2021年11月15日に、戸田市立新曽小学校を訪問し、小林湧 先生が担当する6年2組の総合的な学習の時間の授業を参観させていただきました。この日、6年2組は、卒業プロジェクトとして「学校内の三権分立」という単元に取り組んでいました。
新曽小学校に一人1台のChromebookが導入されてから、6年2組は「Chromebookを自分たちの学びの道具として使えるように、自分たちでレベルアップ型ルールを作る」活動に取り組んでいました。その後、社会の授業の『国の政治のしくみと選挙』で三権分立を学習したときに「学校では司法権も立法権も先生が握っている状態になっている。ICT活用と同じように、学校のルールに関しても自分たちで見直すことができるのではないか」という議論を子どもたちが始めたそうです。
今回の授業では、新曽小学校のルールを整理・分析し、望ましいルールを職員会議に提案するために、提案内容をブラッシュアップする授業を行っていました。授業の最初に、小林先生からこの授業で発揮してほしい力を子どもたちに問いかけると、3つの力が出てきました。
- 協働力
- 学びに向かう力
- 問題解決力
小林先生は、「今日は情報を集めたいから“問題解決力のなかの情報収集力”をがんばる、でもいい。他の人を助けるために“協働力”をがんばる、でもいい」と言い、各自でどの力を意識してがんばろうか、決めてほしいことを伝えます。
この日は公開授業だったので子どもたちはみんなビブスを着ていたのですが、ビブスの色が、子どもたちが属しているグループを表していました。クラスは、機能ごとのグループとテーマごとのグループに分かれています。
- 機能グループ
- CEOグループ(黄色)
- 全体の補助、統括
- COOグループ(緑)
- 全体の補助、全体のスケジュール管理
- CIOグループ(青)
- 広報室、全体の情報整理、Googleサイトでホームページ作成
- CTOグループ(水色)
- 汎用性を上げるためのプログラムづくり
- CEOグループ(黄色)
- テーマグループ
- 持ちものカンパニー(ピンク)
- 学校内カンパニー(白)
- 登下校カンパニー(オレンジ)
- その他カンパニー(赤)
テーマグループに属している子どもたちは、それぞれに興味を持つテーマに関するルールを考えていました。機能グループに属している子どもたちは、テーマを横断して相談に乗ったり、仕事を引き受けたりしていました。
活動している様子を見てビブスの色が混ざっていると協働している様子が見えることになります。提案書などはすべてクラウド上にあるので、一人1台のChromebookを持ち歩き、お互いに画面を見せ合いながら編集をしていったり、協働作業を行ったりしていました。
CEOグループの子たちは、ホワイトボードにこの日の授業で意識することをまとめたり、それぞれのテーマのグループの提案を見て、提案のメリット/デメリットを一緒に考えたりしていたりしました。
CTOグループの子たちは、Scratchでアンケートをとれるようにプログラミングをしていました。
CIOグループの子たちは、Googleサイトを使ってホームページを自発的に作っていたそうです。それぞれのグループがどんな仕事をしているのかなどの紹介がホームページにまとめられていました。小林先生は「会長」としてインタビューを受けていました。こういう形で授業のコミュニティができていくのはおもしろいと思いました。
最後に、Googleフォームでふりかえりを入力します。ふりかえりのフォームの最後には、「関わった人の良かったところ」という項目があり、他者と協働することによって気づいた、良かったところを言語化するようになっていました。
それぞれのグループで、自発的に子どもたちが取り組んでいる様子を見ることができました。活動のほとんどを子どもたち主導で行っているので、全体統括をするCEOグループは大変そうだと感じたのですが、授業終了後に小林先生に話を伺ってみると、いきなりこうして子どもたちに任せているわけではなく、これまでにも運動会のダンス練習や、合唱の練習でもリードを子どもたちに任せてきたということでした。
そのうえで、それぞれのグループに属している子どもたちのそれぞれの課題に応じて、サポートをしていきたいと小林先生は言います。例えば、リーダーシップの型も、これから中学校にあがっていく前に、「アンバーからオレンジ、グリーン…というふうに、リーダーシップの形を変えていってほしい」と『ティール組織』のキーワードに触れながら説明してくれました。
一人ひとりをそこまで見てプロジェクトを作れて、学級経営ができるのが、学級担任が行う授業の良さだと感じました。
(為田)