教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

京都教育大学附属桃山小学校 授業訪問レポート No.3(2016年7月8日)

 2016年7月8日に、京都教育大学附属桃山小学校を訪問し、授業を見学させていただきました。いつも授業を見学させていただいている木村明憲先生と学年団を組む長野健吉先生が担任をされている4年1組の算数の授業をレポートします。
 長野先生は、京都市立錦林小学校でのロイロノートスクールを用いた実践授業などで、お名前は知っていたのですが、今回初めて授業を拝見させていただきました。

実況中継:算数(4年1組)

 今回の授業のテーマは、「ひし形の性質を考えよう」でした。教室の前のモニターに映像を投影しながら、考えていきます。
f:id:ict_in_education:20160830234141j:plain

 授業の最初に、クラスのみんなでルーブリックを作ります。ルーブリックの評価項目のAとSをみんなで考えていきました。こうして最初にみんなでルーブリックを考えることで、この後にどんな点に注目して先生の話、クラスメイトの話を聴けばいいのかがわかるのだと思います。
f:id:ict_in_education:20160830234252j:plain

 ルーブリックが決まったら、みんなでひし形の性質について考えていきます。一人1台のiPadを持っているので、長野先生から授業の進度に合わせて、ロイロノートスクールを使って教材カードを送り、その教材カードを見ながら考えていくという学習活動を行います。
f:id:ict_in_education:20160830234403j:plain

 例えば、角の大きさ、辺の長さの図をカードとして送り、それに児童がどことどこが等しいか記号を書き込んでもらいます。児童がそれぞれ書き込んだカードは、提出箱に入れてもらいます。そうすることで、長野先生のところに児童のそれぞれが書き込みをしたカードが集まることになります。
f:id:ict_in_education:20160830234534j:plain

 提出箱に入ったカードをモニターに映し出せば、みんなで見ることができるので、クラスメイトの書いたものを見ながら、自分でノートに考えを書くこともできます。ゼロから考えを書くのは少し大変という児童がいたとしたら、クラスメイトの書いていることからきっかけを得て書き始められる、ということもあると思います。児童一人ひとりにとっての学ぶ機会をなるべく多くするために、こうしてクラスメイトの考えを途中の段階でも見ることができるのは、非常に良い方法だと思います。
 こうした活動は、紙のノートでは提出してそれをみんなで同時に見て…ということはなかなかできません。ICTがあってこそのものだと思います。このように、ICTを使うことによって、先生が今までできなかった(あるいは、やろうと思うと可能ではあるが手がかかる)学習活動が可能になることは、授業の可能性を拡げるものだと思います。

 もう一つ、解答を共有することの良さは、授業の中でのディスカッションで現れます。教室全体で解答を共有したときに、「向かい合う角の大きさは同じ」という解答と「角の大きさがすべて同じ」という解答が両方ありました。長野先生は、その2つの解答を見て、「それについて考えありますか?」と発問します。そして、挙手する子どもたちの答えを聴いていきます。
f:id:ict_in_education:20160830234714j:plain

 ここで、何人かの児童の答えを聴きながら、長野先生は、「“あれ?”と思った人は、提出し直してください。」と言います。そして、長野先生は、考えるヒントとなるカードを次々と送っていきます。そして、児童がそれを組み替えて、自分なりに理解ができるようにカードを繋げ、書き込みをしていきます。前の授業で使ったカードを取り出して、それに説明を追加するのもOKという学習活動になっていました。
 長野先生は、授業の進度だけでなく、児童の理解度に合わせて教材カードを送っていました。長野先生のiPadの中には、前回までの授業で使った素材が入っているので、必要であれば、前時に一度配布している教材カードを再度送ることもできます。
 単純なことのように思えますが、これは実はICTを使った授業展開として大きな意味をもつところだと思います。毎回、プリントを配布すればいいことではありますが、ロイロノートスクールを使ってカードを組み合わせることが自由にできます。例えば、ひし形のことを考えるために、平行四辺形の図を使って考える場合、新しい平行四辺形の教材カードを使うこともできますし、自分で前時に書き込みをした教材ノートを使うこともできます。プリントをノートに貼ってしまったら、そこでしか使うことができませんが、デジタルで教材カードを持っていれば、必要であれば何度でも使うことができます。こうすることで、自分にあった最適な形で、学びを毎時間毎時間、課題ごとに積み上げていくことができると思います。
f:id:ict_in_education:20160830235001j:plain


 iPadが一人1台あるからこそ、パーソナライズされているからこそ、個別に学べる。ロイロノートスクールを持っているからこそ、これまでの授業で使った教材カードすべてを、毎回の授業で使うこともできていました。これはロイロノートスクールの良さだと思いました。

 ここからグループへ学びを発展させます。グループでそれぞれどう考えたのかを発表し合い、学び合っていきます。一人1台持っているからこそ、しっかり自分で学びを深めて、学びが深まったところで、さらにグループで語り合うことで、その学びを外化させる。それがまた理解を深まらせるのかな、と思いました。
f:id:ict_in_education:20160830235134j:plain

f:id:ict_in_education:20160830235318j:plain

おまけ:キーボード入力について

 それと、4年1組の授業を見ていて気づいたのですが、「気づいたことをロイロで書いてください」と長野先生が言ったときに、思っていたよりずっとキーボードを使って入力している児童が多いなと感じました。キーボード入力への抵抗は小さいのかもしれません。長野先生にも、「キーボードを使っている子が多かったですね」と言うと、「思っていたよりもマスターが速かったです」と長野先生はおっしゃっていました。まだ本格的にiPadもロイロノートスクールも使い始めたばかりとのことだったので、環境を作ることで使う頻度も上がり、速く熟達していくのだろうと思います。
 キーボード入力に慣れると、思考の速度とアウトプットの速度の差が小さくなるので、キーボード入力に慣れるほど、より使うようになっていくのではないかと思います。今後が楽しみです。
f:id:ict_in_education:20160830235442j:plain


 No.4に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)