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戸田市立新曽小学校 授業レポート No.1(2024年1月22日)

 2024年1月22日に戸田市立新曽小学校を訪問し、田尻令 先生が担当する6年1組の社会の授業を参観させていただきました。
 授業の最初にクラス全員で前回の授業で学んだ内容をKahoot!を使って確認していました。作問者は田尻先生ではなく、子どもたちが自発的に問題を作成しているそうです。授業で知識を知るだけでなく、自分で出題者になることで、より学びを深める機会になると思います。Kahoot!が終わると、作問した子にみんなで拍手で感謝をして、田尻先生が「前回の内容で、わからないところはありませんか?」と確認をして、授業に入ります。

 この日は、「世界に歩みだした日本」の5時間目の授業でした。田尻先生と子どもたちは、この単元を自由進度学習の形式で学んでいました。
 単元内で「明治の終わり、日本はどんな不平等条約を結んでいた?」「条約が改正されるとどんないいことがあるだろう?」「日清・日露戦争に勝った日本は何に近づいた?」「どうして日本の地位は上がったのだろう?」「産業が発展して生活や社会はどう変化した?」という5つの課題が設定されていて、それぞれの課題について自分のペースで、自分に合った学び方で子どもたちが学べるようになっています。

 田尻先生は子どもたちにロイロノート・スクールで自由進度シートを配布しています。自由進度シートには、5つの課題それぞれについて、(1)「成果物」を貼る欄、(2)「課題に対するまとめ」を書き込む欄、(3)ふりかえりをする欄が用意されています。
 5時間で5つの課題があるので、1時間に1課題ずつ進んでいくペースですが、自由進度シートの下部には、「1時間の枠にとらわれず自分のペースで進めてOK!教え合いもOK!」と書かれていました。

 授業の最初の5分でやることの確認をしたら、その後の35分間で、子どもたちは自分の自由進度シートを見ながら課題に取り組んでいきます。教科書やインターネットなどさまざまな教材を使って、子どもたちは自分で学んでいきます。
 ホワイトボードには、子どもたちが自分たちで学ぶためのガイドとして、5つ目の課題「産業が発展して生活や社会はどう変化した?」について田尻先生が用意した板書の構成が投映されていました。これを手がかりにしながら、子どもたちは課題についてまとめていくことができます。

 子どもたちは教科書やさまざまな教材を使って課題である「産業が発展して生活や社会はどう変化した?」を考えてまとめていきます。紙でまとめている子もデジタルでまとめている子もいます。どちらでも好きな方を選べるようになっていますが、今回の社会の授業では紙を選んでいる子が多かったようです。

 デジタルでのまとめ方も自由です。ロイロノート・スクールでまとめる子もいますし、Canvaでまとめている子もいます。どのツールを使うとまとめやすいのかを自分で考え、選んでいます。ただ、教科書の文章がよくまとまっているからこそ、そのまま文章を書き写してしまっている子もいました。教科書に書かれた内容を理解して知識を得たうえで、その知識をどう使うのかというのは課題設定の工夫のしどころだなと感じました。

 この授業では、教科書だけでなくさまざまな教材が教室に用意されていました。教室の前方には、2台のChromebookが置いてあって、そこで田尻先生が授業の説明で使うためのスライドを見ることができるようになっていました。スライドを順に見ていきながら、お互いに話し合って理解を進めていく子たちもいました。

 教科書などを読んでいて、わからない用語が出てきたときに調べられるように、ロイロノート・スクールで用語辞典が田尻先生から配布されていました。知らない人物について調べるための人物事典も同じように配布されていました。こうして教材を準備しておくことで、子どもたちが自分で学び進めることをサポートしています。

 教室のいろいろなところで、自由に学びが進んでいきます。場所を移動する子がすごく多いかというとそんなことはなく、自分の席で自分なりに学んでいる子が多いように思いました。そのうえで、近くにいる人と話し合う機会をもったり、わからないところを誰かに質問しに行ったりしています。必ずしも田尻先生に質問をするというのではなく、友達同士で頭を寄せ合って考えている子たちもたくさんいました。

 授業の最後の5分で、今日まとめたことを自由進度シートの「成果物」のところに写真やスクリーンショットで貼って、ふりかえりを入力します。これを提出してもらうことで、田尻先生の方で一人ひとりの学びの進捗や理解度などを見とることができます。

 最後にホワイトボードに映してあった田尻先生が用意した板書を、みんなで埋めていく形式でまとめていました。それぞれに学んだこと、調べてわかったことを発表してもらいながら埋めていきます。一人ひとりでは届かなかった部分については、ここで田尻先生がフォローをすることができるようになっていました。

 学び方は自由ですが、きちんと学べたかどうかを確認するために、毎時間の最初に確認テストを行います。また、単元の最後の6時間目に単元テストを行うことになっていました。同じように自由進度シートを活用して学んだ前の単元では、単元テストで知識を問う問題については正解率は変わらなかったものの、思考力・判断力・表現力を問う問題については点数が向上したそうです。知識を先生から伝えてもらって板書を写すだけでなく、自分で課題について調べ、まとめ、人に伝えるという活動が行われる成果だと言えるように思いました。

 No.2に続きます。
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(為田)