2020年10月27日に登米市立佐沼小学校でプログラミングの授業公開が行われました。登米市教育委員会が主催する登米市教育支援センター主管の第2回プログラミング研修会の一環で、市内小学校の先生方が参加されました。
弊社フューチャーインスティテュートは、同研修会の第1回から講師を務めています。今回は授業参観、事後の振り返り、プログラミング教材体験ワークショップを行いました。
今回の授業者は、Microsoft社認定教育イノベーターとしてもご活躍の佐沼小学校の金洋太教諭です。担任している第5学年の理科「電流が生み出す力」(11時間扱いの10時間目)で「オリジナル音楽プレーヤーを開発しよう」がテーマでした。
第8時までに、子どもたちは電磁石の性質について実験したり性質をまとめたりといった学習をしてきました。そして第9時でMicrosoft MakeCodeでプログラミングしたものをmicro:bitに書き込み、micro:bitと紙コップなどで自作したスピーカーを繋いで音楽プレーヤーを作成するという発展的な課題に取り組んできました。
プログラミングでは、音楽プレーヤーと称するだけに、単に音が鳴ればよいというのではなく、複数のメロディが流れるようにすることという条件が示されていました。電磁石の性質の学習としては「音が小さくて聞こえづらいので、はっきり聞こえるぐらいまで音量を上げるには、どんな工夫が必要か」という観点が示されていて、子どもたちは自分の予想を基に理由を明らかにしつつ改良する活動に取り組んでいました。これらは「音楽プレーヤーの仕様と人気を表したルーブリック」として子どもたちと共有されていたので、活動の方向性を見誤る子どもは一人もいない印象でした。中には、複数の曲が順番に流れるようにするのではなく「Aボタンを押すとこの曲、Bボタンではこの曲、micro:bitを揺さぶるとこの曲が流れる」というプログラムを作成して、きっかけと曲を関連づけている子もいました。
電磁石の性質の学習を積んできた上で「音量を上げる」には、「コイルの巻き数を増やす」「磁石を強くする」「電流を強くする」が考えられます。単元の構成から、本時では多くの子どもたちがコイルの巻き数と磁石の強度に着目して活動していましたが、プログラミングの要素が組み込まれることで「ソフトウェアによる制御でも音量を変化させることはできないのか」といった新たな疑問や解決するべき課題を見つけて、中学校技術科の内容にも繋がっていくのではないかと感じました。
導入での金先生からの説明は5分ほどで終わり、子どもたちは自力解決に取り組みました。電磁石のパワーアップに必要な導線や磁石などは自由に使えるように豊富に用意されていて、子どもたちは必要に応じて材料を取りに行っていました。
はじめのうちは黙々と自分の作業に没頭する子どもたち。ある程度目途がつくと、金先生を呼んで確認してもらったり、友だち同士でアドバイスし合ったりする様子が見られました。
金先生は子どもたちに必要以上に干渉することなく、日々の授業や学校生活からの見取りを基に、随時個別指導に当たっていました。金先生によると、この授業を構想するにあたってはScratchの開発者であるMITメディアラボのミッチェル・レズニック教授が提唱する「創造的な学びのスパイラル」を意識したとのことでした。
金先生は個別指導の中で「このプログラムを実行したらどんな風になるか、イメージしてる?」「micro:bitにダウンロードして聴いてみることを、何度もやってみるのはいいことだね!」と、予想→実施→確認→・・・を繰り返すプロセスを声掛けしていました。
授業のまとめで金先生は、登米市で導入されている授業支援ソフト「オクリンク」を使って、プログラミング画面のスクリーンショット、作った音楽プレーヤーの写真、活動から確認できたことをセットにして提出するよう指示しました。金先生の簡単な指示で子どもたちはすらすらと成果を提出していきました。Windowsタブレットが子どもたちの学びの道具として当たり前になっている様子は、参観された先生方にとって刺激的だったのではないかと感じました。
子どもたちはソフトウェアキーボードを自分のスタイルで使いこなしていました。ローマ字入力する子、手書き文字認識で入力する子がいて、普段どのように指導しているのかを金先生にお聞きしたところ「基本的にはローマ字入力を推奨していますが、授業の振り返りなどは思いを書き表すスピード感を大事にしているので、その子それぞれがぱぱっと書き表せる方法でかまわないと思っています」とのことでした。スキルとしてのキーボード入力は基礎基本として身に付け、それと並行して、目的や場に応じた入力方法を選んで使いこなせるような子どもたちを育てる姿勢に感銘を受けました。
プログラミングを教科指導に取り入れることが強く意識されると、ついつい教科の目標から離れがちになってしまったり、やらせっぱなしになってしまったりすることが、先生方にとっての課題ではないかと感じていましたが、今回の授業はそれを払拭するためのヒントが随所にちりばめられていた実践でした。翌日からは隣のクラスでもこの実践を進めていくとのことでした。今回参加された先生方もご自分の学校に持ち帰り、日々の授業づくりに活かしていっていただきたいと思いました。
(佐藤)