8月8日にプレミアホテル中島公園札幌を会場に行われた、D-project北海道 創設10周年記念セミナーに参加してきました。D-project北海道の加藤悦雄先生(北広島市立双葉小学校)と山田秀哉先生(札幌市立発寒西小学校)のパネルディスカッションの様子をレポートします。
パネルディスカッションのテーマは、「メディア創造と実証・研修」で司会の佐藤幸江先生(D-project副会長、金沢星稜大学教授)の言葉をまとめてみると以下のような形かと思います。
- メディア創造力:メディア表現学習を通して、自分なりの発想や創造性、柔軟な思考を働かせながら自己を見つめ、自ら切り拓いていく力
- 単元構成や授業設計に到達目標を活かす
- メディア創造力を育成する学習サイクル
- 相手意識・目的意識を持つ→見る→見せる・つくる→振り返る、というような。
- 何度も何度も往復するような授業デザイン。
- この具体例を加藤先生と山田先生に話をしてもらう。
その後、山田先生から授業事例が紹介されました。
どれも楽しそうな事例でした。中川先生の基調講演の中でも語られた、「映像と言語の往復を促す」の実例を紹介してくれました。
パネルディスカッション
このあとは、モデレーターの佐藤先生から、加藤先生、山田先生、特別ゲストだった“過激な実践をしている”前多香織先生(江別市立大麻泉小学校)の3人にさまざまな質問がなげかけられ、ディスカッションが進んでいきました。
- 「映像と言葉」というキーワードがある。映像と言葉を往復させることは、どんな力を身につけさせたいのですか?(佐藤先生)
- パンフレットなどをグループで作らせる実践をしてきたが、考えてきたのは「伝える相手を意識して言葉や文章を吟味して選び、伝える力」。伝える相手によって、どんな文章表現にすべきかを考えなければいけない。(前多先生)
- 書けるだけの分量のなかで、何文字以内で書くのか。自分の伝えたい事を伝えるために、どうやって言葉を選び、表現したらいいのか。そうした力を身につけさせるために、映像と言葉の往復をしている。(前多先生)
- メディア表現学習は、自分たちで子どもたちがしているのか、先生が指示をしているのか、区別がつかない。学習者主体にするポイントは?(佐藤先生)
- 学習者主体の学習をするためのポイント:1.自ら学ぶ力の育成。2.問題発見・課題作り。3.学びの成果が実感できる。(前多先生)
- 始めの問題発見、課題作りを、時間をかけてやる。そうすることで、主体的な学習者になる。(前多先生)
- 学びの成果が実感できる。どこがいいのか、きちんと評価する。教師も評価するし、子ども同士も評価する。できれば学校外にも評価してもらう。(前多先生)
- ポイント:1.社会や未来とつながりのある課題の設定。2.チームで協力して進めるプロジェクト型の学習。3.メディア創造力到達目標やルーブリックに寄る自己評価や相互評価。→伝えるチカラを鍛える。(山田先生)
- 学びの成果を実感できる、というのがありましたが、実社会とつながりを意識した学習課題。ヘルスケアで、ヘルスバンドを考えた子どもたち(2013年2月)→Apple Watchがその後に発売。情報→思考→提案。(山田先生)
- 課題、相手意識、目的意識を持たせる、前多先生の課題設定。山田先生は、実社会とのつながりを。また、学習の方法も違う。一斉型の指導ではない学習方法が用いられている。評価も、先生が一方的に評価するのではなく、相互評価なども考えている。そうしたところが共通点かと思う。(佐藤先生)
その後、加藤先生から研修をテーマにしたポイントが伝えられました。
加藤先生
- D-project北海道には、不特定多数のスタッフがいる。所属や年齢もバラバラ。
- アクティブ・ラーニングにむけて、2つの試みをしている。
- 21世紀型スキルの授業活用
- プロジェクト型授業(PBL)の実践力
- まず、自分の授業、スタイルを変えなくてはならない。
- 学んでも実践しなければ意味がない。スタッフ研修 成果と課題
- 授業実践へのハードル
- 校内への広がりの難しさ
- 機材の確保
山田先生
- どう校内研修に活かすのか?
- メディア創造力を育成するための研修のポイント
- 情報誌の活用 CUBE LANDなど、情報誌を見せる。
- やってみる→やってみせる→やりたくさせる
加藤先生がおっしゃった「学んでも実践しなければ意味がない」というのは本当にそのとおりだと思います。こうしたD-project北海道という実践発表・共有の場があり、10年で20回のワークショップをしていても、まだまだ校内研修に拡げるための新しい施策をされているのが、素晴らしいと思いました。
加藤先生と山田先生からのコメントが出た後で、佐藤先生から「研修には多くのハードルがあると思います…」という質問がありました。加藤先生と山田先生とのディスカッションの様子を下にメモします。
- いろいろなハードルがある。そんなときに具体的に先生方が楽しく研修できた、という事例はありますか?(佐藤先生)
- 飲み会(笑) D-projectの研修会では、どちらかというと教科の研究会とは違う見せ方として、僕や山田先生の授業を見ることはできない。スタッフ全員がバラバラなのだから、ずっと一緒にいないということを前提にしている。そこから推測するに、「こういうふうにやっているんじゃないか?」というのを推測でしかはかれない。本やビデオでは伝わらない。だから、「熱く語る場」を設定して、ワンポイント、徹底的に議論しあう。そういうことが必要になると思っている。(加藤先生)
- ワンポイントって、大事だと思います。あれもこれも、となるとパンクするので。話題を拾っておいて、「そこに困り感があるのか」「何に困っているのか」などとわかるようになる。実物投影機で、「子どもたちのノートがうまく映らない」という悩みだったりもした。国語のノートを段組みにしてみるとか。そうした個人の困り感に応えてあげる。(山田先生)
加藤先生の「飲み会」というのは、研修会だけでは伝わらない物を伝える場を作るということであり、こうしたインフォーマルな伝え方も本当に重要な役割りを果たしているのだと思いました。
また、山田先生の「ワンポイント」で「個人の困り感に応えてあげる」というのも本当にすばらしいです。
こうしたことを中に組み込んだ形の教員研修、校内研修を企画実践していきたいな、と自分自身を振り返るきっかけになるパネルディスカッションでした。
(為田)