2016年3月5日に、平成27年度「教育の情報化」推進フォーラムの2日目に参加してきました。総括パネルディスカッション「アクティブ・ラーニングとICT活用」の様子をレポートしていきたいと思います。パネルディスカッションに参加されていたのは、以下の皆様でした。
コーディネータ:
(一社)日本教育情報化振興会 会長 赤堀 侃司
パネリスト:
放送大学 教授 中川 一史氏
鳴門教育大学大学院 准教授 藤村 裕一氏
つくば市教育委員会 教育長 柿沼 宜夫氏
多摩市立愛和小学校 校長 松田 孝氏
富山大学附属小学校 教諭 福田 慎一郎氏
今回は、富山大学附属小学校の福田慎一郎先生のプレゼンテーションをレポートしていきたいと思います。福田先生のプレゼンテーションは、実際の授業の様子をふんだんに紹介しつつ、それを分析する、というものでした。分析部分は、他の校種や教科についても十分応用できる内容だったと思います。
特に、僕が興味深かった点、心に残った点を中心にレポートしていきます。以下、写真で撮影しているスライドはすべて、福田先生の発表で使われたスライドです。
福田先生は、最初に「アクティブラーニングにICTは効果的か?」という問題提起をし、そこに2つの条件をつけます。
条件1は子供たち自身がICTは「有効だ」と実感していること。そのためには、日常的に使い続けることが必要だといいます。それも、教師による提示で使うだけでなく、子供自身がタブレットを使うそうした日常を作ることで、子供たち自身がICTを道具として「使える」と感じるようになっていくということだと思います。
そして、「ICTは有効だ!!」を実感するために、「はっきりと様子が分かる」「必要な情報をすぐ得られる」「友達と意見交換しやすい」という点を挙げていました。「ICTは有効だと実感してもらう」ためにどのような状況を作り出せばいいのかが非常にわかりやすく説明されました。
また、条件2の「子供たちの思考が活性化し、真剣に課題に立ち向かっていくような状況ができていること」についても、どのようにして子供たちの思考を活性化するかということについて、理科の先生ならではの視点でのコメントを入れて説明をしてくれました。子供たちが「あれ?」「おや?」と問題を持つ場面を大切にするというのは非常におもしろいと思いました。これぞまさに、授業設計だと思います。
そうして適切に場面を作れば、「肉眼ではわからない→ICTを使って解決すればいい」というふうになるということです。大事なのは、ここでICTは目的となっておらず、「よく見えない!→タブレットで撮影したらもっと見えるだろう!」と、あくまで「見ること」が目的であり、そのためにICTは手段として使われているということだと思います。
また、タブレットで撮影して、「見る」ことができたら、今度は「なんでだろう?」と思って、「調べたい!」という思いが出てきます。そのときにもすぐに身近にタブレットがあれば、すぐに調べることができます。
非常にシンプルですが、なかなかこのように手段と目的を明確にして、ICTを授業に組み込んでいる先生はそう多くありません。こうした事例がどんどん横に広がっていけばいいなと思います。
その他にも、「関係付けて考える思考」や「比較して考える思考」を促すために、どのような授業を行っているのかという実例を紹介してもらいました。
パネルディスカッションのテーマだった「アクティブ・ラーニングとICT活用」や、福田先生が問題提起として挙げていた「アクティブラーニングにICTは効果的か?」ということを考えるために、こうした授業事例がどんどん横に広がっていけばいいと思います。福田先生がされたプレゼンテーションは、理科だけに通用することではありません。授業設計の仕方、目的と手段の切り分けと適切な結びつけ。それができれば、どんな教科にも応用できます。どんなふうに応用するかの知見は、教室で児童生徒と毎日接していて、教材研究をされている先生方が持ってらっしゃるものです。先生方の知見とICT(テクノロジー)が融合していくために、こうした事例がどんどん広がっていけばいいと思います。
福田先生の授業、見学に伺いたくなりました。ぜひ今度、取材に伺わせていただきたいと思います。
No.4に続きます。
(為田)