河出書房新社の「14歳の世渡り術」シリーズの1冊、宇野常寛さんが書いた『ひとりあそびの教科書』を読みました。
僕は大学くらいまでは、たまたま自分の趣味と合う友達が周りにいて、楽しくみんなで遊ぶことができたのですが、本当にそれは「たまたま」で、ひとりで過ごす方が好きな子もたくさんいたんじゃないかな、と最近は思うのです。
「ひとりで過ごすんだっていいよ」ということを書いてくれているこの本は、子どもたちにも読んでほしいと思いますし(「14歳の世渡り術」というシリーズ名、最高だと思います)、子どもに接する大人も読んだらいいと思っています。
読書メモを共有します。
この国のほとんどの大人たちはこの世の中の変化に気づいていない。「みんな」に合わせることよりも、「ひとり」で考えることが大事になる世界に変わったことに気づいていない。(p.23)
子どもの頃って特に、「あそぶ」となるとみんなで遊ぶことになってしまって、教室で休み時間に一人で本を読んでいたり、黙々とプログラミングを頑張っていたり、というのは「みんなで遊びなさい」となってしまうことも多いと思うのです。「ひとりで考えて、ひとりで遊べる」ことも、価値づけてもらえたらいいな、と思います。
ひとりあそびには「コツ」がある。君たちの中には、なんだかんだ言って「ひとり」であそぶより「みんな」であそぶほうが楽しいんじゃないかと考える人も多いと思う。でも、それはたぶんひとりあそびのコツがつかめていないだけだ。コツさえつかめば、ひとりあそびはどんどんおもしろくなる。そして基本的に人生に退屈しなくなる。他の誰かに頼らなくても、楽しい時間をいくらでも過ごせるからだ。実際に僕はものごころついてからずっと、ほぼ毎日やりたいことがたくさんあって寝るのが勿体ない、と思いながら生活してきている。(p.39)
宇野さんは、ひとりあそびの4つのルールを書いている(p.38-49)のですが、これがとても好きです。
- 【ルール1】人間以外の「ものごと」にかかわる
「もの」というのは、動植物や石ころのような自然物あるいは服やおもちゃのような人工物のこと。「こと」というのは走ることや食べることなど、つまり、(ここでは自分の)行為のことだ。「他の人のこと」はここではいった、忘れよう。- 【ルール2】「違いがわかる」までやる
これはおもしろいなと思ったら同じことを「違いがわかる」までやってみること。「ひとりあそび」はやればやるほど、「違いがわかる」ようになっていってどんどんおもしろくなっていくからだ。- 【ルール3】「目的」をもたないでやる
「~のために」やることは「あそび」じゃない。あくまでそうやって「あそぶ」ことを自体を目的にしていないと、そのおもしろさはわからないからだ。- 【ルール4】人と比べない、見せびらかさない
こういう「あそび」をしていると他の人からどう思われるだろうとか、一切考えないこと。他の人と比べたり、見せびらかすことが目的になってしまったら、それはもう「ひとりあそび」じゃないし、そのおもしろさもわからなくなってしまう。
この4つのルール、とってもいいなと思うのですけど、学校の場ではなかなかこの4つのルールのところまで子どもたちがたどり着くことは少なそうだな、と感じました。もちろん、家庭でこうしたルールにたどり着く子もいるけれど、全員ではないだろうし、こうしたルールを価値づけてくれる場面が学校にもあったらいいな、と思います。
この『ひとりあそびの教科書』のなかでは、「第1章 街に走りに出てみよう」「第2章 生き物たちに触れてみよう」「第3章 ひとりで「旅」に出てみよう」「第4章 「もの」をたくさん集めてみよう」「第5章 ゲーム「で」しっかりあそんでみよう」に分けて、ひとりあそびが紹介されています。
そのなかの「第4章 「もの」をたくさん集めてみよう」では、レゴブロックの魅力について書かれているのですが、こういう観点も学校で価値づけられたら素敵だな、と思いました。
ちなみにレゴブロックの魅力のひとつに、手を動かしていれば、確実に、少しずつ前に進むことがあると思う。間違えても、説明書をよく読んでブロックをひとつずつ外していけば完全に取り返しがつく。世の中には、手を動かせばその分確実に前に進むのも、しっかり考えて後戻りすれば完全に失敗が取り戻せるものもなかなか存在しない。レゴブロックはそんな数少ないもののひとつなのだ。(p.153-154)
ひとりあそびができる人こそ、自分でどんどん突き進んで学んでいく探究をできるようになるようにも思えるので、子どもたちに思う存分、ひとりあそびを楽しんでごらん、って言えるような大人になりたいな、と思いました。また、それとともに自分自身だって遅過ぎはしないと思うので、ひとりあそびをもっと楽しめる人になりたいなあと思います。
(為田)