシップは、デジタルを使って社会とどう繋がっていけるかを考えることだと思えば、当然学校の中だけの問題ではなく、家庭での問題にもなります。学校のなかでこれから問題となりそうなこと、保護者様から懇談会や面談などの場で言われそうなことなどをMentimeterを使って共有してもらいました。

 「こういうことが起こりそうだ」ということを学校内で先生方で共有しておいて、そうした問題が起こったときに「どう対応しようか」というときに、判断の軸として例えばデジタル・シティズンシップの9要素を活用してもいいと思います。
 日々の子どもたちの様子を見ていて、デジタルがいかに子どもたちの学びを変えているかを目の前で見ている先生方だからこそ、きちんとなぜそういう方針でデジタルを使っているのか、を説明できると思います。
 「危険性があるから、~~は使わないようにします」と禁止してしまうのは、いちばん簡単ですが、それでは子どもたちはデジタル・シティズンシップを身につけられません。学校の教室が、子どもたちが小さく失敗をするような場になればいいと思います。禁止をすることでは、そうした場を学校に作ることはできません。

 針ケ谷小学校では、昨年度に一人1台の情報端末を活用した授業が広がり、先生方も子どもたちもスキル的には問題なく使えるようになりました。だからこそ、ここで「デジタル・シティズンシップをどう取り入れるか」ということを考えて、日々の授業に活かしてもらえればと思います。
 そのための、最初のステップとして今回の校内研修が役立てばいいなと思っています。今年度も引き続き、サポートをさせていただくことを楽しみにしています。

(為田)