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戸田市立新曽小学校 授業レポート No.1(2024年1月29日)

 2024年1月29日に戸田市立新曽小学校を訪問し、田尻令 先生が担当する6年1組の社会「長く続いた戦争と人々のくらし」の授業を参観させていただきました。前回1月22日に参観させていただいた授業では5時間で5つの課題(だいたい1回の授業で1つの課題)に取り組むペースになっていましたが、今回の授業では、単元全体で1つの課題に取り組むように授業が設計された、より自由進度型の授業を田尻先生と子どもたちが目指していました。

 今回の単元は全部で6時間で構成されていて、単元の学習の流れとして「課題決め」→「情報収集」→「整理・分析」→「まとめ・表現」→「発表練習」となっています。
 1回目の授業で、田尻先生は単元全体の内容を一斉授業の形式で子どもたちに伝えて、そこで学んだ内容を活かしながら子どもたちに調べたい課題を選んでもらっていました。3人~5人で作った10のグループが調べる課題は、「衣・食・住」「日中戦争」「空襲・爆弾」「特攻隊」「ポツダム宣言」「第二次世界大戦」の6つとなりました。

 この日は単元の2回目の授業で、単元の学習問題である「長く続いた戦争は、人々にどのような影響を与えたのだろう」から、各グループが調べると決めた課題にどんな繋がりがあるかを確認しながら、「情報収集」と「整理・分析」へと進んでいきました。

 各グループが、「課題決め」→「情報収集」→「整理・分析」→「まとめ・表現」→「発表練習」という学習の流れのどこまで進捗しているかがわかるようにシートも用意されていました。単元全体を通しての学習の流れが決まっていて、それが一覧できるようになっているので、他のグループの進捗状況もわかります。

 単元の最後の6回目の授業で、各グループがテーマについての発表会を行います。そのための動画やスライドを子どもたちは準備していきます。

 テーマを深掘りしていくときに自分たちで必要なことを学べるように、田尻先生は授業用スライドを提供していました。子どもたちは授業用スライドを見返したり、教科書の該当箇所を何度も読んできます。また、学習範囲の資料も教室にたくさん準備されていました。
 途中で子どもたちから、「授業に関係することなら、これも見てもいいですか?」とYouTubeやインターネット上の情報を見てもいいかどうか確認する質問があがっていましたが、田尻先生は「もちろん」と答えます。さまざまな情報を集めて、そこから自分たちでどの部分が必要なのかを選び取る活動をするために、自由を与えているように感じました。

 いろいろと調べていくと、途中で脇道にそれてしまったり、細かいところまで調べ過ぎてしまうケースもあります。教科書の内容から離れすぎてしまわないように、単元の学習問題「長く続いた戦争は、人々にどのような影響を与えたのだろう」と自分たちの課題がどう繋がっているかということを田尻先生が質問したりしながら活動が進められていきました。
 ここで、田尻先生が単元の学習問題と繋がっているかを確認しながら子どもたちに声掛けをしていくことがとても大切なことだと思いました。子どもたちは一生懸命調べていき、わかることが増えてきて楽しいものの、深掘りすることで雑学ばかりを身につけてしまう、「活動あって学びなし」の状況にならないようにするには先生のサポートが必要だと思います。子どもたちが既習の内容を活かしながら、「どうして?」「どのように?」など社会科らしい見方・考え方を働かせながらグループの課題に取り組めるようになることが必要です。

 最後の5分で、単元のふりかえりのワークシートをロイロノート・スクールで開いて、成果物を貼りつけ、その横に、この日の授業でどんなことをしたのかを書き込んでいきました。
 こうして成果物をふりかえりのワークシートに貼りつけてもらっていることで、田尻先生は子どもたち一人ひとりあるいはグループの進捗状況を見とることができます。

 また、一生懸命自分たちのグループでの活動に没頭しているからこそ、他のグループがどんなふうに調べたり、分析したりしているのかがわからないこともあります。
 毎回の授業の最初や最後に、クラス全体に対して、他のグループはこんなふうに進めている、ということを共有して先生が価値づけてあげるといいと思いました。

 自由進度型の授業で子どもたちが自分たちのペースで学習を進めているなかで、先生が果たすべき大切な役割は、「優れた学び方をしている子ども・グループの紹介」や「支援が必要な子ども・グループへの机間指導」になると思います。こうした役割は、先生だからこそできることです。そのためにも、進捗状況を常に見とれるようになっていることが重要です。

 前回の授業よりも「より個別最適になるように」と田尻先生がチャレンジした授業設計でしたが、こうして授業のねらいを明確にして先生方が新しいチャレンジをすることが大切だと感じました。

 No.2に続きます。
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(為田)